「セールス・エンジニアが足りません。彼らの稼働率が高く、提案に時間を割けないことが原因です。」
新規案件の開拓や売上が目標に届かない。その理由はこれだと、大手システム・ベンダーの事業部長が説明をされていました。しかし、現場の方にいろいろと話しを聞くと、そんな単純なコトではないことが分かってきました。
確かに数字上は、提案活動に関わるエンジニアの稼働率は高く、営業からの依頼に応じきれないのは確かなようです。しかし、彼らに話しを聞くと、こんな答えが返ってきました。
「営業に呼ばれてお客様に行っても、役に立たないことがよくあります。うちは、プロダクトやサービスごとに担当エンジニアが別れているのですが、まったく自分の担当外の話しの場合がよくあります。また、それ以前の話しですが、お客様の要件が曖昧で、何を説明すればいいのか、何を提案すればいいのか、そこから確認しなければならないこともしばしばです。」
これでは、エンジニアの稼働率が上がるのも当然のことです。本来、お客様との技術的に突っ込んだ議論やクローズのための提案作成に彼らの時間を割くべきところですが、営業活動の最初の段階にかり出されて時間使ってしまっているのです。そのために稼働率が上がり、本来の役割が果たせないといった事態になっているようでした。
IoTやAIの実用化に向けた取り組みがすすみつつあります。クラウドはもはや前提の時代を迎え、サービスの充実と多様化がすすみつつあります。大企業や中小企業を問わず、リース更改に合わせてクラウドへの移行を模索する企業が増えつつあります。
ITには多様な選択肢が与えられ、その中から、お客様は自分たちにとって最適な手段を選択したいと考えていますが、それは容易なことではありません。だから営業は、そんなお客様の良き相談相手となって、お客様を正しい方向に導いてゆかなければならないのです。それにもかかわらず、お客様に新たな選択肢や組合せを示すこともできず、これまで通りの御用聞きに留まっているようでは、お客様は誰に頼ればいいのでしょうか。
製品の情報を得ることや機能や性能の比較ならばオンラインで簡単にできる時代です。法人向けの価格比較サイトもやがては登場するでしょう。オンラインのチャットや音声対話で商品説明をうけることができる時代です。お客様に出向いてやらなくてはならないことは大幅に減りつつあります。お客様がオンラインで機械と対話的に相談しながら、製品の選択や見積依頼ができる日もそう遠くないでしょう。
これまでと同じやり方にこだわるのであれば、そのような営業は必要ありません。むしろ、お客様の課題や解決策の選択肢を絞り込めない営業は、営業活動全体の生産性を低下させる元凶であり、何もしないでいてくれた方が会社のためかもしれません。そんな営業はその役割を再定義する必要に迫られているのです。
これまでITは、業務効率の改善やコスト削減の手段として使われ、成果をあげてきました。その前提には、ユーザー現場のたゆまぬ改善への取り組みがあり、情報システムはその成果を反映させることで成果を提供してきました。しかし、既存のやり方の延長線上では、十分な投資対効果が得ることができないほどに、IT利用はすすんできたとも言えるでしょう。このような現状を革新し、新たなやり方で現状の閉塞感を打開してくれるのではないかと期待されているのがIoTやAIです。
既存のやり方の改善では実現できなかった劇的なコストの削減や生産性の向上、多様性への対応を実現することで、企業としての新たな競争力を手に入れることが可能になりました。また、テクノロジーの新たなブレークスルーを積極的に取り込み、これまでに無いビジネス・モデルを創りあげ、競争原理を変えてしまう動きも、多くの産業分野で見受けられます。このようなITの新たな需要に応えるためには、3つのしがらみを断ち切らなければなりません。
「お客様からの要望に応える」というしがらみを断ち切る
お客様はいまのテクノロジーで、これまでできなかったことがどのように解決できるかを知りません。そして、近い将来、どんなことができるようになるかも知りません。営業は、そんなITのトレンドを正しく理解し、お客様の良き相談相手となって、一緒になって解決策を創りあげてゆく必要があります。
具体的な実現方法はエンジニアの力を借りなくてはなりませんが、お客様のあるべき姿をお客様と共に描き、そこに至る物語=戦略を組み立てる上での主導者は営業の役割です。
営業はお客様の3年後や5年後に責任を持たなければなりません。そのためには、お客様からの要望に応えるだけの「御用聞き」から脱却し、お客様の未来について自ら語り、お客様に夢を与え、その具体的な筋道を共に模索し描いてゆく「共創」によってお客様に関わって行ゆく必要があります。
「情報システム部門一辺倒」のしがらみを断ち切る
いま経営者や事業部門の方たちは、ITの必要性を感じながらも、その活用になかなか手が出せません。それは、ITについての知識不足、あるいは、難しくて分からないからと遠ざけるアレルギー症状が背景にありそうです。それ故、ITのことは専門家である情報システム部門に任せておけばいいと、自らの思考を停止し、彼らに押しつけてしまっているところがあります。
しかし、情報システム部門は新しいことをやっても評価されない組織であり、失敗のみが減点評価される企業文化の中で生きてきたことから、新たなIT活用については慎重です。ですから、検討に検討を重ね、リスクが高いのでやめた方がいいという結論を導く傾向にあります。安定稼働とコスト削減が徹底してすり込まれてきた彼らにとっては、ごく自然な結論と言えるでしょう。
このような状況をそのままに、ITによるビジネスの革新は起こりません。営業は、この状況を打開することに取り組まなければならないのです。そのためには、ITを知らない経営者や事業部門に、いまのITで何ができるのか、それがお客様のビジネスにどのような価値をもたらすのかをわかりやすく伝えなければなりません。そして、ITによるビジネス革新の主導権を彼らにとらせる必要があります。そして、情報システム部門を支援し、その実現のために最大限の努力をするのです。
そんなお客様との関係を築き、プロジェクト全体のイニシアティブを握ることができなくてはなりません。
「調整役や仲介者」であるというしがらみを断ち切る
クリエイターであり、シナリオライターとして、役割の重心をシフトしてゆく必要があります。お客様のあるべき姿をともに創り出し、そこに行き着くシナリオを描かなくてはなりません。「調整役や仲介者」であることは、そんな役割を果たすための手段であって、本来の役割を果たすために必要条件にすぎません。
お客様の経営者や業務部門の人たちが、IT活用に魅力を感じ、自分たちにもできるとの確信を持たせる伝道師との役割を果たすことも必要になるでしょう。
自分の思想や戦略を持たず、お客様の経営や業務への関心も持てないとすれば、この役割を果たすことはできません。むしろ積極的にお客様と対立し、お客様の根っ子にある課題を引きずり出す位の覚悟必要です。
「エンジニアの時間がとれず、相談できないから提案できない」や「お客様のことが分からないから、お客様の課題やニーズが整理できない」ということでは、AI営業に取って代わられるのは時間の問題です。
お客様に新たな気付きを与え、お客様といっしょになって新たな取り組みを共創する。これからの営業にはそんな役割が期待されているのです。
ITの需要はこれからますます高まってゆきます。その勢いは加速度的に速まってゆくでしょう。そんな変化に追いつき、ビジネスを手にするためには、最前線の営業がその能力を高めてゆかなければなりません。
このような仕事はコンサルタントの役割だと切り捨ててしまうことはできるかもしれませんが、ならば一体どんな仕事が営業に残るというのでしょうか。残念ながら、営業という仕事はそこまで追い込まれているのです。一方で、営業の新たな役割を実践できれば、ビジネスに新たな可能性を開くことができるでしょうし、営業はお客様の良き相談相手として、高い信頼を得ることができるでしょう。
新たな技術への対応や新規事業の開発に投資することの重要性は、いまさら申し上げることもありません。しかし、それをお客様に展開できる営業を育てることに同様の価値を見出しているでしょうか。両者は車の両輪であって、片方が欠ければいつまで経っても同じところを回り続けるだけのことです。もし、冒頭のようなことが既に起こっているとすれば、もはや事態は深刻な状況かもしれません。
新入社員のための最新ITトレンド・1日研修
「お客様の話しに、ついてゆけません。言葉が分からないんです。」
こんな話をする新入社員は少なくありません。もちろん経験のない彼らが仕事をうまくこなせないのは当然のことです。しかし、「言葉が分からない」というのは別の問題です。
IoT、AI、クラウドなどのキーワードは、ビジネスの現場では当たり前に飛び交っています。しかし、新入社員研修ではITの基礎やプログラミングは教えても、このような最新ITトレンドについて教えることなく現場に送り出されてしまいます。そのため、お客様が何を話しているのか分からないままに、曖昧な応対しかできず、自信を無くしてしまう、外に出るのが怖いなどの不安をいだいている新入社員も少なくないようです。
そんな彼らに、ITの最新トレンドを教え、ITがもたらす未来への期待、そこに関わることへの誇りを持てるようにと企画しました。
参加費が1万円なら、懐の寂しくても自腹で参加できるはずです。また、既に新入社員研修の予算を使い切った企業でも、何とかやりくりして頂けるのではないでしょうか。そんな想いで、この金額にしてみました。また、100ページを超えるテキストは、パワーポイントのままでロイヤリティフリーで提供させて頂きます。
実施内容
- 日時:下記日程のいずれか1日間(どちらも同じ内容です)
- 【第1回】8月28日(月)10:00〜17:00
- 【第2回】9月04日(月)10:00〜17:00
- *昼休み1時間、休憩随時
- 会場:株式会社アシスト・本社1階セミナールーム/市ヶ谷
- 定員:50名/回
- 費用:1万円(税込10,800円)
- 新入社員以外(例えば、他業界からIT業界に転職された方や人材開発・研修担当の方)で参加されたい場合は、3万8千円(税込 41,040円)でご参加いただけます。
- 内容:
- ITビジネスの歴史と最新トレンド
- クラウド・コンピューティング
- ITインフラと仮想化
- サイバーセキュリティ
- IoT
- AIとロボット
- アジャイル開発とDevOps
- これからのITとITビジネス
詳しくはこちらをご覧下さい。
ITソリューション塾・福岡・第2期 募集中!
知っているつもりの知識から、説明できる、実践に活かせる知識へ変えてゆく。そんな研修がスタートします。
東京で9年目を迎えるITソリューション塾には、既に1500名を超える卒業生がいらっしゃいます。また、昨年より大阪と福岡でも始まりました。特に福岡では、他の会場にはない「自分のビジネスを成功させるためのワークショップ」もあわせておこないます。
ITについての体系的な知識を身につけたい、提案力を高めたい、コンサルや交渉の力を高めたい。そんな皆さんのための実践的プログラムです。ふるってご参加下さい。
日程 | 2017年7月11日〜10月3日 全7回 13:30〜17:30 |
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回数 | 全7回 |
定員 | 40名 |
会場 | 福岡県Ruby・コンテンツ産業振興センター |
料金 | ¥65,000 (税込み¥70,200-) 全期間の参加費と資料・教材を含む |
詳細 | ITソリューション塾[福岡] 第2期 講義内容/スケジュール |
申し込み | 上記リンクのパンフレットをご参照ください。 |
【図解】コレ一枚でわかる最新ITトレンド 増強改訂版
- 何ができるようになるのか?
- どのような価値を生みだすのか?
- なぜ注目されているのか?
「知っている」から「説明できる」へ
実践で「使える」知識を手に入れる
- IoT とインダストリー4.0
- AR とVR
- 人工知能と機械学習とディープラーニング
- サーバ仮想化とコンテナ
- ネットワーク仮想化とSD-WAN
- アジャイル開発とDevOps
- マイクロサービスとサーバレス
キーワードは耳にするけど、
それが何なのか、何ができるようになるのか、
なぜそんなに注目されているのか理解できてなかったりしませんか?
最新版(6月度)をリリースしました!
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
最新版【2017年6月】をリリースいたしました。
今月は、特にブロックチェーンや5Gについてのプレゼンテーションを充実させています。
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ビジネス戦略編
【新規】根拠なき「工数見積」と顧客との信頼関係の崩壊 p.32
【新規】工数ビジネスの限界 p.34
サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
【新規】IoTとAIの一般的理解と本当のところ p.15
サービス&アプリケーション・先進技術編/人工知能とロボット
【新規】自動化と自律化 p.14
【新規】学習と推論 p.27
【新規】うんコレ1枚でわかる画像認識 p.34
【新規】自動運転のためのプラットフォーム p.81
サービス&アプリケーション・基本編
変更はありません
開発と運用編
【新規】「仕様書通り作る」から「ビジネスの成果への貢献」へ p.11
クラウド・コンピューティング編
【変更】パブリッククラウド p.38
【新規】クラウドの見積り方(1)と(2) p.79-80
インフラ&プラットフォーム編
【変更】ウェアラブル=身体に密着するデバイス p.21
【新規】ウェアラブル・デバイスの進化 p.22
【変更】ウェアラブル・デバイスの種類と使われ方 p.23
【新規】これからのクライアントを占うキーワード p.25
【新規】ユビキタスコンピューティング = 10年前のIoT p.26
【新規】スマートフォーム p.27
【変更】ユビキタスからアンビエントへ p.28
【新規】ビーコン 事例 p.29
【新規】VR 事例p.30
【新規】AR 事例p.31
【新規】MR 事例p.32
【新規】セキュリティ対策対象の変化 p.112
【新規】コレ1枚でわかる第5世代通信 p.209-211
テクノロジー・トピックス編
【新規】ARM:2016年の売上高は16億8900万ドル p.22
【新規】ARM:ライセンスパートナー p.23
【変更】ARM:拡がる適用分野 p.26
【新規】ARM:CPU設計から製造まで p.27
【新規】ブロックチェーンとは何か p.33
【新規】ブロックチェーンの3つの特徴 p.32-36
【新規】ブロックチェーンで使われる暗号技術 p.37-38
ITの歴史と最新のトレンド編
【新規】ソフトウェア化するモノ p.11
新刊書籍のご紹介
未来を味方にする技術
これからのビジネスを創るITの基礎の基礎
- ITの専門家ではない経営者や事業部門の皆さんに、ITの役割や価値、ITとの付き合い方を伝えたい!
- ITで変わる未来や新しい常識を、具体的な事例を通じて知って欲しい!
- お客様とベンダーが同じ方向を向いて、新たな価値を共創して欲しい!
斎藤昌義 著
四六判/264ページ
定価(本体1,580円+税)
ISBN 978-4-7741-8647-4Amazonで購入