2025年4月17日、弊社を創業して30年目を迎えました。創業といっても、「サラリーマン辞めて、一人で稼ぎ始めました」と言うことです。そんな創業の年である1995年には、1月17日に阪神淡路大震災があり、3月20日にはオウム真理教による地下鉄サリン事件がありました。いずれも人ごとではない事件です。
阪神淡路大震災では、私の生まれた大阪府豊中市の祖父母の家の屋根が崩れ落ちました。幸いにもけが人はなかったのですが、復旧にはそこそこの時間がかかったことを覚えています。
また、地下鉄サリン事件の現場となった茅場町駅は、普段通勤で使っていた駅でした。その日は退職届を出して有休消化のために会社を休んで八ヶ岳の山中をトレッキングしていました。そして、その日の宿の麦草ヒュッテでこの事件を知ることとなりました。当時は、携帯電話(ガラケー)が出始めたころでしたが私はまだ持っていませんでした。当然スマホなどなかったので、リアルタイムに情報を手に入れることはできない時代でした。もし、いつも通り通勤していたら、この事件に巻き込まれていたかも知れません。
1982年に入社した日本IBMでは、一貫して大手電機・電子機器メーカーを担当する営業として13年間働きました。最初は、大型コンピューターやCADシステムを担当し、その後のダウンサイジングの流れに乗ってPCやワークスターション、スパコン、シュミレーションツールや半導体設計ツール、半導体工場の工程管理システムなどを売り、それなりの営業成績を維持していました。
当時は、新しい製品が登場すればすぐに飛びつき、マニュアルや販売ガイドを徹底して読んで自分なりに資料をまとめ、お客様に話しに行くことを心がけていたように思います。いまのようにインターネットのない時代ですから、最新情報は営業が届けるものでした。それだけでも、お客様から見れば営業の存在価値はあったと思います。
また、いまのようにパワーポイントなどない時代ですから、手書きの図表やワープロで書いた文字、パンフレットから切り取った写真をA4コピー用紙に貼り付け、それをコピーして資料にしたり、OHP(透明なフィルムに手書きした資料を投影機で映し出す機器)でプレゼンテーションしたりと、いま思えば、とても原始的なことをしていました。
今でこそ当たり前のOfficeもAIもなかった時代です。全ては手作業のアナログです。だからこそ、目で読んで、頭で考えて、手を動かして資料を作るといった身体を総動員することで、私のビジネス・インテリジェンスは鍛えられたと思います。
1995年に日本IBMを辞めたのは、自分で新しい事業を立ち上げたいとか、世の中を変えたいといった高い志があったわけではありません。社会人になる前から会社勤めは嫌でした。ただ、大学5年生で結婚していたこともあり、稼がなくてはなりません。そんなこともあって、たまたま大学でコンピューターをいじっていたこともあり、日本IBMの方の推薦を頂き、入社が決まりました。当時、IBM産業スパイ事件というのがあってメディアを賑わしていた時期です。母親は、「そんなスパイの会社に入って大丈夫なのか?」と心配してくれました。どうも、CIAとかFBIとごっちゃになっていたようです(笑)。
そもそも会社勤めをする気がなかったわけで日本IBMに勤めていてもその気持ちは変わりませんでした。しかし、仕事が面白かったこと、そして、忙しすぎてゆっくり自分のことなど考える時間も、心の余裕もありませんでした。「ここで辞めては自分の負け」みたいな、変なプライドもあって、気がつけば13年間必死に仕事をしていました。たまたま、会社が退職金を増額する退職奨励のプログラムを発表し、それを利用しようと思ったのですが、大型の商談が決まりかけていて、とにかく家にも帰れないほど忙殺されていたこともあり、そのタイミングを逃してしまいました。幸いにも、翌年もまた同様のプログラムが発表されたこともあり、このタイミングを逃すわけにはいかないと、勢いで退職をしてしまったというところでしょうか。
もともと、アウトドアが大好きだったので、安易にアウトドアショップを開くことにしました(笑)。当然ながらそんなBtoCビジネスの知見も展望もなく、始めたのはいいのですが、6ヶ月ほどでこれでは食べていけないほどに追い詰められました。仕方なく、退職金を使い果たし玉砕する前に、店を引き払いました。そして始めたのが、当時流行りのホームページの企画や制作、それを使った販売戦略作りです。
当時はインターネット人口が100万人(うち電子メールのみが60%)くらいの時代です。電子決済もなければGoogleもない時代ですから、それだけでは食べてはいけません。幸いにも、「元IBM営業」のブランドと経験はありましたので、外資系企業の日本での立ち上げ支援やJTCの新規事業の立ち上げ、営業支援の仕事をいただき、なんとか食いつなぐことはできました。
社会人の最初の国籍が「IT」だったわけで、生まれ持った国籍をそう簡単には変えられないと言うことでしょうか。学ぼうとして学んだわけではありませんが、日々目の前の仕事に食らいつき、時間も惜しんで必死に向きあっていました。いまにして思ば、それなりの知識や経験も備わっていたわけです。日本IBM時代は日々の仕事が、将来のお金になるなんて思いもしませんでした。そんなものなのだと思います。
そんな経験を活かして営業活動を30のプロセスに整理しソリューション営業のノウハウを教える「ソリューション営業研修」や最新のITトレンドとビジネス戦略を学ぶ「IT最新動向研修」などを自分で作り、それなりに仕事が回るようになりました。
ただ、2008年に始まるリーマンショックで景気が後退、そんなとき先ず真っ先に切られるのが、直接売上につながらない事業開発や営業などの「支援」業務や「研修」業務です。見事に仕事がなくなりました。その時は真剣に会社勤めに戻ることも考えました。ただ、会社に縛れた生活に戻るのも嫌だったので、それもやめました。ならば、どうせ仕事はないし、暇なので、いままでの「支援」や「研修」で作った資料を整理し直し、無償で提供し、多くの人を誘って勉強会を始めました。当然、まったくもうかりはしません。でも沢山の人たちが集まってくれました。
だからといって稼がないわけにはいきません。そこで、勉強会でつながった人たちの助けをいただき、2008年のどん底の年に「ITソリューション塾」を始めました。最初は数人の研修で「稼げる」というほどではありませんでしたが、今年で17年がたち、いまでは毎期(年3期)100〜200人が参加するまでとなり、述べ4000名ほどの人たちがこの塾を卒業されました。その時の人たちとのつながりが、いまの私の仕事を支えてくれています。そして、そのそんな人たちの助けもあり、また景気も戻り始めて、仕事も少しずつ頂けるようになりました。
そんな折に起こったのが、2011年の東日本大震災です。何か自分たちにできることはないだろうかと、友人たちに声をかけ「緊急営業会議」というイベントを開催しました。「営業にできることはないのか」を考えようと声を掛けで、数百人が集まりました。それをきっかけに、被災した地元で活動するボランティア団体の人たちと一緒に被災地へ伺う機会が生まれ、気がつけば毎週のように被災地を訪れるようになっていました。また、それをきっかけに被災地でのIT支援を行うボランティア団体の立ち上げにも関わりました。そこでも、沢山の人と知り合いました。仕事に於いても、プライベートに於いても、そのつながりもいまではかけがえのないものです。
被災地をまわりながら、このような震災は東京でも起こりうることだし、いざとなったときに家族を守り、また何かあったときの支援を提供するための拠点を持ちたいと思うようになり、2016年に八ヶ岳南麓の土地を手に入れ家を建てました。
森に囲まれ、日照時間や晴天率は日本有数のドライな気候です。そこに通うようになり、来るたびに「血液が入れ替わる」といえるほどの心地よさに、入り浸る時間が増えていきました。
こんな気持ちが良い場所に「働く場所」を作ったら喜んでもらえるのではないかとひらめき(思いこみ?)、ノリと勢いで2700坪の山林を購入し、神社の杜のワーキング・プレイス8MATO(やまと)を作ってしまいました。当然ながら、ノリと勢いなので採算など考えていません。とにかく最高の働く場所を作りたいと、いろいろとお金を掛けています。なんとか、講演や研修などを年100回以上こなし、そちらで稼いでなんとかやりくりしています。
ふり返れば、日本IBMを辞めたときの「アウトドアの仕事をしたい」という想いが、図らずも8MATOというカタチにつながったように思います。
よくぞこの30年間を生き延びてきたと思います。激流に呑み込まれながらも、流れてくる小さな木の枝を見つけてはそれにつかまり、弾き飛ばされそうになれば、岩にしがみつき、そして、沢山の人に助けて頂いた30年間です。何か軸があるわけではなく、思いついたらノリと勢いで、なんとか生き抜いてきたわけで、我ながら凄いなぁと思います(笑)。
1995年に起業した当初、「ビジネスになんか使えない」と多くの人たちが思っていたインターネットに飛びつき、30年後のいまは、まだどうなるかが見通せないAIに飛びついています。インターネットの時がそうであったように、AIも社会やビジネスの常識を大きく変えてしまうでしょう。そして、そこでまたなんか面白いことをやりたいなぁと画策しています。進歩がありませんね。そんな30年のITトレンドを見てきた経験から、「コレ1枚でわかる最新ITトレンド」というチャーチをまとめました。PPTXでダウンロードいただけますので、30周年記念と言うことで、よろしければご利用ください。
いまさらですが、どうも、私は計画を立ててものごとを行うことが苦手です。いつも、その時々の成り行きに身を任せた、ノリと勢いの30年間です。それでも糊口を凌ぐことができた理由があるとすれば、好奇心旺盛で、これぞというものを見つけたら、後先を考えずに「ノリと勢い」を徹底して追求したことかも知れません。まあどれもそんなに長続きしたわけではありません。それでもなんとか激流の波頭の上をうまく飛び渡ってくることができました。そんな人生もあるということです。
今年もまた、これからも「成り行き」と「ノリと勢い」で生きていくことになるのでしょう。いまさら、変えられませんからね。そんなわけで、これからもよろしくお願いします。
今年も開催!新入社員のための1日研修・1万円
AI前提の社会となり、DXは再定義を余儀なくされています。アジャイル開発やクラウドネイティブなどのモダンITはもはや前提です。しかし、AIが何かも知らず、DXとデジタル化を区別できず、なぜモダンITなのかがわからないままに、現場に放り出されてしまえば、お客様からの信頼は得られず、自信を無くしてしまいます。
営業のスタイルも、求められるスキルも変わります。AIを武器にできれば、経験が浅くてもお客様に刺さる提案もできるようになります。
本研修では、そんないまのITの常識を踏まえつつ、これからのITプロフェッショナルとしての働き方を学び、これから関わる自分の仕事に自信とやり甲斐を持ってもらおうことを目的としています。
参加費:
- 1万円(税込)/今年社会人となった新入社員と社会人2年目
- 2万円(税込)/上記以外
お客様の話していることが分かる、社内の議論についてゆける、仕事が楽しくなる。そんな自信を手にして下さい。
現場に出て困らないための最新トレンドをわかりやすく解説。 ITに関わる仕事の意義や楽しさ、自分のスキルを磨くためにはどうすればいいのかも考えます。詳しくはこちらをご覧下さい。
100名/回(オンライン/Zoom)
いずれも同じ内容です。
【第1回】 2025年6月10日(火)
【第2回】 2025年7月10日(木)
【第3回】 2025年8月20日(水)
営業とは何か、ソリューション営業とは何か、どのように実践すればいいのか。そんな、ソリューション営業活動の基本と実践のプロセスをわかりやすく解説。また、現場で困難にぶつかったり、迷ったりしたら立ち返ることができるポイントを、チェック・シートで確認しながら、学びます。詳しくはこちらをご覧下さい。
100名/回(オンライン/Zoom)
2025年8月27日(水)
【図解】これ1枚でわかる最新ITトレンド・改訂第5版
生成AIを使えば、業務の効率爆上がり?
このソフトウェアを導入すれば、DXができる?
・・・そんな都合のいい「魔法の杖」はありません。
神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO
8MATOのご紹介は、こちらをご覧下さい。