ChatGPTの登場から約2年が経ち、生成AIは社会に深く浸透しました。その性能向上とサービスの充実は日々加速しています。しかし、AIの進化に伴い、人間が淘汰されるのではないかという懸念も広がっています。この投稿では、AIを効果的に活用するために(あるいは、自分がAIに淘汰されないために)、人間の知性をどのように鍛えるべきかを、具体的な方法とともに考えてみます。
AIを使いこなす鍵は「質問力」
質問力の重要性
生成AIを活用する上で最も重要なのは「質問力」です。これは、何を知りたいのか、何を解決したいのかを明確に言語化し、それをAIや他者に伝える能力を指します。
質問力=知的好奇心×言語力
知的好奇心: さまざまな事柄に対して「なぜ?」と思う衝動や、新しい情報を探求する意欲。
言語力: 自分の考えや疑問を論理的かつ明確に言葉で表現する能力。
この二つが掛け合わさることで、高い質問力が生まれます。これは、AIを使いこなすための能力としても重要ですが、ビジネスに関わる人間として、磨き続けなければならない能力であることは言うまでもありません。
質問力を高める具体的な方法
疑問を持つ習慣をつける: 日常の中で「なぜそうなるのか」を常に考える。
情報を整理する: 考えを文章や図にまとめてみる。デジタル・ツールもいいのですが、まずは手書きでやってみることをおすすめします。記憶を定着させ、志向を膨らませるには、手書きは極めて効果的であることは、様々な研究でも示されています。
具体的な質問をする: 抽象的な質問ではなく、詳細で明確な質問を心がける。
例えば、AIに「AI駆動開発について説明して」と尋ねるのではなく、次のように質問してください。
「AI駆動開発の定義とその特徴は何ですか?」
「AI駆動開発がシステム開発の方法にどのような変化をもたらしますか?」
「ユーザー企業にどのような行動変容が予測されますか?」
Perplexityで実際に質問をした結果はこちらです。
上記のように、知りたいことを具体的に示して質問をすることで、より有益な回答を得ることができます。
人間の知性と機械の知性を隔てる「責任」
機械の知性は確率論、人間の知性は決定論
AIやカーナビなどの機械の知性は、データに基づく確率的な判断を行います。一方で、人間の知性は経験や直感を基にした決定論的な判断を下します。具体的には次のようなケースです。
カーナビの指示: 最短ルートを案内するが、現地の交通状況や道路の状態は考慮されない場合がある。
人間の判断: 経験から渋滞を避けるルートを選択したり、危険な道を回避したりする。
責任を持つのは人間
最終的な決定とその結果に対する責任を負うのは人間です。AIの回答をそのまま受け入れるのではなく、自分の知識や経験で検証することが重要です。具体的には次のような対策です。
結果の検証: AIの出力を確認し、事実と合致しているかを確認する。
複数の情報源を参照する: 他のデータや専門家の意見も取り入れる。
体験と教養の重要性
多様な体験や幅広い教養は、責任をととる上での人間の判断力を高めます。これにより、AIでは気づかない問題点や新たな視点を持つことができます。具体的には次のような方法です。
新しい分野の学習: 趣味や副業として異なる分野に挑戦する。
文化や芸術に触れる: 展覧会やコンサートに参加し、感性を磨く。
「原理」や「原則」を理解することが創造性の基盤
なぜ「原理」や「原則」が重要なのか
現代はテクノロジーの進化が非常に速く、新しいツールやサービスが次々と登場しています。このような変化の激しい環境で活躍し続けるためには、個々のツールの使い方だけでなく、その背後にある「原理」や「原則」を理解することが重要です。これは、建物を建てる際に土台がしっかりしていれば、その上にどんなデザインでも構築できるのと同じです。
ツールに依存するリスク
新しいツールや技術が登場するたびに、それを使いこなすことに焦点を当ててしまうと、ツールが廃れたときに自身のスキルも陳腐化してしまうリスクがあります。例えば、特定のプログラミング言語やフレームワークだけに精通していると、その技術が時代遅れになったときに対応できなくなります。具体的に次のような例です。
フラッシュの廃止: 一時期ウェブアニメーションで主流だったFlashは、現在サポートが終了しています。Flashだけに依存していた開発者は、新たな技術を学ぶ必要に迫られました。
特定SNSの消滅: あるSNSプラットフォームでのマーケティングに特化していた場合、そのプラットフォームが衰退するとスキルの再構築が必要になります。
「原理」や「原則」を理解するメリット
技術の本質を捉える: 原理や原則を理解していれば、新しいツールや技術が登場しても、その共通点や相違点をすぐに把握できます。
応用力が高まる: 基礎がしっかりしていれば、異なる分野や新しい状況にも柔軟に対応できます。
創造性の向上: 原理を理解していると、それを組み合わせたり新しいアイデアを生み出したりすることが容易になります。
例えば、次のようなことです。
ソフトウェア開発: アルゴリズムやデータ構造といった基礎を理解していれば、どのプログラミング言語でも本質的な部分は同じであり、新しい言語の習得もスムーズです。
デザイン: 色彩理論やレイアウトの基本を理解しているデザイナーは、ツールが変わっても質の高いデザインを作成できます。
AI時代における「原理」や「原則」の役割
AIは多くの業務を自動化し、人間の役割を変えつつあります。しかし、AI自体はデータとアルゴリズムに基づいて動作しており、その限界や可能性を理解するためには、やはり基礎的な知識が必要です。例えば次のようなことです。
データの理解: AIは与えられたデータを基に学習します。データの性質や統計的な原理を理解していないと、AIの結果を正しく評価できません。
アルゴリズムの限界: AIのアルゴリズムがどのように動作するのか、その強みと弱みを知ることで、適切なタスクにAIを適用できます。
倫理的な判断: AIが出した結果が社会的にどのような影響を与えるかを判断するためには、人間の価値観や倫理観が必要です。
新しい技術に対応する具体的な方法
基礎知識の強化:
- 学術的な勉強: 大学の講義や専門書で理論的な背景を学ぶ。
- オンラインコース: CourseraやedXなどで基礎的な科目を受講する。
原理の応用練習:
- プロジェクトを通じて学ぶ: 実際の問題解決に取り組むことで、原理を応用する力を養う。
- 異なるツールで同じ課題に挑戦: ツールに依存しないスキルを磨く。
継続的な学習習慣の構築:
- 最新情報のキャッチアップ: テック系ニュースサイトや学術論文を定期的に読む。
- コミュニティへの参加: 勉強会やオンラインフォーラムで他者と知識を共有する。
創造性との関係
「原理」や「原則」を理解していると、既存の知識を組み合わせて新しいアイデアを生み出すことができます。これは、ただツールを使いこなすだけでは得られない創造性です。具体的には次のようなことです。
イノベーションの創出: 異なる分野の原理を組み合わせて、新しい製品やサービスを開発する。
問題解決能力の向上: 基礎を理解していると、予期しない問題にも対応できる柔軟性が生まれます。
AI時代において、「原理」や「原則」を理解することは、長期的なキャリアの安定や成長に不可欠です。これにより、新しい技術やツールが登場しても、それらを迅速かつ効果的に取り入れることができます。また、深い理解に基づく創造性は、AIには代替できない人間ならではの強みです。
「原理」や「原則」を理解することは、変化の激しい時代において羅針盤のような役割を果たします。これを土台に、自身のスキルや知識を積み上げていくことで、AIと共存しながらも独自の価値を提供できる人材になれるでしょう。
最後に
AI時代を生き抜くためには、AIを効果的に活用するスキルだけでなく、人間としての知性や感性を磨くことが不可欠です。具体的な質問を行い、責任を持って判断し、基礎をしっかりと理解することで、AIを味方に付けて、未来をよりよいものに変えることができます。
何よりも大切なことは、世のため人のためによりよい社会を築いていこうというパッションです。他人事ではなく、自分もまた、そんな社会に関わる当事者であるという自覚を持ち、いま自分がやっていることに、このような意義を見出すことです。
会社は、そんな自分の想いを実現するための機会や場を提供してくれているのです。それができない会社なら、とっとと辞めた方がいいと思います。ただ、その前に、会社という機会や場を自分は活かしきれているのか、問うべきでしょう。
与えられた場や機会を活かしきることがまずは最初です。そうやって自分のできることを増やし、そのステージを上げるために次の機会を探す態度こそ、人間としての知性や感性を磨く上で、必要なことです。AIは、そんな人間にのみ大きな力を与えてくれる「神の手」なのかもしれません。
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