SI事業者やITベンダーは、「労働力(工数)提供ビジネスから技術力提供ビジネスへの転換」を図れ!
度々、本ブログでも述べていることです。この背景にあるのは、「生成AI」と「クラウド」であることは言うまでもありません。
「生成AI」について言えば、プログラム・コードの生成や仕様の作成、ドキュメンテーションといった領域で著しい生産性の向上が実現しています。「誤りが多い」や「できることが限られている」という声もあります。しかし、ChatGPTが登場して1年半しか経っていない黎明期なのに、それを使いこなし、成果をあげている人たちは少なくありません。この現実を真摯に受け止めるべきでしょう。
素直に考えれば、容易に想像が付くことですが、「コンピューターが使う言語(プログラム・コード)は、コンピューター(AI)が書いた方がうまく書けるようになるはず」ということです。
昨今は、「Devin:完全自律型ソフトウエア・エンジニア」の類も登場し、この流れを加速しています。つまり「プログラミングを専門とするAIエージェント」が、人間のプログラマーに代わって仕事をするというのが、当たり前の時代になりつつあります。
「AIエージェント」とは、「人間が与えた目標を自律的に達成するソフトウエア」のことです。例えば、「プログラム設計書、あるいは要求仕様書を与えれば、プログラム・コードを生成してくれるプログラマーの代替者(エージェント)」ということです。
ユーザーの立場で考えれば、プログラミングは目的ではなく手段です。事業目的を達成することが目的なのですから、手段は「安く、早く、高品質」であればいいとなります。これはもう人間の勝ち目はありません。
「クラウド」については、そのサービスの範囲の拡大と機能充実は、継続的に続いています。開発しなくてもいいわけですから、需要が拡大するのは、当然と言えば当然です。また、APIの充実も進んでおり、自分たちのサービスに一体化することは、特別なことではありません。
このように「生成AI」や「クラウド」の普及と充実は、ユーザーの外注依存を減らすとともに、内製化の範囲を拡大します。つまり、「生成AI」や「クラウド」が工数需要を呑み込むという構図が、確実に、そして急速に進むことになります。
もちろんITエンジニアが不要になることはありません。但し、ITシステム全般についての包括的な知識や最新のスキルを有した「少数精鋭のITエンジニア」がいれば十分で、プログラムを書くことを生業としている大人数のエンジニアを提供するビジネス=工数ビジネスは、成り立たなくなるわけです。
このような変化に対処するには、工数需要に偏った事業構造の転換を図るしかありません。ただ、事業構造の転換は、短期的には「成長戦略」にはなりません。それは、新しい事業構造に対応できる人材と従来の工数需要に対応するための人材の知識やスキルが異なるためです。
特に意欲もあり、能力が高い人材は、既存の工数ビジネスでも重要な役割を果たしているのが一般的です。そんな彼らをリスキリングするためには、現場から外さなくてはなりません。そうすると、彼らの稼働率が下がり、売上や利益を押し下げる要因になるでしょう。
ただ、新しい事業構造に対処するには、このハードルを越え、「生き残り戦略」へとまずは一旦舵を切らなくてはなりません。成長は、生き残ってからの話しです。
安定して低利益率に甘んじていた企業にとっては、死の淵を飛び越える覚悟が必要でしょう。ただ、先にも述べたように、いまほどの急激な変化が起きる以前から、同様の問題は指摘されてきたわけですから、それに対処してこなかったツケが回ってきたともいえ、災害級の変化を乗り越えるには、相応の覚悟を持って臨むしかありません。
どのように事業構造を転換すべきかですが、次の5事業が考えられます。
- レガシーIT介護事業
- 内製化支援事業
- デジタル・サービス事業
- 高度専門サービス事業
- コンサルティング事業
こちらについては、既に別のブログで詳述していますので、そちらをご覧下さい。
もうひとつ、営業もまた「技術力への転換」を図る必要があります。
例えば、このチャートですが、クラウドについてどこまで知っているかと尋ねると、SaaS、PaaS、IaaSなどのレベルなら話せるという営業は多いようです。しかし、オレンジの破線で囲んだ話になると、「言葉は知っているけれど説明できない」や「聞いたこともない」という人たちがそれなりにいます。
もちろん、これを実装することまで、営業には求められませんが、これらが何か、何のために使うのかという程度のことが理解できなければ、「技術力を売る」商談の入口に立つもこともできません。
そのためには、自助努力も必要ですが、こういう常識を持つことの大切さを促したり、学ぶ機会を積極的に提供したりしなければ、自助努力のモチベーションも湧きません。
「労働力(工数)提供ビジネスから技術力提供ビジネスへの転換」
それは、エンジニアにだけ頼ることで解決できることではありません。戦略の問題です。事業や組織のあり方も、エンジニア/営業も含めたスキルや知識も、まずは明確な戦略があり、これに基づく戦術として、具体化しなくてはなりません。
先日、IT事業者を対象に、新規事業を立ち上げるための地方自治体の「補助金審査会」で審査員をさせて頂きました。工数提供を主たる事業としているある企業が、生成AIとローコード・ツールを組み合わせたサービスを立ち上げたいので補助金が欲しいとの申請があり、彼らのプレゼンテーションを伺いました。
そのプレゼンを聞き終え、私は、次のように質問しました。
「ローコード開発ツールを提供するメジャーなベンダー(MicrosoftやUiPathなど)は、どこも生成AIとの組合せを積極的にすすめている。そのようなベンダーの資金力や技術力を考えれば、よほどのユニークネスがなければ、勝ち目はない。そんなベンダーとの違いを説明して欲しい。」
彼らの答えは、つぎのようなことでした。
「あるお客様で、そのようなツールがあれば、導入したいとの要望がある。私たちの既存のお客様であれば、ビジネスのチャンスはある。」
これは、答えにはなっていません。「PowerAppsのCopilotを紹介されてはどうですか?」と言いたかったのですが、言葉を呑み込みました。そもそも、新規事業ですから、「特定顧客」ではなく広くマーケットを視野に入れなくてはなりません。しかし、どのようなお客様のいかなるニーズに応えるかと言ったマーケティングの視点はなく、生成AIについての基礎的な質問についても、よくご存じなかったようでした。
下請け/SESの工数需要は先細りなので、新しいことに取り組まなければという気持ちは理解できます。しかし、自分たちの会社をどうしたいのかという経営サイドの戦略が見えません。そんな状況の中で、現場の担当者に何か新しいことに取り組みなさいと言うようなプレッシャーがあったのかも知れません。仕方なく、流行り言葉をかき集めて申請をまとめたように思えました。
経営者が戦略を定めないままに、戦術を現場に丸投げしているのでしょう。これでうまくいく道理はありません。戦略は変えてはいけないものです。現場はその戦略を何としてでも達成しようと、状況に合わせて戦術を臨機応変に変化させる必要があります。このケースは、このような関係が、できていなかったようです。
テクノロジーの長期トレンドは、かなりはっきりしています。これに合わせて戦略を策定します。しかし、短期の予測は困難です。だから、戦術は現場に任せて変化させ続けなくてはなりません。だからこそ、経営者は確固たる信念で、戦略を明確に示し、組織や事業を再構築することが求められます。
そのための時間は、もうあまりありません。そのことだけは、早く気がついてほしいものです。
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AIやテクノロジーに任せるべきことはしっかりと任せ、人間の営業として何をすべきか、そのためにいかなる知識やスキルを身につけるべきなのか。そんな、これからの営業の基本を学びます。また、営業という仕事のやり甲斐や醍醐味についても、考えてもらえる機会を提供致します。