人間が仕事をすることを前提に作られていたビジネスの仕組みが、機械が仕事をすることを前提にしたビジネスの仕組みに置き換わってゆく
そんなデジタル・トランスフォーメーションが確実にすすみつつあります。
人間が仕事をすれば、働く時間の制約や福利厚生の適用、スキルの育成やモチベーションの維持などといった対応が必要になります。この制約のもとで効率的で高品質なビジネス・プロセスを設計し、それを情報システムに置き換えることで、仕事の仕組みを動かしてきました。そして、人間が日々改善に努め、効率や品質の向上を図ってきました。
一方で、昨今ITの発展にはめざましいものがあります。例えば、人工知能による自動化・自律化の適用範囲が拡大し、IoTやクラウド・サービスがこの変化を加速させています。これまで「人間にしかできない」と思われていたことが機械にもできるようになり、とても「人間にはできない」と思われていたことが、機械にもできるようになりつつあります。
ならば、制約の多い人間が仕事をするのではなく、機械が仕事をすることを前提にビジネス・プロセスを作れば、劇的な効率の向上や品質の改善が期待できるはずです。これが、デジタル・トランスフォーメーションの本質です。
これまで、ITは業務の効率や品質の向上のために適用範囲を拡げてきました。しかし、かつてほどの投資対効果は得られなくなりつつあります。このような現状を打開し、一層の、しかも劇的な効率と品質の向上を実現して、圧倒的な競争力を確立しようというのがデジタル・トランスフォーメーションの狙いです。
また、人間という制約を外すことで、新たなビジネス・モデルを実現することで既得権益を破壊し、新たな競争優位を確立しようという動きが始まっています。例えば、UberやLyftなどのライドシェア・サービスはタクシーやレンタカーの業界を、Airbnbはホテル業界を、NetFlixはレンタルビデオやテレビの業界を、Appleはゲーム業界を破壊に追い込むほどに、圧倒的な競争力を手に入れました。
そんなデジタル・トランスフォーメーションの最前線に立たされている業界の1つがSI業界です。クラウドや人工知能による自動化・自律化の普及拡大は、開発や運用の業務を機械に置き換えてゆきます。例えば、SaaSを使えばシステム開発は不要になります。また、AWS LambdaやMicrosoft Azure Functions などのFaaS(Function as a Service)やsalesforce.comのForce.comやIBMのBluemixなどのPaaSを使えば、アプリケーション開発の工数は劇的に減ってしまいます。インフラやプラットフォームの導入や構築も不要となり、運用管理も自動化されるでしょう。そこに工数需要の拡大を期待することはできません。
仮に工数の需要があっても、それは自動化やオフショア開発との価格競争になります。特にオフショアは、我が国のSI事業にとって、強力な競争相手です。現在、ITエンジニアは日本もASEANもほぼ90万人程度と言われていますが、若者人口が減少し続ける日本とは異なり、ASEAN各国の若者人口は増加し続けています。また、IT産業を育成しようという国も多く、2020年頃にはASEANのITエンジニアは100万人に達すると予想されています。
当然、ASEAN各国の給与水準は上がり続けており、「安く使う」メリットはなくなりつつありますが、大学院を出て普通に英語が使えるエンジニアが数多くいるASEAN各国には、最先端のクラウド・サービスやテクノロジーを当たり前に使いこなせる人材も多く、質の面での存在感は高まってゆくでしょう。そういう人材と競合することになるわけで、これもまた工数ビジネスを難しくしてゆきます。
こんな時代の変化に向きあってゆくには、「アウトプットからアウトカムへ」と事業価値をシフトさせてゆく必要があります。
アウトプット(out-put)とは、「仕事を通じて生みだしたもの」で、成果物や工数を提供することです。例えば、システムの構築やアプリケーション開発、その運用に伴う物品や労働力の提供であり、その規模や量、成果物に対する対価が収益の源泉となります。
一方、アウトカム(out-come)とは、「アウトプットを活用して得られた成果」で、お客様の売上や利益への貢献、それを実現するための仕組み作りです。例えば、お客様と一緒になって、アジャイル開発やDevOpsのための仕組みや体制を構築し、現場のニーズを直ちに本番に反映できる仕組みを作ること。あるいは、アプリケーション・エンジニアが開発したコードをセルフサービスで本番環境にデプロイしても運用の安定を維持できるインフラ環境を構築するといったことで、お客様のビジネス価値に直接貢献することが収益の源泉となります。
また、お客様のビジネスのデジタル・トランスフォーメーションを支援することで、お客様のビジネスの革新に貢献することもまた、アウトカムへの取り組みと言えるでしょう。
これに伴い収益構造も多様化しなければなりません。つまり、物品やライセンスの販売や工数の提供への対価への依存を減らし、付加価値の高いサービスを提供することで、利益率の高い継続的な収益の確保を目指してゆく必要があります。
ただ、このような収益構造の転換は、現場がそれに積極的に取り組む環境を作らなければなりません。そのためには、業績評価の基準を「売上と利益」だけではなく、長期継続的な収益や新規顧客獲得数、利益率といった多様な評価軸で評価できるように制度設計を改めなければなりません。また、新規事業開発にも一定期間の投資をコミットし、それに見合うKPIを設定して「勉強のための新規事業開発」に終わらせない施策が必要です。「働き方改革」もそんな取り組みの中に位置付けて考えることが大切です。
誤解してはならないのは、ITの需要が減るわけではなく、そのための人材の必要性もなくなるわけではありません。お客様が生産性向上やコストの削減、競争優位の構築などのビジネス価値の創出にITを活用してゆこうという意欲は益々高まっています。しかし、そのビジネスの価値を手に入れるために、これまで手段、つまり、システムの構築や運用に多大な投資や費用がかかっていたことが、サービスとして提供され、自動化や自律化により工数を必要としなくなると言うことです。また、意志決定の重心が情報システム部門から経営者や事業部門へとシフトし、工数の対価から成果への対価へと意志決定の基準が変わります。
このような需要にIT人材は益々必要となりますが、生産年齢(15歳〜64歳)の急減により、工数の確保は難しくなります。そのため、工数の拡大が収益に直結する収益構造では成長できなくなるのです。だから新たな収益確保の手段を手に入れなくてはなりません。
例えば、お客様のビジネスの成果が生みだすためにIoTやAIを活用しようという取り組みが注目されていますが、その意志決定は情報システム部門ではなく、事業部門が担うことになります。そのときの採用基準は「投資対効果=アウトカム」であって「必要工数=アウトプット」ではありません。そこに需要の拡大があるとすれば、それに応えられるビジネスのあり方や収益構造を創ってゆかなければならないのです。
この変化は、加速することはあっても減速したり、後戻りしたりすることはありません。ならば、「いつまでいまのやり方が続けられるだろうか」といった現状を守ろうとする考え方をいち早く棚上げし、「新しい需要にどう応えればいいのか」を考え、少しでも早く小さな成果を積み上げてゆくことが大切です。
「アウトプットからアウトカムへ」の取り組みは、もはや待ったなしの状況にあります。そのためには、既存の事業を再構築するつもりで取り組まなければなりません。痛みを伴う取り組みになるとしても、全てを失うよりは、マシなのではないでしょうか。
大阪開催決定!新入社員のための最新ITトレンド・1日研修
「お客様の話しに、ついてゆけません。言葉が分からないんです。」
こんな話をする新入社員は少なくありません。もちろん経験のない彼らが仕事をうまくこなせないのは当然のことです。しかし、「言葉が分からない」というのは別の問題です。
IoT、AI、クラウドなどのキーワードは、ビジネスの現場では当たり前に飛び交っています。しかし、新入社員研修ではITの基礎やプログラミングは教えても、このような最新ITトレンドについて教えることなく現場に送り出されてしまいます。そのため、お客様が何を話しているのか分からないままに、曖昧な応対しかできず、自信を無くしてしまう、外に出るのが怖いなどの不安をいだいている新入社員も少なくないようです。
そんな彼らに、ITの最新トレンドを教え、ITがもたらす未来への期待、そこに関わることへの誇りを持てるようにと企画しました。
参加費が1万円なら、懐の寂しくても自腹で参加できるはずです。また、既に新入社員研修の予算を使い切った企業でも、何とかやりくりして頂けるのではないでしょうか。そんな想いで、この金額にしてみました。また、100ページを超えるテキストは、パワーポイントのままでロイヤリティフリーで提供させて頂きます。
*大阪での開催のご希望が多数寄せられたこともあり、大阪でも開催させて頂くこととなりました。
実施内容
- 日時:下記日程のいずれか1日間(どちらも同じ内容です)
- 【東京・第1回】8月28日(月)10:00〜17:00
- 【東京・第2回】9月04日(月)10:00〜17:00
- 【大阪】 9月07日(水)10:00〜17:00
- *昼休み1時間、休憩随時
- 東京会場:株式会社アシスト・本社1階セミナールーム/市ヶ谷
- 大阪会場:株式会社アシスト・大阪セミナールーム/グランフロントタワーA
- 定員:50名/回
- 費用:1万円(税込10,800円)
- 新入社員以外(例えば、他業界からIT業界に転職された方や人材開発・研修担当の方)で参加されたい場合は、3万8千円(税込 41,040円)でご参加いただけます。
- 内容:
- ITビジネスの歴史と最新トレンド
- クラウド・コンピューティング
- ITインフラと仮想化
- サイバーセキュリティ
- IoT
- AIとロボット
- アジャイル開発とDevOps
- これからのITとITビジネス
詳しくはこちらをご覧下さい。
最新版(7月度)をリリースしました!
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
最新版【2017年7月】をリリースいたしました。
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今月度は、AIとIoTを中心に大幅に資料を追加しています
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ビジネス戦略編
【新規】3つのIT:従来のIT/シャドーIT/バイモーダルIT p.23
サービス&アプリケーション・先進技術編/人工知能とロボット
【新規】IoTとAIの一般的理解と本当のところ p.4
【新規】人工知能の3つの役割と人間の進化 p.12
【新規】自動化から自律化への進化 p.16
【新規】スマートマシンの必要性 p.16
【新規】人工知能のロボットへの実装 p.24
【新規】専門家と人工知能 p.26
【新規】人工知能は知的望遠鏡 p.27
【新規】ITと人間の関係の変遷 p.33
【新規】これまでの学習とディープラーニング p.42
【新規】ルールベースと機械学習 p.43
サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
【新規】IoTとAIの一般的理解と本当のところ p.15
【新規】従来のやり方とIoTの違い p.18
【新規】LPWAとは p.51
クラウド・コンピューティング編
変更はありません
サービス&アプリケーション・基本編
【新規】ERPシステム/パッケージとクラウドでの利用形態 p.11
【新規】SOAの狙いと成果 p.27
開発と運用編
【更新】ウォーターフォール開発とアジャイル開発 p.17
インフラ&プラットフォーム編
【新規】認証基盤 p.117-118
【新規】認証に関わる課題 p.119
【新規】シングルサインオンとフェデレーション p.120
【新規】Apache Spark p.179
トピックス編
変更はありません
ITの歴史と最新のトレンド編
変更はありません