「どうすれば、経営者の意識を変えられるでしょうか?」
改革に熱心な若手や中堅の社員から、こんな相談を請けることがある。
「どうすれば、現場に危機感を持たせることができるでしょうか?」
改革を実現したい経営者から、こんな相談を請けることがある。
どうしてこんなにもわかり合えないのだろう。こんなことでは、「お客様のDXの実現に貢献します。」などと言っている場合ではない。
「風通しが悪い」
この言葉に尽きる。DXなどの流行言葉を駆使したところで、この現実を解決しない限り、変革やイノベーションは難しいだろう。
そもそも、「風通しが悪い」組織とは、どういう組織なのだろう。「風通しが良い」組織と比較しながら、解決策を考えてみようと思う。
動原理や行動特性から考える
「風通しの悪い組織」は、「問題があってはならない」という意識に支配され、「問題が出ないように厳しく管理する」ことが組織の方針であり、行動原理となっている。そのため、不平を口にするのはルール違反であり、組織を混乱なく回すことが最優先と考えられるようになる。そして、あらゆる行動に牽制や抑制が働き、無難な対応しかできない組織となってしまう。結局は、何をやっても成果はそこそこに、大きなビジネスを生みだすことは難しい。
また、問題があってはいけないから、問題が起きれば、なんとか表沙汰にならないようにと隠蔽化し、個人で解決しようという意識が働く。しかし、解決できないままに深刻な事態へと向かってしまえば、ビジネスにも個人にも大きなダメージを与えることになる。
このような事態を避けようと、部下は自然と防御的行動をとるようになる。例えば、次のような行動だ。
- 上司の意見に合わせる
- 文句を言わず黙って従う
- 面倒な情報は上司に伝えない
当然、組織のパフォーマンスが上がらない。
これに対して「風通しの良い組織」とは「問題があるのは普通」という考えが行動を支配している。そのため、問題を早く出させるように多くの機会を作ろうとする。そのために、問題をどんどん提起することを評価し、困難があっても改善、改革することを奨励するような雰囲気作りに努力する。その結果、新しい発想、新しいきっかけ作りが誘発され、潜在力が引き出されるようになる。また、問題が小さい内に顕在化されるので、深刻な事態は回避される。
このような組織は、常に積極的な行動を取るようになる。例えば、次のような行動だ。
- 積極的な「抵抗勢力」になる
- おかしいと感じたらすぐに伝える
- 問題を解決しようと支援を求める
組織は、個々人の持てる力以上のものを引き出す事ができるようになり、高いパフォーマンスを維持しづけることができる。
問題への対処のしかたから考える
問題への対処について、この2つの組織の行動の違いを整理してみまよう。
まず、「風通しの悪い組織」にいるメンバーは、問題を意識すると、それを相談できないので、自分で何とかしようとする。解決できればいいが、それができないと結局は、それを遠ざけ、放置しようとする。その結果、時間と共にリスクは益々大きくなってゆき、不安が拡大し、問題意識がますます重くのしかかる。「停滞・衰退を拡大するサイクル」が回り始める。
「不満」は人を殺すことはないが、「不安」は時に人を殺すこともある。死に至らしめるほどではなくても、心に深いダメージを与える可能性はあるだろう。
一方、「風通しの良い組織」のメンバーは、問題意識を持つとすぐにその問題を上司やまわりと共有し、一緒に解決しようと行動する。当然、解決する機会は増え、達成、成功の喜びを感じる機会も増える。それは、同時に「成長を実感」できる機会でもある。
人は、このような機会をもっと得たいと思うようになる。この意識が、チャレンジを促し、学習意欲を高める。「潜在力を引き出すサイクル」が回り始める。
部下を育成し、組織としてのパフォーマンスを高めるためには、ルールや手段を教えるだけでは不十分だ。「潜在力を引き出すサイクル」を作り、その組織にいることが、自分の成長につながることを実感させることだ。そのような組織にいれば、人は自発的にルールや手段を学ぼうとする。
マネージャーやリーダーの役割から考える
組織のミッションは、組織目標の達成だ。そして、それが一時的なものではなく、どのような状況にあっても達成できることであり、常に高い目標を達成できるように、組織としての力を成長させ続ける基盤を築くことにある。
しかし、「停滞・衰退を拡大するサイクル」を回している「風通しの悪い組織」にいるメンバーは、組織への信頼を失っているので、行動は常に消極的となり、成長の基盤が築かれることはない。もし、次のようなことを考えるようなら、それは、自分が「風通しの悪い組織」にいると言うことだ。
- 言い出しっぺは損
- どうせ言っても無駄
- 余計なことは言わない方が無難
- 波風を立てない
- 上司に従っていればいい
一方、「潜在力を引き出すサイクル」が回っている「風通しの良い組織」は、組織への信頼を実感している。もし、次のようなことを考えるようなら、それは、自分が「風通しの良い組織」にいると言うことだ。
- 言えばチャンスが生まれる
- 言えば必ず聞いてもらえる
- 気がついたら、とにかく話してみる
- 波風を立ててもいわなくては
- 自分の判断を大切にしたい
不確実性の高まる世の中で、事業を継続し、生き残るためには、圧倒的なビジネス・スピードを獲得するしかない。そのためには、大胆に現場に権限を委譲する必要がある。だからこそ、デジタル・テクノロジーを駆使して、データで、あるいは迅速なコミュニケーションでビジネスの現場を「見える化」することや、パターン化された、あるいはルーチン化された仕事は、徹底してデジタルに委ね、従業員には、テーマや目的の設定、イノベーションの創出、顧客との対話など、人間にしかできないことに、意識や時間を与えようというのが、DXの目指すところだ。「風通しの良い組織」は、そんなDXを実現する土台である。
「風通しの悪い組織」のままでは、DXの実現は無理だろう。しかし、そんな企業でも、DXという世間の風に抗いきれず、何とかしなければとなるのだが、土台となる企業の文化や風土がないので、結局のところ、デジタルを使うことが目的化してしまう。
SI事業者の語るDXが、時にして、底が浅くなってしまうのは、その会社が「風通しの悪い組織」であり、DXの土台となる「風通しの良い組織」が、イメージできないからかも知れない。そんな会社に共通するDXビジネスは、「IoTやAIを使った新しいビジネスを作ること」であったり、「RPAを使って業務効率を劇的に改善すること」であったりする。それが悪いわけではないが、DXの本質とは、大きくかけ離れている。それをDXと言うことで、お客様や世間に誤解を与えているとすれば、これはなんとも残念なことだ。
「DXの実現に貢献します」との看板を掲げ、それをビジネスにつなげたいのなら、まずは、自らが「風通しの良い組織」となることだ。その模範を通して、自分たちが磨いたスキルやノウハウを提供することが「共創」であり、それができて、始めて看板通りのことができるのではないか。
まずは、そんな地道な取り組みから、DXの実践を始めてはどうだろうか。
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