「生成AIは使えない」の本音
生成AIは「もっともらしく、シラッとウソをつく(=ハルシネーション/幻覚)」から、ビジネスでは使えない。
未だこのようなご意見をお持ちの方がいらっしゃいます。しかし、そんなことを言っていること自体、ハルシネーションなのだと言う自覚がないようです。なぜ、こんなことを言うのでしょうか。それは、「自分で使っていない」からなのでしょう。
知らないこと、分からないことは、取りあえずは辞めておこう。その理由をアレコレと並べ、「使えない」と結論する。本音は、「使いたくない」という結論ありきです。いままでのやり方を変えるのは不安だ、新しいこと学ぶのは面倒だ、しかし、そんなことを言うと世間体が悪い。だから自分なりの幻覚(ハルシネーション)を創り出し、「使いたくない」を「使えない」と言い換えているだけのことではありませんか。
生成AIは原理上、ハルシネーションはなくなりません。しかし、登場した当初に比べ、格段に少なくなっています。また、この問題を回避するノウハウも蓄積され、広く知られるようになり、それらを参考に使えば、ハルシネーションの問題を回避できるようになりました。
世の中に完全無欠、弱点のない存在などありません。いずれもプラスとマイナスがあります。「是非とも手に入れたい」というプラスがあるのならば、マイナスを回避しようかと知恵を絞ります。私たちはそうやって、これまでもプラスを活かして、世の中や事業の発展に貢献してきました。
例えば、カーナビは時々、「道なき道」を案内します。確かに最短距離ではあるのですが、このまま進めば崖から落ちてしまう(笑)というルートを案内されたことがあります。一方、この脇道を入れば、すぐに目的地に到着できるのに、えらく遠回りさせられることもあります。それでも、まったく知らない土地へ行くにはとても頼りになり、このようなマイナスがあることが分かっていても、私たちはプラスの便利さを手に入れるために、知恵を絞り、カーナビに頼りつつも工夫しながら、うまく使いこなしているのです。
生成AIもカーナビ同様も、ともに便利な道具です。そして、それを使い続けるからこそ、マイナスを回避しプラスを活かすノウハウが蓄積されていくのです。
使うことなく、頭で考えて答えを出し、それを自分に納得させ、自分の答えを主張する。これでは、時代に取り残されてしまいます。
もちろん、考えることは大切ですが、考えた後はとにかく使って、そして感じながらスキルを磨き、また考えることで、私たちは、これまでも新しい道具で時代を切り拓いてきたのです。
生成AIを使いこなすための実践ノウハウ
もちろん、生成AIがカーナビと同じだと言いたいのではありません。たとえば、次の3つの決定的な違いがあります。
- 技術の発展と機能やサービスの多様化が急速に進んでいること。
- どのサービスを使うかの判断をユーザーに求められていること。
- 提供される情報が広範で、その内容の善し悪しを全て判断できるわけではないこと。
技術の発展と機能やサービスの多様化が急速に進んでいるので、マニュアルはなく、第三者の評価もすぐに陳腐化します。だからこそ、使ってみて、体感し、自分のノウハウを積み上げることなくして、自分の武器にはできません。
どのサービスを使うかの判断をユーザーに求められているので、いろいろと使ってみなければ分かりません。上記とも関係しますが、性能や機能の優劣も、すぐに変わってしまいます。だからこそ、いろいろ使い、使い続け、新しいモノがでたら試し、自分の仕事の道具箱の中身を日々入れ替える心がけなくして、時代の変化を味方に付けることはできません。
提供される情報が広範で、その内容の善し悪しを全て判断できるわけではないのは当然のことで、ひとつのサービスの回答を鵜呑みにすることは、避けるべきでしょう。自分の専門領域であれば、まだ勘が働きます。でもそれ以外で使う場合は、他サービスやオーソドックスな検索サービス、書籍などを併用し、内容の正しさを検証するという手間をかける必要があります。
そんなに面倒なことをしなければならないのかと思われるかも知れませんが、こういう過程を通じて、自分にとっては、不案内の領域について学ぶ機会を与えられ、うまく使いこなすノウハウを磨くことができるのです。
リスクを回避しようとすれば、さらにリスクが大きくなる時代
生成AIに限ったことではありません。何か新しいことを始めようとするとき、様々なリスクを想定し、事前に対策を考えて取り組もうとするのは当然ことです。しかし、リスクを全て洗い出すことはできず、やってみて初めて気付くことも少なくありません。特に変革やイノベーションというのは、既存の常識から逸脱し、未知の領域にいどむわけですから、リスクを想定するのは容易なことではありません。
ましてやDX(デジタル変革)となると、急速に発展するデジタル技術と向きあわなくてはなりません。そんなデジタル技術を前提に、ビジネス・モデルや業務の仕組み、企業の文化や風土を変えていこうというわけですから、ますます使わなければ、DXには取り組めません。
リスクを覚悟して、デジタルを前提に、既存の常識に束縛されず、新しいことをやってみることが、DXの実践です。「リスクがあるから使えない」というドグマを捨てない限り、DXはあり得ないと心得るべきでしょう。
変革を後任者に先送りにして、自分はつつがなく乗りきろうという経営者や管理者を見かけることがあります。言葉では「変革」を掲げながらも新しいことに”必要以上に”慎重な態度をとり、リスクを回避しようとします。しかし、技術発展のスピードが加速度を増す中、このような態度は、他者との競争力の格差を拡大することになります。リスクを回避しようとして、ますますリスクを高めるという矛盾した結果を招いてしまうのです。
急速な技術発展と不確実性がこれまでになく高まっている時代に、リスクを回避しようとして新しいことに取り組まないという態度は、ますますリスクを大きくすることを、私たちは理解しておくべきでしょう。
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生成AIを使えば、業務の効率爆上がり?
このソフトウェアを導入すれば、DXができる?
・・・そんな都合のいい「魔法の杖」はありません。
これからは、「ITリテラシーが必要だ!」と言われても、どうやって身につければいいのでしょうか。