経営者が変革の重要性を熱く語っても、これに呼応して現場の社員が行動を起こさなければ、変革は進みません。一方、現場は、自分たちの現状に危機感を感じ、このままではまずい、なんとかしなければと思っているのに、経営者は分かっていない、動いてくれない、だからうちの会社は遅れてしまう、時代に取り残されてしまうと嘆いても、変革は進まないでしょう。
どちらも変革の大切さは分かっているのに、このような齟齬が生じている現実は少なからずありそうです。
この状況を解消するには、まずは、経営者を含む全社員が、同じベクトル、すなわち、いかなる「あるべき姿」の実現をめざすのかを共有しなければなりません。そのためには、自社のパーパスを明確にして議論をかさね、それぞれの立場で「自分は何をなすべきか」考え、行動することが大切です。このような行動を土台に、自分の役割を全うすることが大切です。
経営者の役割は、「現場が自発的な行動を促す環境を整えること」です。つまり、「何をすれば、自分が評価されるのか」が、一目瞭然、誰にでも分かる仕組みにすることです。
経営者の役割は「仕組みやカタチを変える」こと
自分たちの定めたパーパスから戦略を紐解き、戦略に合わせてそれにふさわしい組織や人事制度、業績評価基準や事業目的など、自分たちが取り組む変革に最適化されたカタチに新しく作り変えることが、経営者の役割です。過去のしがらみや抵抗勢力に抗い、この筋を通すことこそ、経営者がやるべきことです。
仕組みを変えて、社員にわくわく感、つまり、チャレンジすることが自分の成長や仕事の充実感につながることを分かりやすい形で示すことです。何をすれば、自分は評価されるのかをオープンに示すことです。
このような仕組を整えれば、経営者は、「変革が必要だ」とか「DXに取り組まなくてはならない」といった精神論や危機感を語らなくても、社員が自発的、自律的に、必要な工夫や努力、知識の習得やスキルの向上に励むようになります。結果として、事業目標が自ずと達成され、変革も進みます。
一方で、次のようなことは、変革の足かせになることを心得ておくべきです。
- 社員の人数を前提にした工数積算で売上目標を設定する
- デジタル化とDXの区別が曖昧なままに世間に迎合してDXを叫ぶ
- 人事考課の基準が不透明で、情実で評価する余地を多分に持っている など
社員を自発的、自律的に変革に向かわせる仕組みを作ることこそ、経営者にしかできない変革の実践です。そして、自己満足や都合の良い解釈に陥らないために、その進捗や実績をデータで捉えることも大切です。また、社員からの提言や双方向の対話でフィードバックできるようにすることで、仕組みを改善し続けなくてはなりません。
社員の役割は「自分の行動を変える」こと
現場からの変革は、何をすべきかに気付いた人が、自分から行動を起こすことから始めます。会社を変えようとか、組織を動かそうとかではなく、身近なことから始めてはどうでしょう。
- 自分の担当するプロジェクトのコミュニケーションをメールからSlackやTeamsなどの社内SNSに統一する。
- 何のためにやっているのか分からない形骸化された業務を洗い出して辞める。
- セキュリティ対策上意味がないどころか、リスクを高めるZIP暗号化されたファイルのメール添付を辞める など
そうやって、正しいことを実践し、成功も失敗も発信し続けることです。
当初は、批判もあって忍耐が必要かもしれません。しかし、それが正しいことならば成果が生まれ、共感者も増え、行動を共にする仲間も増えます。それが、ある人数を超えたときに、組織や会社が大きく変わるのです。
誰かがしてくれることを待つのではなく、自分にできることからはじめることです。それが、どれほど小さなことであっても、はじめることです。そして、続けることです。変革とは、そんな地味で、手間も時間のかかる取り組みです。
「まわりを変えたい」
本人は変わりたいと思っていても他人にとやかく言われて、変えられたいとはなかなか思えないものです。
「上司や経営者が変わってくれなければ、変革は進まない」
その通りだと思いますが、彼らも同じで、他人に変えられたいとは思わないでしょう。この現実を受け入れなくてはなりません。
変えられるのは自分だけです。まずは、自分が行動を起こし、まわりが自分もそうしたい、そのように変わりたいと思えるようにすることが、現場からの変革の基本です。
「しかし、うちにはそんなことができる文化も風土もありません。」
文化も風土もないからこそ、変革が必要です。文化も風土もそこに働く人たちが作るわけで、自分もまたその当事者であることを自覚すべきです。
文化や風土は、行動の結果であり、その積み重ねである「行動習慣」です。それは、誰かに指示され、命令されて行うことではなく、自分の自発的な行動が積み重ねられた結果です。自分の行動習慣を変え、その失敗も成功も発信すれば、行動を共にする人も増え、やがては企業の文化になります。
実践で使えるITの常識力を身につけるために!
次期・ITソリューション塾・第48期(2025年2月12日 開講)
次期・ITソリューション塾・第48期(2025年2月12日[水]開講)の募集を始めました。
次のような皆さんには、きっとお役に立つはずです。
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- 内容:
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