「いまの事実をデータで捉え、人工知能の技術で最適な答えを見つけ出し、ビジネスを動かす。」
IoTとは何かを言葉すれば、こんな表現になるでしょう。センサー、LPWA、インターネット、認証基盤、機械学習、シミュレーション、ウエブ・サービスなど、様々なテクノロジーを駆使したビジネス・フレームワークがIoTなのです。
この仕組みのことをサイバー・フィジカル・システム(Cyber-Physical System/CPS)と呼ぶこともあります。私たちの生きている現実世界(Physical World)とインターネットの向こうにあるクラウドの世界、言い換えれば電脳世界(Cyber World)が一体となって、ビジネスや社会を動かす仕組みです。
IoTを「現実世界の出来事を、センサーを使ってデータとして捉え、ネットに送り出す仕組み」という狭いとらえ方もありますが、それだけではIoTのもたらす価値や変革を理解することはできません。その先にある、人工知能の技術を駆使した解析や分析による最適解の発見、その最適解を使って効率的で安心・安全を担保したアプリケーションを機能させ、現実世界を動かします。その変化は再びセンサーによって読み取られサイバー世界に帰ってゆきます。現実世界とサイバー世界が一体となってリアルタイムに改善活動を繰り返す、そんな社会基盤がIoT/CPSなのです。
これからのビジネスは、そんなIoT/CPS基盤に組み入れられてゆくでしょう。ビジネスのデジタル化とは、既存のビジネスの仕組みをIoT/CPS基盤を前提としたビジネスの仕組みに作り替えてゆくことです。人間が業務を行うことを前提に作られたビジネスの仕組みを、IoT/CPS基盤を前提に作り替え、ロボットや人工知能を駆使して、人間が働かなくてもいいようにしようとする仕組みづくりです。
人間が働けば、様々な制約条件に縛られます。労働時間や福利厚生、安全管理などは絶対的な条件です。従来は、このような制約の中で、コスト削減や時間短縮、品質向上をめざしビジネス・プロセスを作り、改善してきました。
それに合わせて情報システムも作られてきました。その結果、ビジネスは生産性を高め、様々な恩恵を生みだしてきたのです。しかし、それも行き着くところまで来てしまいました。膨大なシステム投資をしても、人間が働くことの制約があるので限界があり、数パーセント、あるいは十数パーセントの改善が関の山です。
しかし、多くの仕事をロボットや人工知能に任せ、その仕組みをIoT/CPS基盤の上で動かせば、人間が働くことの制約がなくなります。その結果、同じシステム投資であっても、数倍、あるいは数十倍の改善や改革が見込めるかもしれません。このような変革がデジタル・トランスフォーメーション(Digital Transformation/DX)です。まさに時代は、DXへと大きく動き始めています。
「ビジネスのデジタル化」と言う言葉をよく聞くようになりましたが、決して人間を前提とした従来の仕事のプロセスを前提に情報システムを作ることではありません。機械を前提とした仕事の仕組みに作り替え、ビジネスのあり方を根本的に変革しようという取り組みです。この動きは、従来のSIビジネスのあり方を大きく変えてしまいます。
これまでのビジネスは、お客様であるユーザーが何をどうすればいいのかを示すことができました。つまり、「人間が働くことを前提としたビジネス・プロセス」に精通した現場ユーザーが、何処に課題があり、どうすれば効率や品質が改善するかを判断できたのです。だから情報システムの専門家が要件定義し、それが正しいかどうかを現場ユーザー評価します。それに従って情報システムを作ることで、お客様のニーズに応えることができたのです。「正解はお客様が知っている」が前提のシステム開発です。
しかし、ビジネスのデジタル化すなわちDXは、仕事のやり方を根本的に変革しようという取り組みですから現場ユーザーにも正解が分かりません。だから、業務の専門家である現場ユーザーとSI事業者が一緒になって、これからの正解を探索し、創り出してゆかなければならないのです。「共創(co-creation)」が叫ばれるようになったのは、そんな背景があるからです。
また、正解のないところにこれからの正解を新たに創りださなくてはなりません。デザイン思考(Design thinking)はそのための有効な手段になると期待されています。
そうやって創りあげた正解も、試してみるとうまくいかないことあるでしょう。そんな失敗を許容して、世の中の反応や変化に即応して情報システムを変えてゆかなくてはなりません。アジャイル開発やDevOpsはもはや前提となるのです。
SI事業者の方と話しをすると、物販や工数のビジネスの先行きを心配し、自分たちの事業を改革してゆかなければならいという話しを聞きます。しかし、それは簡単なことではありません。
物販はクラウドに置き換えられ、工数は自動化に吸い取られてゆきます。人間が仕事をすることを前提とした従来のやり方を、機械を前提とした仕事のやり方に変えてゆく、そんなSIビジネスのデジタル・トランスフォーメーションが急速に進みつつあるのです。
この事実は、既存の収益構造では対応できません。その一方で、ビジネスのデジタル化/DXを実現するためのITの需要は高まってゆきます。この変化を自分たちの成長のチャンスと捉えるのなら、新たな収益構造の比率を拡大し、DXに求められるスキルへの転換をすすめてゆくしかありません。
DXの推進をお客様と一緒にすすめてゆく「共創」、それを効率よく具体化する「デザイン思考」、失敗を許容し変化に即応する「アジャイル開発とDevOps」が、これからのビジネス成長の原動力となるのです。
数千人月規模のビッグ・プロジェクトが終了フェーズを迎える中、伝統的なシステム構築手法に取り組んで来たエンジニアたちに次の仕事を提供しなければなりません。彼らが竜宮城(?)で過ごしている間に世の中が大きく変わってしまいました。そんな浦島太郎たちがこれから増えてゆきますから、その受け皿を見つけてゆかなければなりません。
この間に変わったのは求められるスキルだけではありません。IT投資に関わる意志決定者も情報システム部門から経営者や事業部門へと比重を遷しつつあります。ビジネスのデジタル化すなわちIoT/DXへの取り組みの主導権は経営者や事業部門が握っているからです。ITに詳しくないそんな人たちにIoT/DXへの取り組みを提案し、彼らの変革を促してゆくこともビジネスを成長させるためには不可欠なのです。
ITの需要が衰えることはありません。しかし、収益構造、エンジニアのスキル、意志決定者は大きく変わります。そのための取り組みにどれだけの投資をしているでしょうか。放課後のボランティア活動のような改革プロジェクト、リスクを徹底して排除する稟議制度、ストック収益を評価できない売上や利益だけの業績評価制度で、この変革を乗り切ることはできません。
これからの時代に備えた投資とは、従来のビジネスのあり方を前提としたビジネスの仕組みを変革することです。組織を変え、業績評価基準を変え、スキル・セットを変えてゆく。そんな取り組みをひとつのセットとしてすすめてゆくことではないでしょうか。
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
2017年11月版・改訂/追加リリース
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・コンピューターやITのトレンドについて新しいチャートを追加しました。
・人工知能研究の新しいトピックを追加しました。
・社員研修の教材として「チームを元気にするリーダーシップとマネージメント」を追加しました。
・人工知能、IoT、インフラの解説を追加・改訂致しました。
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ITの歴史と最新トレンド
【新規】コンピューターとは何か p.3
【新規】コンピューター誕生の歴史 p.4
【新規】歴史から見たITトレンド p.5
人工知能とロボット
【新規】コレ1枚でわかる人工知能 p.10
【改訂】人工知能の3つの役割と人間の進化 p.11
【改訂】コレ1枚でわかる人工知能とロボット p.12
【改訂】これまでの機械学習とディープラーニング p.43
【新規】敵対的生成ネットワーク GANs p.72
【新規】深層強化学習 p.73
【改訂】自律走行できる自動車 p.105
ノートに記載の解説を改訂・追加しています。
IoT
【新規】M2MとIoT p.7
【新規】IoTと関連テクノロジー p.16
【新規】モノのサービス化の本質 p.39
【新規】IoT World Forumのリファレンス・モデル p.53
【新規】IoTの開発や実行環境 p.55
【改訂】LPWAネットワークとは p58
【改訂】LPWAネットワークの位置付け p.61
【改訂】LPWA主要3方式の比較 p.61
【改訂】ガソリン自動車と電気自動車(部品点数ほか) p.90
【補足】ノートに記載の解説を改訂・追加しています。
ビジネス戦略
【新規】デジタル・トランスフォーメーション p.4
【新規】デジタル・トランスフォーメーションとは p.6
【新規】何が起こっているのか p.29
【新規】IT事業者の働き方改革 p.30
クラウド・コンピューティング
【改訂】クラウドを使うことの狙い p.24
サービス&アプリケーション・基本
・変更はありません。
サービス&アプリケーション・開発と運用
【新規】情報システム部門に期待される役割 p23
インフラストラクチャー
【改訂】マイクロソフトの新戦略 p.59
【新規】仮想マシンとコンテナの稼働効率 p.95
【新規】サイバーセキュリティについての解説を追加(15ページ) p116-130
【改訂】コンバージド・システムとハイパーコンバージド・システム p.138-139
【補足】ノートに記載の解説を改訂・追加しています。
テクノロジー・トピックス
【新規】ARMについての解説を刷新 p.19-24
研修教材
【一般社員研修】チームを元気にするリーダーシップとマネージメント