「AIやIoTについてご相談を頂くことはありません。あなたがおっしゃるほど、まだ需要があるとは思えません。」
「アジャイル開発ですか?うちのお客様で、そんな話はありませんよ。」
「クラウドは話題にはなりますが、具体的なご相談を頂いたことはありません。私どものお客さんは、まだまだ先の話だと思いますよ。」
どうせできないだろうからと、お客様から相手されていないだけのことだと、なぜ気づけないのだろうか。このようなことで大忙しの企業はいくらでもある。その多くが、あまりの依頼の多さに応えきれずに困っている。
足下の工数需要は堅調であり、稼働率も高く、売上や利益を伸ばしている企業は多い。そんなことが、この現実への感度を鈍らせているのかもしれない。
稼働率が上がっている理由を突き詰めてゆけば、その多くは「景気の拡大に伴うシステム需要の増大」が大半を占めているようだ。自らが開拓した「新しい事業や新規の顧客による需要の増大」による稼働率の上昇である割合は、さほど多くないような気がしている。
景気の浮き沈みは自分たちでどうすることもできない。いまは好調でもやがて落ち込む時期が来る。そんな景気の波に従うしかない企業にとって、事業計画に意味はない。計画を作ることに費やす時間があれば、工数として稼働率を稼いだ方が、よほど実利があるだろう。
こういう企業にありがちな事業計画は、「社員の人数×稼働率」が根拠となっている。新規事業や新規顧客といった新たな事業価値を産み出して収益を拡大することは努力目標とされることはあっても、事業計画に於いては実質的に考慮されない場合が多い。結局のところ「自分で自分未来を描けない」ということになる。
ビジネスは先手を打ってこそ、成長のチャンスが与えられる。いまの好調が「先手」の結果ではないとすれば、それは企業の健全かつ継続的成長を促すものではない。しかも、稼働率が高まった結果として、人手不足への対応が優先され、人材の育成をおろそかにし、新規事業への取り組みを先送りしているとすれば、ますます「先手」をとることは難しくなる。
景気が退潮に向かいはじめると、稼働率は減少し人件費負担が重くのしかかり、経営を苦しい状況に追い込んでしまうだろう。その時に新しいことをはじめようとしても、成果が直ぐに得られることはない。
しかし、落ち込んでもやがて復調するのが景気だとすれば、厳しい時期をなんとか耐えしのげばいいではないかという楽観論もあるかもしれない。しかし、そんな簡単なことにはならないだろう。
SIビジネスには、クラウド化、自動化、内製化という3匹の「お化け」が取り憑いている。そのお化けたちが、従来の需要を食べ尽くしてしまい、景気が回復しても需要が戻ることはないだろう。
クラウド化は、物販の需要を減らし、拠点間のネットワークはクラウドのバックボーンネットワークに代替される。インフラやネットワーク構築の需要を大幅に減少させる。来年には登場するとされる5Gは、LANやモバイル・デバイスとの接続、IoTなどのネットワークとして置き換えてゆくだろう。そうなれば、クラウドと相まって、ネットワーク構築に伴う工数需要は大きく減少することは避けられない。
また、クラウドの需要はインフラ(IaaS)からプラットフォーム(PaaS)やアプリケーション(SaaS)へとシフトする。これに伴い、運用管理やセキュリティはクラウドへとアウトソーシングされる。そして、アプリケーション開発の高速化や変更への柔軟性が求められるようになる。サーバーレスやFaaS(Function as a Service)、コンテナやマイクロサービスが、アプリケーション開発の重要な要件となるが、それに対応できているSI事業者はまだ少ない。
Office365やWindows10が普及すれば、セキュリティや認証管理の仕組み作りはいままでに比べて大幅にシンプルになり簡素化される。その導入や構築に伴う工数は確実に減少するだろう。
一方で、既存の自社システムのアーキテクチャを刷新し、クラウドをベースとした新たアーキテクチャへ移行することは技術的にはなかなか大変なことだ。だから、これを実現できる技術力という需要が拡大する。
クラウド化は、確かに既存の物販や工数の需要にとっては脅威ではあるが、それに対応するだの技術力は、新たな需要を生みだし、ビジネスの・チャンスを生みだすことになる。
自動化は、このクラウド化を背景に運用管理やセキュリティのかなりの範囲をカバーする。アプリケーションの開発も「完全自動化」は容易に実現するとことはないが、フレームワークの充実や超高速開発の機能向上、PaaSやサーバーレス/FaaSの普及とともに、開発スピードの高速化と変更への柔軟性や俊敏性を求められるようになるだろう。アジャイル開発やDevOpsはこんな需要を支えることになる。
アジャイル開発やDevOpsが目指すのは、短期間、低コストでシステムを作り運用することではない。ビジネスの現場にジャストインタイムで必要なサービスを提供することにある。ビジネス環境の変化が加速する中、これに即応して、ビジネス・プロセスを変更したり必要とするサービスを迅速に提供したり、ダイナミックに変更することが、企業の生命線になりつつあるいま、自動化はこの取り組みを支える前提になろうとしている。
内製化は、デジタル・トランスフォーメーションの時代を迎え、新しい常識となるだろう。その背景には、ITが経営や事業の競争力を生みだし、差別化の要件になることを多くの企業が認識しはじめたことがある。
ITは、これまで、本業の生産性や経費の削減を支援するための「道具」として認識されてきた。そのためITもまた経費であり少しでも削減することが求められてきた。しかし、ITが競争力の源泉になるとすれば、もはやITは本業であり、企業のコアコンピタンスとなる。それを外注するなどと言うことは考えられない。だから、内製化へとユーザー企業を突き動かすだろう。IT予算は経費から投資へと変わるので、技術力を駆使して魅力的な提案ができ、開発や運用の効率を高めれば利益率の高いビジネスになるだろう。
先日、私が主催するITソリューション塾に大手製造業で新規事業を推進する2人の責任者を招いて話を伺った。かれらに、「SIerに何を期待するか」と質問したところ、「期待することはない」と明言した。90名のSIerの社員を目の前にしての話しだ。ちなみに、この2人はもともとSIerに勤めていた経歴の持ち主だ。
正確に言えば、依頼に応え工数を提供するだけのSIerに期待することはないと言うことであって、かれらは何もかも自分たちだけでできるとは思っていない。だから、アジャイル開発やDevOpsの実践に長けたSIerとは資本提携までして、そのノウハウを吸収しようとしている。つまり、工数ではなく技術力にお金を払うというスタンスだ。一方で、そのSIerの立ち位置は、そんなユーザー企業の内製化支援ということになる。
AIやIoTの技術の進化と普及に伴い、それを積極的に活用してゆけるかどうかが、事業会社の競争力を大きく左右することになるだろう。そうなれば、たとえ内製化をすすめるにしても技術力を全て自社でまかなうことは難しい。ならば、外部の協力を得て、技術力を補おうというモチベーションが強力に働くことになる。そこに大きな需要が生まれてくるだろう。
あなたには3匹の「お化け」が見えているだろうか?少し冷静になって、テクノロジーのトレンドを見据えれば、それがどれほどの力を持ち始めているかに気付くことになるだろう。
【募集開始】ITソリューション塾・第29期 10月10日より開講
デジタル・トランスフォーメーションへの勢いが加速しています。クラウドはもはや前提となり、AIやIoTを事業の競争力の源泉にしようと取り組んでいる企業は少なくありません。ITを使うことは、もはや「手段」ではなく「目的」であり「本業」へと位置づけを変えようとしています。このような取り組みは内製となり、これまでの工数を提供するビジネスは需要を失い、技術力を提供するビジネスへの需要は拡大しつつあります。
この変化の道筋を見通し、先手を打つためにはどうすればいいのかを、学び考えるのが「ITソリューション塾」です。次期より講義内容を刷新致します。
最新のトレンドをわかりやすく体系的に整理することだけではありません。アジャイル開発やDevOps/デジタルトランスフォーメーション、新時代のサイバーセキュリティなどについては、それぞれの最前線で活躍する講師を招いて、その感性と実践ノウハウを学びます。
日程 :2018年10月10日(木)〜12月19日(水)
回数 :全11回
定員 :80名
会場 アシスト本社/東京・市ヶ谷
料金 :¥90,000- (税込み¥97,200)
参加登録された方はオンラインでも受講頂けます。出張中や自宅、あるいは打ち合わせが長引いて間に合わないなどの場合でも大丈夫。PCやスマホからライブ動画でご参加頂けます。
詳しくは、こちらをご覧下さい。
【残席わずか】新入社員ための最新ITトレンド研修
IoT、AI、クラウドなどのキーワードは、ビジネスの現場では当たり前に飛び交っています。デジタル・トランスフォーメーションの到来は、これからのITビジネスの未来を大きく変えてしまうでしょう。
しかし、新入社員研修ではITの基礎やプログラミングは教えても、このような最新ITトレンドについて教えることはありません。
そんな彼らに「ITトレンドの最新の常識」と「ITビジネスに関わることの意義や楽しさ」についてわかりやすく伝え、これから取り組む自分の仕事に自信とやり甲斐を持ってもらおうと「新入社員ための最新ITトレンド研修」を昨年よりスタートさせました。今年も7月17日(火)と8月20日(月)に開催することにしました。
参加費も1日研修で1万円に設定しました。この金額ならば、会社が費用を出してくれなくても、志さえあれば自腹で支払えるだろうと考えたからです。
社会人として、あるいはIT業界人として、厳しいことや頑張らなくちゃいけないことも伝えなくてはなりません。でも「ITは楽しい」と思えてこそ、困難を乗り越える力が生まれてくるのではないでしょうか。
- ITって凄い
- ITの仕事はこんなにも可能性があるんだ
- この業界に入って本当に良かった
この研修を終えて、受講者にそう思ってもらえることが目標です。
よろしければ、御社の新入社員にもご参加いただければと願っております。
詳しくは、こちらをご覧下さい。
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
LiBRA 7月度版リリース====================
ITソリューション塾・第28期の最新教材を掲載
メモリー・ストレージ関連のチャートを拡充
AI専用プロセッサーについてのチャートを追加
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ビジネス戦略編
【新規】デジタル・トランスフォーメーションの定義 p.22
インフラとプラットフォーム編
【新規】メモリーとストレージの関係 p.216
【新規】速度と容量の違い p.217
【新規】ストレージ構成の変遷 p.217
【新規】新章追加・不揮発性メモリ p.238-242
メモリ階層
コンピュータの5大機能
記憶装置の進化
外部記憶装置が不要に!?
サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
【新規】IoTビジネスとはどういうことか p.43
【新規】IoTビジネス戦略 p.45
サービス&アプリケーション・先進技術編/人工知能とロボット
【新規】AIやロボットに置き換えられるものと残るもの p.111
【新規】皆さんへの質問 p.131
【新規】求められる人間力の形成 p.132
【新規】新章の追加・AI用プロセッサーの動向 p.133-146
急増するAI 専用プロセッサ
人工知能・機械学習・ディープラーニングの関係
深層学習の計算処理に関する基礎知識
AI = 膨大な計算が必要、しかし計算は単純
学習と推論
GPUはなぜディープラーニングに使われるか
データセンター向けGPU
GoogleがAI 処理専用プロセッサ「TPU」を発表
TPUの進化
クライアント側でのAI処理
Apple A11 Bionic
ARMのAIアーキテクチャ
開発と運用編
【新規】VeriSM p.6
【新規】早期の仕様確定がムダを減らすという迷信 p.13
【新規】クラウド・バイ・デフォルト原則 p.17
クラウド・コンピューティング編
*変更はありません
サービス&アプリケーション・基本編
*変更はありません
テクノロジー・トピックス編
*変更はありません
ITの歴史と最新のトレンド編
*変更はありません
【ITソリューション塾】最新教材ライブラリ
第28期の内容に更新しました。
・CPSとクラウド・コンピューティング
・ソフトウェア化するインフラと仮想化
・クラウド時代のモバイルデバイスとクライアント
・IoT(モノのインターネット)
・AI(人工知能)
・データベースとストレージ
・これからのアプリケーション開発と運用