「Oracle Autonomous Database Cloud」は、データベースのチューニング、パッチ適用、アップデート、メンテナンスに伴う人的作業を不要にする。
オラクルは、先日開催された「Oracle OpenWorld 2017」において、自律型データベース・クラウドの構想について明らかにしました。
プロジェクト管理とアプリケーション開発、アプリケーション保守の3つの領域で高速化と高品質化を“AI(Artificial Intelligence:人工知能)”/コグニティブ技術を使って支援する「IBM Watsonを活用した次世代超高速開発」を発表し、併せて、この次世代超高速開発環境をサービスとして提供するサービス「コグニティブPMO」と「統合リポジトリー&ツール」の提供を開始した。
日本IBMは2017年4月にこんな発表をしています。
多くの人手を必要としてきた情報システムの開発・運用・保守といった業務が、人工知能や自動化の技術によって置き換えられようとしています。
歴史を振り返れば、COBOLやPL/Iなどの手続き型言語が、JavaやC++などのオブジェクト指向言語に置き換わり、ミドルウェアやパッケージ、開発フレームワークの普及によってアプリケーションの開発や保守の生産性は大幅に向上しました。また、運用自動化ツールやクラウドの普及は運用の工数を減らしてきました。
それでも、工数需要が決定的に減ることがなかったのは、大手金融機関や官公庁、あるいは、企業の情報システム部門が、旧来からのシステムを変えようとしなかったからです。大きな新規開発投資はできるだけ控えて古いシステムを保守で延命させようとしてきたことも理由のひとつです。また経営者も情報システムを「既存業務の生産性向上・コスト削減・期間短縮」のための手段として捉え、根本的な変革を求めてこなかったこともあります。
ただ、生産性の向上のスピード以上に情報システム需要が増大し、テクノロジーの進化が、このスピードを追い越すことができなかったこともあります。しかし、もはやこの状況は変わりました。AIやクラウドの進化は自動化のペースを加速し、開発・運用・保守などの「知的力仕事」に人間が関与する範囲を狭めつつあります。
さらに昨今、ビジネスの差別化や競争優位の武器としてITを活用しようという気運が高まりつつあります。「ビジネス・スピードの加速、価値基準の転換、新ビジネスの創出」のためにITを活用しなくては生き残れないことに経営者や事業部門の人たちが気付き、その対応を加速し始めています。「デジタル・トランスフォーメーション」が注目されるのは、そんな背景があるからです。
前者はコストとしての情報システムであり、少しでも削減しようというモチベーションが働きます。後者は、投資対効果を求める情報システムであり、ビジネスの成果に結びつくのであれば積極的な投資を厭わないといった違いがあります。継続的な成長と利益の安定的確保を望むのであれば、もはや選択肢は後者にしかありません。
少子高齢化が避けられない現実を考えれば、旧来の開発や保守、運用に関わる要員を少しでも減らし、「デジタル・トランスフォーメーション」すなわち、ビジネスとITの一体化により圧倒的な競争優位を築くための「攻めのIT」へと、人材をシフトしてゆくしかありません。そうなれば、「これまでのやり方」ではもはや対応できなくなることは自明です。冒頭のオラクルや日本IBMの発表のような取り組みは今後も続き、この変化をさらに加速することになるでしょう。
当然、求められるスキルも変わり、収益のあげ方も大きな転換を迫られます。この状況にどう対処すればいいかは、先週のブログをご覧頂ければと思います。
【参考】「稼働率は上がってはいるが利益率は下がっている」なら急がなくてはなりません
さらに「働き方改革」も待ったなしの状況です。旧態依然としたやり方を変えられない、あるいは変えたくない企業にとっては致命的です。
単純に「時短=>稼働時間の減少=>工数収入の減少」といったビジネス構造の問題に留まりません。そこに働く人たちの生き方の本質に関わる問題です。「自分の人生を全うするためには、この会社では働けない」といった事態になれば、変革を進めようにもその担い手を確保できなくなってしまいます。
「働き方改革」はテクノロジーの進化と深く関わっています。テクノロジーの進化により、AIや自動化は既存スキルの不良資産化を加速し、人生の「旬」の期間を短縮させてしまいました。合わせて、ライフスタイルや医療・衛生・栄養の改善が高齢化を助長し、100年人生は特別なことではなくなろうとしいます。そうなれば、単一スキル/単一キャリアでは、自分の長い人生の期間を「社会に必要とされる存在」であり続けることは困難です。マルチスキル/パラレルキャリアへの転換を模索せざるを得ません。
行き着くところは、「クロスオーバー人材」へと役割を拡げてゆかなければなりません。それは、異なる分野の物事を組み合わせて新しい物事を作り出せる人材です。心ある人たち、特に優秀な人材は、そんな「環境」が与えられている企業へと移動してゆきます。
ここでいう「環境」とは、労働時間のことだけではありません。兼業や副業、在宅勤務やリモート勤務といった「多様な働きかたの許容」に加え、業績評価や人事制度、そして何よりも事業目標や経営理念そのものの転換をも迫られることになります。
「改革を進めようと思ったら、担い手がいなかった」
そんなことにならないうちに対策を進めなくてはなりません。
稼働率は上がっているが、利益率は上がらない。こんな企業の本質的問題は、自分たちの提供するサービスに差別化できる付加価値がないことです。企業価値の「旬」が過ぎてしまったのです。そうなれば、利益を度外視してでも稼働率を上げ、キャッシュフローを維持するしかありません。しかし、冒頭の事例からも分かるとおり、この状況がそう長続きしないことは、想像に難くありません。だからビジネス構造の転換が求められているわけです。しかし、改革の担い手がいなければ、それもすすめられません。
会社を成長させるために社員を選ぶ企業から、社員が成長できる環境を提供し、社員に選ばれる企業へと転換する。
ビジネス構造の転換と働き方改革は一体の取り組みです。そしてこの言葉にあるような視点で、自社の取り組みを考えてみてはどうでしょう。ただ、その対策のための時間は、それほど残されていないみとも、覚悟しておいた方がいいでしょう。
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
2017年11月版・改訂/追加リリース
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・コンピューターやITのトレンドについて新しいチャートを追加しました。
・人工知能研究の新しいトピックを追加しました。
・社員研修の教材として「チームを元気にするリーダーシップとマネージメント」を追加しました。
・人工知能、IoT、インフラの解説を追加・改訂致しました。
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ITの歴史と最新トレンド
【新規】コンピューターとは何か p.3
【新規】コンピューター誕生の歴史 p.4
【新規】歴史から見たITトレンド p.5
人工知能とロボット
【新規】コレ1枚でわかる人工知能 p.10
【改訂】人工知能の3つの役割と人間の進化 p.11
【改訂】コレ1枚でわかる人工知能とロボット p.12
【改訂】これまでの機械学習とディープラーニング p.43
【新規】敵対的生成ネットワーク GANs p.72
【新規】深層強化学習 p.73
【改訂】自律走行できる自動車 p.105
ノートに記載の解説を改訂・追加しています。
IoT
【新規】M2MとIoT p.7
【新規】IoTと関連テクノロジー p.16
【新規】モノのサービス化の本質 p.39
【新規】IoT World Forumのリファレンス・モデル p.53
【新規】IoTの開発や実行環境 p.55
【改訂】LPWAネットワークとは p58
【改訂】LPWAネットワークの位置付け p.61
【改訂】LPWA主要3方式の比較 p.61
【改訂】ガソリン自動車と電気自動車(部品点数ほか) p.90
【補足】ノートに記載の解説を改訂・追加しています。
ビジネス戦略
【新規】デジタル・トランスフォーメーション p.4
【新規】デジタル・トランスフォーメーションとは p.6
【新規】何が起こっているのか p.29
【新規】IT事業者の働き方改革 p.30
クラウド・コンピューティング
【改訂】クラウドを使うことの狙い p.24
サービス&アプリケーション・基本
・変更はありません。
サービス&アプリケーション・開発と運用
【新規】情報システム部門に期待される役割 p23
インフラストラクチャー
【改訂】マイクロソフトの新戦略 p.59
【新規】仮想マシンとコンテナの稼働効率 p.95
【新規】サイバーセキュリティについての解説を追加(15ページ) p116-130
【改訂】コンバージド・システムとハイパーコンバージド・システム p.138-139
【補足】ノートに記載の解説を改訂・追加しています。
テクノロジー・トピックス
【新規】ARMについての解説を刷新 p.19-24
研修教材
【一般社員研修】チームを元気にするリーダーシップとマネージメント