ここに紹介する事例は、アンケート登録/集計システムといったありがちなWebシステムをAWSで実現した場合に、実装方法の違いが、どれほどの使用料の違いになるかを示したものです。
システムの概要
(ここに紹介させて頂くのは、NECソリューションイノベータ・北海道支社で、SIへのパブリック・クラウドやアジャイル開発の適用に取り組まれている能登谷元博さんのチームが実証されたものです。)
オンプレミスのシステム構成をそのままにAWSに移行した場合
AWS Lambda(サーバーレス)などのAWSならではのサービスを最大限活用した場合
CIer(クラウド・インテグレーター)を目指そうというSIerは少なくありません。しかし、オンプレミスのシステム環境をそのままにIaaSへ移行するだけで、CIerにはなれないことを、この例は如実に示しています。
もちろん全てのアプリケーションで、これほどまでのドラスティックな違いが出るわけではありませんが、パブリック・クラウドが提供する機能を最大限活かせば、このようなケースも少なくはないはずです。
CIerとは、このような選択肢も含め、パブリック・クラウドの提供するサービスや制約を熟知し、その価値を最大限に引き出し、お客様のビジネスの成果に貢献できる事業者のことです。
クラウドへの移行を検討する企業が増えつつある中、この状況に対応しなければと焦るSI事業者の中には、インフラの構築をオンプレミスからクラウドに移行するだけで、開発や運用は従来のやり方をそのままに事業を続けてゆけると考えているところも少なくありません。しかし、この事例からも分かるように、クラウドはインフラの構築だけではなく、開発や運用の常識をも大きく変えてしまいます。その前提に立って、ビジネスを改めて設計し直さなければならないのです。
IoTについても同様のことが言えます。IoTが流行だからと、IoTに関わる特有の技術的ノウハウや実装方法、プラットフォーム・サービスの使い方を学びさえすれば、IoTアプリケーションの開発や運用の仕事が受託できると考えているSI事業者もいるようです。
しかし、IoTとは、データベースやモバイルといった「テクノロジー」ではなく、センサーやAIといったテクノロジーを前提とした「ビジネス・フレームワーク」であるという本質を理解していないSI事業者も少なくはないようです。その取り組みは、単にアプリケーションを作ることではありません。新しいビジネス・モデルを作ることなのです。その前提に立てば、求められるスキルは従来のSIとはまったく違ったものとなります。
例えば、「土木工事の自動化サービス」を考えれば、次のような組合せになるでしょう。
- 解決したいビジネス課題
- 土木工事需要の拡大
- 熟練作業員の高齢化
- 困難を極める若者人材確保
- データ収集
- ドローンによる工事現場の空中撮影(カメラ)
- 建設機械の高精度位置情報(GPS)
- デジタル化された施工情報(3次元CAD等)
- データ解析
- 平面画像から高精度3次元立体図面を合成
- 土量分析・作業分析
- 工程・工期シミュレーション
- データ活用
- 建設機械の自動制御・作業支援
- 工程変更支援
- ドロー測量により進捗把握
「ビル設備管理サービス」になれば、この組合せは変わり、自律走行車になれば、それもまた違うものになります。
どのようなビジネス課題を解決したいかにより、必要なデータは違います。そうなると、センサーもデータの収集方法も変わります。また、何を知りたいかにより解析のためのアルゴリズも変わります。当然、アプリケーション・サービスも様々です。
直面するビジネス課題に向き合い、テクノロジーを活かして、これまで解決できなかった課題を解決する、あるいは、これまでに無かったビジネス・モデルを創造する。そのためのビジネス・フレームワークがIoTなのです。
そうなれば、お客様は情報システム部門ではありません。事業部門や経営者が意志決定の直接の当事者です。そんな彼らに、IoTのもたらす新たな事業価値を伝えられなくては、ビジネスのきっかけは作れません。また、これまでには無いやり方をテクノロジーによって実現するわけですから、事業に精通する現場の当事者とテクノロジーに精通するSI事業者が一緒になって「創る」ことが求められます。既存業務を改善するのではないため、何をどうすればいいのかをユーザーに教えてもらうことはできません。「相手の要求をシステムにする」という従来のやり方は通用しないのです。
アジャイル開発もまたその本質を正しく理解しないままに取り組もうとしているSI事業者は少なくないようです。例えば、ビジネス環境の変化のスピードが速くなり、ユーザーが十分に仕様を吟味できないままに、短期間かつ低コストでシステムを開発することを求めてきます。これに対応する手法として、アジャイル開発に取り組もうというのです。
確かにアジャイル開発によって、結果として、短期間かつ低コストでの開発が実現する場合もあります。しかし、その前提は、「要求仕様通りに全てを作るのではなく、ビジネスの成果に直結する必要最低限のシステムを作る」ことや「成果物は仕様書どおりであることではなく、ユーザーが満足し納得することである」などのこれまでの常識では受け入れがたいことを受け入れなくてはなりません。その見返りとして、仕様の変更に柔軟に対応でき、バグフリーで、納期やコストを完全に守ってシステムを稼働させることができるのです。
その詳細については、ここでは触れませんが、アジャイル開発は「手法」ではなく「思想」であり、エンジニアの働き方のパラダイムシフト(常識の転換)であるということです。この前提を理解し、受け入れなければ、アジャイル開発で成果をあげることはできません。
アジャイル開発を実践し成果をあげているあるSI事業者は、「これまでのルールを変えなければ無理」と、次のような提言をしてくれました。
- MS Officeを捨ててください
- 瞬時にドキュメントを共有できるGoogle AppsもしくはOffice 365 を使ってください
- 社内のファイルサーバを捨ててください
- Google Drive/BOX/Dropboxを使ってください
- メールを捨ててください
- Slackを使ってください
- Excel/MS Projectのプロジェクト管理を捨ててください
- Redmine/Atllasian Confluenceを使ってください
- 社内のソースコード管理サーバを捨てて下さい
- GitHub/Bitbucketを使ってください
- 社内検証サーバを捨ててください
- パブリック・クラウドを使ってください
- 私用のスマートフォンで”どこでも”仕事をさせてください
- これはオフィスで、といった決まり事はなくしてください
SI事業者が収益の柱とする工数ビジネスの先行きは、厳しさを増しています。この状況から抜け出すために、新規事業を模索する企業も少なくありません。しかし、十分な成果を見いだせないままに、無為な時間を費やしている企業もまた少なくないようです。
なぜ、そんな事態になるのかは、ここに紹介した事例からも明らかなように、テクノロジーの進化やそれに伴うITへの期待が大きく変わっているにもかかわらず、従来のままに価値観を変えようとせず、その延長線上で何とかできないかを模索し続けているからです。この前提を変えない限り、無為な時間はこれからも続きます。
テクノロジーが指数関数的に進化し続けているいま、ITビジネスの潮流は、それを取り入れて大きく変わりつつあります。この変化への対応を現場の担当者や新規事業開発チームに委ね、自らはこれまでの業績評価基準を守ることにこだわりつつける経営者がいるとすれば、それは無作為以外のなにものでもありません。
そろそろ、そんな現実を見据えるべきかもしれません。時間はあまり残されていないのですから。
新入社員のための最新ITトレンド・1日研修
「お客様の話しに、ついてゆけません。言葉が分からないんです。」
こんな話をする新入社員は少なくありません。もちろん経験のない彼らが仕事をうまくこなせないのは当然のことです。しかし、「言葉が分からない」というのは別の問題です。
IoT、AI、クラウドなどのキーワードは、ビジネスの現場では当たり前に飛び交っています。しかし、新入社員研修ではITの基礎やプログラミングは教えても、このような最新ITトレンドについて教えることなく現場に送り出されてしまいます。そのため、お客様が何を話しているのか分からないままに、曖昧な応対しかできず、自信を無くしてしまう、外に出るのが怖いなどの不安をいだいている新入社員も少なくないようです。
そんな彼らに、ITの最新トレンドを教え、ITがもたらす未来への期待、そこに関わることへの誇りを持てるようにと企画しました。
参加費が1万円なら、懐の寂しくても自腹で参加できるはずです。また、既に新入社員研修の予算を使い切った企業でも、何とかやりくりして頂けるのではないでしょうか。そんな想いで、この金額にしてみました。また、100ページを超えるテキストは、パワーポイントのままでロイヤリティフリーで提供させて頂きます。
実施内容
- 日時:下記日程のいずれか1日間(どちらも同じ内容です)
- 【第1回】8月28日(月)10:00〜17:00
- 【第2回】9月04日(月)10:00〜17:00
- *昼休み1時間、休憩随時
- 会場:株式会社アシスト・本社1階セミナールーム/市ヶ谷
- 定員:50名/回
- 費用:1万円(税込10,800円)
- 新入社員以外(例えば、他業界からIT業界に転職された方や人材開発・研修担当の方)で参加されたい場合は、3万8千円(税込 41,040円)でご参加いただけます。
- 内容:
- ITビジネスの歴史と最新トレンド
- クラウド・コンピューティング
- ITインフラと仮想化
- サイバーセキュリティ
- IoT
- AIとロボット
- アジャイル開発とDevOps
- これからのITとITビジネス
詳しくはこちらをご覧下さい。
ITソリューション塾・福岡・第2期 募集中!
知っているつもりの知識から、説明できる、実践に活かせる知識へ変えてゆく。そんな研修がスタートします。
東京で9年目を迎えるITソリューション塾には、既に1500名を超える卒業生がいらっしゃいます。また、昨年より大阪と福岡でも始まりました。特に福岡では、他の会場にはない「自分のビジネスを成功させるためのワークショップ」もあわせておこないます。
ITについての体系的な知識を身につけたい、提案力を高めたい、コンサルや交渉の力を高めたい。そんな皆さんのための実践的プログラムです。ふるってご参加下さい。
日程 | 2017年7月11日〜10月3日 全7回 13:30〜17:30 |
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回数 | 全7回 |
定員 | 40名 |
会場 | 福岡県Ruby・コンテンツ産業振興センター |
料金 | ¥65,000 (税込み¥70,200-) 全期間の参加費と資料・教材を含む |
詳細 | ITソリューション塾[福岡] 第2期 講義内容/スケジュール |
申し込み | 上記リンクのパンフレットをご参照ください。 |
【図解】コレ一枚でわかる最新ITトレンド 増強改訂版
- 何ができるようになるのか?
- どのような価値を生みだすのか?
- なぜ注目されているのか?
「知っている」から「説明できる」へ
実践で「使える」知識を手に入れる
- IoT とインダストリー4.0
- AR とVR
- 人工知能と機械学習とディープラーニング
- サーバ仮想化とコンテナ
- ネットワーク仮想化とSD-WAN
- アジャイル開発とDevOps
- マイクロサービスとサーバレス
キーワードは耳にするけど、
それが何なのか、何ができるようになるのか、
なぜそんなに注目されているのか理解できてなかったりしませんか?
最新版(6月度)をリリースしました!
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
最新版【2017年6月】をリリースいたしました。
今月は、特にブロックチェーンや5Gについてのプレゼンテーションを充実させています。
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ビジネス戦略編
【新規】根拠なき「工数見積」と顧客との信頼関係の崩壊 p.32
【新規】工数ビジネスの限界 p.34
サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
【新規】IoTとAIの一般的理解と本当のところ p.15
サービス&アプリケーション・先進技術編/人工知能とロボット
【新規】自動化と自律化 p.14
【新規】学習と推論 p.27
【新規】うんコレ1枚でわかる画像認識 p.34
【新規】自動運転のためのプラットフォーム p.81
サービス&アプリケーション・基本編
変更はありません
開発と運用編
【新規】「仕様書通り作る」から「ビジネスの成果への貢献」へ p.11
クラウド・コンピューティング編
【変更】パブリッククラウド p.38
【新規】クラウドの見積り方(1)と(2) p.79-80
インフラ&プラットフォーム編
【変更】ウェアラブル=身体に密着するデバイス p.21
【新規】ウェアラブル・デバイスの進化 p.22
【変更】ウェアラブル・デバイスの種類と使われ方 p.23
【新規】これからのクライアントを占うキーワード p.25
【新規】ユビキタスコンピューティング = 10年前のIoT p.26
【新規】スマートフォーム p.27
【変更】ユビキタスからアンビエントへ p.28
【新規】ビーコン 事例 p.29
【新規】VR 事例p.30
【新規】AR 事例p.31
【新規】MR 事例p.32
【新規】セキュリティ対策対象の変化 p.112
【新規】コレ1枚でわかる第5世代通信 p.209-211
テクノロジー・トピックス編
【新規】ARM:2016年の売上高は16億8900万ドル p.22
【新規】ARM:ライセンスパートナー p.23
【変更】ARM:拡がる適用分野 p.26
【新規】ARM:CPU設計から製造まで p.27
【新規】ブロックチェーンとは何か p.33
【新規】ブロックチェーンの3つの特徴 p.32-36
【新規】ブロックチェーンで使われる暗号技術 p.37-38
ITの歴史と最新のトレンド編
【新規】ソフトウェア化するモノ p.11
新刊書籍のご紹介
未来を味方にする技術
これからのビジネスを創るITの基礎の基礎
- ITの専門家ではない経営者や事業部門の皆さんに、ITの役割や価値、ITとの付き合い方を伝えたい!
- ITで変わる未来や新しい常識を、具体的な事例を通じて知って欲しい!
- お客様とベンダーが同じ方向を向いて、新たな価値を共創して欲しい!
斎藤昌義 著
四六判/264ページ
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