「わたしたちの存在理由は何か?」
私たちはその答えを改めて考え直さなければならい時期に来ています。
これまでのテクノロジーの進化をたどれば、手順の決まった仕事は機械に置き換えられてきました。例えば、銀行窓口の行員はATMに置き換わり、駅員の仕事であった改札はICカードのタッチに置き換わりました。そして、コンビニのレジには店員はいらなくなろうとしています。単純な手順から始まった自動化は、より複雑な手順を置き換えようと進化し続けています。
昨今注目されているRPA(Robotics Process Automation)も、いまはまだ単純なキーボードとマウスの操作の置き換えでしかありませんが、機械学習を組み込むことで、曖昧で複雑な状況の中で判断が必要な操作をも置き換えてゆくことになるでしょう。
Oracleが2017年10月に発表したOracle Database 18cの発表には、次のことが明記されています。
「自動化によってあらゆることが可能となります。99.995%の可用性、計画/計画外停止を30分未満抑える保証を可能とします」
- 自動稼働:機械学習を用いることで、適応型のパフォーマンス・チューニングを継続して行います。アップグレードとパッチ適用を稼動しながらに自動実行されるようになっています。そのためサイバー攻撃から保護するために、稼動しながらセキュリティ・アップデートが自動的に適用されます。
- 自動スケーリング:ダウンタイムを発生させることなく、コンピューティングとストレージの拡張・縮小を瞬時に実行します。「Oracle Autonomous Database Cloud」はAmazonに比べてコンピューティングとストレージの消費量が少なく、手動管理のコストが低く抑えられることから、大幅なコスト削減が実現します。
- 自動修復:ダウンタイムを自動的に保護します。SLAにより995%の信頼性と可用性を保証しており、コストのかさむ計画/計画外停止の発生が年間30分未満に抑えられます。
これまではデータベース技術者が行うべき仕事でしたが、もはやそこに人間の仕事は不要です。たぶん人間よりも的確、迅速に仕事をしてくれるようになるでしょう。
システム開発もまた、いま大きな転換点を迎えようとしています。これまでのシステム開発では、ビジネス課題を解決するために行うべきことを仕様にまとめ、その手順すなわちアルゴリズムを人間が考え、プログラムを書いて課題を解決してきました。
しかし、ビジネスのデジタル化が急速に進み、処理テーマの増大と多様化・変化のスピードが加速したことで、もはや「経験値×職人技」での対応が限界に達しようとしています。そこで、アルゴリズムに頼るのではなく、データを集め、機械学習で分析して学習モデルを作り、それで課題を解決するというプロセスへと置き換わろうとしています。このサイクルを高速で回転させ完成度を高めとゆこうというのです。システム開発における人間の役割は、いま大きく変わろうとしているのです。
このようなことから「ロボットやソフトウェアが人間の仕事を奪ってしまう」と言う人もいるのですが、仕事の総量に限りがあるという考え方は、「労働塊の誤謬(ろうどうかいのごびゅう、lump of labor fallacy)」と言われ、経済学者の間では一般的に誤りとされています。
確かに既存の仕事は機械に置き換えられることがあっても、それに代わるこれまでに無い新しいタイプの仕事が産み出されてゆくことになります。そして、人間はテクノロジーを使いこなし、より高い付加価値を産み出すことに役割をシフトしてゆかなければなりません。そうなれば、IT事業者もまた自ずとビジネスのあり方が変わり、収益の構造も変えてゆかなければなりません。このトレンドはもはや変えることはできないわけですから、むしろ積極的にこの変化に対応することが、ビジネスを生きながらえさせ、成長させることになることは言うまでもないことです。
特にいまIT事業者に求められていることは、このようなテクノロジーをクロス・オーバーに俯瞰し、どうすればビジネスの成果に結びつけられるかのアドバイスであり、一緒になって考えてもらえる共創であると言えるでしょう。
- 「私たちの会社は、その分野は専門ではないのでできません。」
- 「それは私と担当が違いますので、あらためてそちらの担当者を同行させます。」
- 「うちはデータベースの構築に自信があります。そのための認定エンジニアを多数抱えています。」
残念ながら、「これしかできません」企業は次第にお客様から疎遠にされてゆくことを覚悟しなければなりません。もちろん全てを自分たちでできる企業などありませんから、リソースを融通できるオープンな連係が必要です。ただ、「全てのことに相談にのれる存在」であることは譲れない前提です。
冒頭にも申し上げたとおり、「手順の決まった仕事は機械に置き換えられる」時代です。そこに工数は生まれません。だから新たな役割を担えなければ、存在理由はないのです。
お客様にとって大切なことは、自分たちの解題を解決すること、あるいは、自分たちの掲げたテーマを達成することです。そのためにテクノロジーやサービスをどのように組み合わせ、実装してゆけばいいのかを共に考えてくれる存在としてのIT事業者が求められているのです。
ビジネスの成果とテクノロジーを結びつけられる「直感力」、その仕組みを考える「デザイン力」、お客様のビジネスのあるべき姿を描ける「構想力」が、IT事業者には求められているのです。
「わたしたちの存在理由は何か?」
これまでのビジネスの価値基準を前提にこの問いに答えることはできたかもしれません。しかし、これからの時代に求められる価値基準の中で、この問いに答えられるでしょうか。
iPhoneが登場して10年、経済や社会の仕組みがどれほど大きく変わったかを考えれば、「変化のスピード」の意味を知ることができるでしょう。そして、その先の未来を世界に先んじて体現している中国の動向を見ると感動もするし、そのことがもたらす「やりすぎ感」に恐怖すら感じます。日本や世界が同じようになるかはともかくとして、10年という期間が、いまの世の中においてどれほどのスピードを持っているのかを感じることはできます。そしてそれは、明らかに加速しています。
「まだ大丈夫」と考えた瞬間に加速された時間の中では「停まる」と同義語であることを覚悟しておくべきかもしれません。
内容:全3回の講義と演習/受講者と講師のコミュニケーション
- 2月26日(月)第1回 最新のITトレンドとこれからのビジネス戦略
- 4月27日(金)第2回 デジタル戦略を実践するための手法とノウハウ
- 5月29日(火)第3回 未来創造デザインによる新規事業の創出
2月14日(水)よりスタートする次期「ITソリューション塾・第27期」の受付を開始致しました。
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日程 2018年2月14日(水)~4月25日(水) 18:30~20:30
回数 全11回
定員 80名
会場 アシスト本社/東京・市ヶ谷
料金 ¥90,000- (税込み¥97,200) 全期間の参加費と資料・教材を含む
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【お願い】早期に定員を超えると思われますので、まだ最終のご決定や参加者が確定していない場合でも、ご意向があれば、まずはメールにてご一報ください。優先的に参加枠を確保させて頂きます。
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第27期は、これまでの内容を一部変更し、AIやIoTなどのITの最新トレンドについての解説と共に、そんなテクノロジーを武器にして、どうやって稼げばいいのかについて、これまで以上に踏み込んで考えてゆこうと思います。また、働き方改革やこれからのビジネス戦略についても、皆さんに考えて頂こうと思っています。
SI事業者の皆さんには、これからのビジネス戦略やお客様への魅力的な提案を考える材料を提供します。
情報システム部門の皆さんには、自分たちのこれからの役割やどのようなスキルを磨いてゆく必要があるのかを考えるきっかけをご提供します。
講義で使用する500ページを超える最新のプレゼンテーションは、オリジナルのままロイヤリティ・フリーで提供させて頂きます。お客様への提案、社内の企画資料、イベントでの解説資料、勉強会や研修の教材として、どうぞ自由に活用してください。
古い常識をそのままにお客様の良き相談相手にはなれません。
「知っているつもりの知識」から「実践で使える知識」に変えてゆく。そんなお手伝いをしたいと思っています。
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
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- 開発と運用について大幅に追加改訂しました。
- デジタル・トランスフォーメーションについての解説を増やしました。
- 量子コンピュータについての記述を追加しました。
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追加・更新の詳細は以下の通りです。
ビジネス戦略編
【改訂】デジタル・トランスフォーメーションの意味 p.5
【新規】デジタル・トランスフォーメーションとは p.11
【改訂】デジタル・トランスフォーメーション実践のステップ p.12
【新規】デジタル・トランスフォーメーション時代に求められる能力 p.14
【改訂】SIビジネスのデジタル・トランスフォーメーション p.15
【改訂】共創の3つのタイプ p.82
サービス&アプリケーション・先進技術編/AI
【新規】深層学習が前提となったシステム構造 p.68
開発と運用編
【新規】開発と運用:従来の方式とこれからの方式 p.15
【新規】アジャイル開発の基本構造 p.16
【新規】アジャイル開発の目的・理念・手法 p.23
【新規】スクラム:特徴・三本柱・基本的考え方 p.25
【新規】スクラム:スクラム・プロセス p.26
【新規】スクラム:プロダクト・オーナー p.27
【新規】スクラム:スクラム・マスター p.28
【新規】スクラム:開発チーム p.29
【新規】エクストリーム・プログラミング p.30
【新規】これまでのソフトウェア開発 p.58
【新規】これからのソフトウェア開発 p.59
【新規】Microsoft Azureによる予測モデルの開発方法 p.60
インフラ編
【新規】ストレージ・コストの推移 p.215
テクノロジー・トピックス編
【改訂】ソーシャル・グラフ 解説文・追加&改訂 p.4
【改訂】CSIRT解説文・追加&改訂 p.6
【改訂】3Dプリンター 解説文・追加&改訂 p.7
【改訂】RPA 解説文・追加&改訂 p.17
【新規】量子コンピュータがいま注目される理由 p.73
【新規】D-Waveとは
【新規】量子ゲート方式の限界と可能性 p.82
ITの歴史と最新トレンド
*追加・変更はありません。
サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
*追加・変更はありません。
サービス&アプリケーション・基本編
*追加・変更はありません。
クラウド・コンピュータ編
*追加・変更はありません。
【講演資料】量子コンピュータ
【新規】量子コンピュータがいま注目される理由 p.73
【新規】D-Waveとは
【新規】量子ゲート方式の限界と可能性 p.82