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クレディセゾンが2019年10月から始めた「お月玉」というサービスは、瞬く間に注目を集め、利用金額の増加と新規会員の獲得に劇的な貢献を果たした。
「毎月1万円が当たる」というのはもちろん魅力的だが、「透明な現金書留」に1万円札が入って送られてくるというのは、なかなかのインパクトだ。実際に受け取った人に聞いたところ、びっくりして写真に撮って、インスタでシェアしたという。まさに、これこそが狙いで、口コミでうわさがうわさを呼び、関心が拡がっていったという。ついでながら、この現金書留には、撮影用の台紙も入っているというから、見事な気の回しようだ。
このサービスを支えるシステムを作るために、どれだけの期間と手間がかかったのか、開発の責任者に話しを聞いたことがある。開発に要した期間は3ヶ月、それを社員6人のチームでこなしたという。たぶん人件費に換算すれば、数百万円程度だろう。手直しや機能の追加は、早い場合には10分程度で対応しているという。
これをSI事業者に外注すれば、数千万円は下らないだろうということだった。もちろん手直しや機能追加を依頼すれば、仕様の確認や工数の積算、見積や発注などの手間をかけなくてはならない。とても彼らのスピードで対応できるものではない。今後展開する新しいサービスもこのスピードですすめてゆくそうだ。
フジテレビジョンは、2019年9月に行われたFIVB ワールドカップバレーボール 2019 において、数万人が同時に視聴できる配信環境を 3 週間ほどで構築した。AWSが提供するクラウド環境から動画を配信するAWS Elemental MediaStore と、CDN(Content Delivery Network)の Amazon CloudFrontを組み合わせた世界最初の事例だという。もし、これをSI事業者に外注していたら、こんな期間で作ることはできなかっただろう。
このような取り組みが「DX」だ!などと言いたいわけではない。このスピード感を生みだす組織のあり方であり、行動様式、すなわち圧倒的なビジネス・スピードを持つ企業文化を持つことがDXの本質であろう。この2つの事例は、そんなのDXの本質を垣間見せてくれる。
SI事業者の中には、いまだDXをAIやIoTを使って新しいビジネスを立ち上げることであると、自分たちに都合のいい解釈をしているところもある。しかし、どんなに素晴らしい技術を駆使しても、意志決定に時間かかり、行動が遅く、俊敏に変化に対応できなければ、圧倒的なスピードを求める企業の期待に応えることはできないだろう。
DXは「変化に俊敏に対応できる企業文化や体質への変革」を意味する言葉だ。そんな事業や経営の根幹に関わることを外注しようなど考える企業は、常軌を逸している。
もし、DXを外注しようというユーザー企業があれば、これは「しめた!」と歓喜すればいい。AIやIoTの要素をふんだんに取り入れたPoCをたくさん提案すればいい。お客様の事業の成果に貢献できるかどうかなど考える必要はない。PoCなのだから失敗しても構わない。それでいて工数需要は積み上がり、お客様のお金で新しい技術の勉強もできる。
DXを外注しようなどと考えるお客様なのだから、DXの本質を理解していないのだろう。こういうお客様をたくさん見つけ、AIやIoTでPoCを仕掛けて、リスクなき工数需要、すなわち「DX案件」を拡大する。これこそが、SI事業者が目指す「DX事業」であり、これを拡大する取り組みが「DX戦略」とすればいい。
これまでの事業モデルを変える必要はない。DXの世間の認知も簡単には変わらないから、しばらくはこれで工数需要を賄うことができる。稼働率も上がり、新しいことに取り組むので、現場の士気も高まる。いいとこずくめのDXである。
ただ、そういう需要も一気にしぼんでしまう可能性が出てきた。それが、コロナ・ショックだ。景気の大きな後退はもはや避けられない状況となった。予算の見直しや新たな投資の自粛、事業の縮小などが現実になろうとしている。リーマン・ショックのときのシステム投資の減少と同様の事態に陥ることを覚悟しておくべきだろう。
当然、不要不急のPoCは軒並み中止となり、その他の新規投資の需要も落ち込む。既存の仕事も「内容は変えずに単金を下げて欲しい」との要求が増えていくだろう。工数需要に頼っている企業にとっては、厳しい時期を迎えることになる。
企業は改めて不確実性の高まりを実感し、「ビジネス・スピード」の大切さに目を向けるようになるだろう。そのためにデジタルを駆使して、事業や組織、働き方の改革に、これまでにも増して、熱心に取り組むようになるだろう。ビジネス・モデルの変革にもますます積極的に取り組むことになるはずだ。
リーマン・ショックと東日本大震災を経験した我が国では、この2つの出来事をきっかけとして、クラウド利用が急速に拡大した。もちろん、テクノロジーやサービスの進化があればこその需要の拡大ではあるが、これらの出来事は、ITのあり方を見直そうという機運を高めたことは間違えない。
コロナ・ショックも同様にユーザー企業のITへの期待が大きく変わるきっかけを与えることになるだろう。事業とITの一体化、ITを前提とした働き方への変革、競争力の源泉としてのITによる差別化、情報システム部門の再編、内製化へのシフトなどである。当然、SI事業者との関係は見直されることになる。この新たなお客様の期待に応えられる準備はできているのだろうか。
冒頭のクレディセゾンやフジテレビジョンの事例から読みとるべきは、圧倒的なビジネス・スピードが、競争力の源泉になるということだ。ビジネスは、サービスをいち早く起ち上げ、現場からのフィードバックに直ちに対応し、改善を高速で繰り返すことができなくては、移ろいやすい顧客の気持ちをつなぎ止めておくことは難しい。
ITは、そんなサービスを支える手段である。ならばITもまた、圧倒的なスピードを手に入れなければ、役割を果たせない。それを可能にするカタチが、事業部門主導によるシステム開発や運用の内製化だ。事業とITが一体化し、事業の判断を直ちにITに反映でなければ、ビジネス・スピードを手に入れることはできないからだ。
サービスは、顧客のためばかりではない。従業員は、社内サービスのユーザーである。彼らは、社外の様々なサービスのユーザーであるわけだから、社内で提供されるサービスが時代遅れのままであれば、当然不満も募り、士気も下がり、仕事も停滞する。
- 在宅勤務になったが、社員が一斉に社外からVPNセッションを張ろうとするので、何時間たってもつながらず、VDIなので、つながらなければ仕事にならず、VPNを使わなくていいオフィスに出社して仕事をしている。
- Webで会議や打ち合わせをしようとしても、一斉に使うようになったことで、音声は途切れるし、画面はカクカクだし、使いものにならない。
- 社内にある書類を見なければ仕事にならず、ハンコをつかなくてはらないので、在宅勤務をするようにとの指示が出てはいても、結局は出社しなければ仕事ができない。
コロナ問題で、このような社内サービスの現実に気がついた従業員からの要請に応えようとすれば、ゼロトラスト・ネットワークやクラウド・ネイティブにより、ITの「近代化」を進めてゆかなければならないだろう。
これらテクノロジーはクラウド・サービスでありセルフ・サービスである。だとすれば、外注する必要はない。いや、時間的にもコスト的にも外注するのは現実的ではない。こちらもまた、社内にスキルを蓄積し、迅速に対応できるように内製化をすすめてゆくことになるだろう。そのために、情報システム部門の変革を進めている企業も増えてきた。
「組織の意志が直ちに反映されるITの実現」こそ、DXを支えるITの要件である。
そのためには、内製化が前提となる。SI事業者がこれを外注させようとすることは、お客様の利益に反する。
もちろん、内製化といえども、お客様で全てがまかなえるわけではない。スキルも労力も不足するだろう。だから、彼らが自立し、彼らがクラウドを使いこなし、彼らがアジャイル開発やDevOpsをこなせるように、模範を通してスキル・トランスファーすることには、確かな需要がある。また、彼らが主導し、プロジェクトを進める時に、チームの一員として、あるいは、テクノロジーのスペシャリストとして、彼らを支えることや、テクノロジーやビジネスのスペシャリストとして、協力し、彼らの新規事業の創出に、チームの一員として関わってゆくことも求められるようになるはずだ。彼らが内製化を進めるための環境作りやプラットフォームの提供も期待されるだろう。このような期待に応えることが、「共創」であろう。
DXは内製化が前提である。ならばそれを支援するための「DX戦略」や「DX事業」を組み立てるべきだ。既存の需要で、収益が確保できる間に、このDXの本質に向きあい、何をすべきかを考えておくべきだろう。
コロナ・ショックは、この動きを加速する。例え加速することにならなくても、このトレンドが変わることはない。ならば、何をすればいいのか。
- 理解:お客様の事業やそれを取り巻く環境、経営や業務についての深い理解
- 信頼:お客様のビジネスについて共通の価値観を共有し、誠実に取り組むことで得られる信頼
- 技術力:お客様をリードする圧倒的な技術力
ここに上げた3点は、とても基本的なことだ。この基本に立ち返り、DX戦略を進めてゆくための自分たちの事業資産を再定義してはどうだろう。そんな自分たちの企業文化の変革、すなわち、自分たちのDXなくして、お客様のDXに口出しするのは、やめたほうがいい。。
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ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー
【3月度のコンテンツを更新しました】
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・DX関連のプレゼンテーションを大幅に拡充
・ITソリューション塾・第33期(現在開催中)のプレゼンテーションと講義動画を更新
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【改訂】総集編 2019年3月版・最新の資料を反映しました。
【改訂】ITソリューション塾・プレゼンテーションと講義動画
>デジタル・トランスフォーメーション
>ソフトウエア化するインフラとクラウド
>IoT
>AI
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ビジネス戦略編
【新規】デジタルとフィジカル p.5
【新規】Purpose:不確実な社会でもぶれることのない価値の根源 p.22
【新規】DXの実装 p.37
【新規】DXの鍵を握る テクノロジー・トライアングル p.38
【新規】DXの実践 p.41
【新規】ビジネス構造の転換 p.42
【新規】エコシステム/プラットフォームを支える社会環境 p.74
【新規】「活動生活」の3分類 p.278
ITインフラとプラットフォーム編
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【新規】回線とサービスの関係 p.268
クラウド・コンピューティング編
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【新規】政府の基盤システム Amazonへ発注 p.33
【新規】AWS Outposts の仕組み p.108
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サービス&アプリケーション・先進技術編/AI
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【改訂】AIと人間の役割分担 p.22
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【新規】管理職の仕事の7割をAIが代替・Gartnerが2024年を予測 p.87
下記につきましては、変更はありません。
開発と運用編
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テクノロジー・トピックス編