- マイロサービスやサーバーレス、コンテナはシステムの開発や運用の常識をどのように変えようとしているのでしょうか?
- IoTやサイバーフィジカル・システムは、お客様のビジネスのありかたを、とのように変えようとしているのでしょうか?
- AIはお客様のビジネス価値や雇用のあり方をどのように変えようとしているのでしょうか、そこにどのようなビジネス・チャンスがあるのでしょうか?
テクノロジーの進化は、テクノロジーのビジネスにおける価値や役割を変えてしまいます。ITビジネスに関わる以上、この前提に立ちこれからのビジネスを創ってゆかなければなりません。しかし、必ずしもこの通りにはなっていないのが現実です。
心理学の用語に「確証のバイアス」があります。仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のことをいうことばです。わかりやすく言えば、自分に都合のいいことを取り入れ、思い込みを強化する心の働きです。
「まだ、何とかなる」を心の支えにビジネスの転換に消極的な人たちは、まさに確証のバイアスの典型です。「新規事業に積極的に取り組んでいます。でも、成果を出すのは簡単なことではないですね」と3年前と同じ話をされている人たちもまた同様です。茹でがエルのごとく、変化の流れにただ身を任せているに過ぎないことに気がつかないのでしょう。
では、ITビジネスは、どこに向かおうとしているのでしょうか。
この動きを促す3つの環境変化があります。ひとつは、ITの役割の変化です。これまでITは業務の「生産性向上やコストの削減」に寄与してきました。しかし、そのためのIT投資は一巡し、お客様は新規開発のための投資を控え、SIビジネスの主体は保守や運用へと移っています。そこに新たな付加価値や差別化の要素は乏しく、「現行の業務内容や品質はそのままにコストを下げて欲しい」というお客様の要求に応えなくてはなりません。
一方で、IoTやAIが、どのような目的で使われようとしているかを考えてみれば分かることですが、既存のビジネスに新たな差別化の要素を加えることに重心が置かれています。また、業務の生産性向上やコスト削減についても、人間にしかできなかったことを置き換えることで、これまでとは桁違いの生産性やコストを実現することで、企業体質そのものを本質的に変え、競争力の基盤を築くためにIoTやAIを活かしてゆこうとしています。
ふたつ目は、IT利用環境の変化です。クラウドを使うか使わないかのステージは終わり、どのようにクラウドを使ってゆくかを多くの企業が模索しはじめています。
「全てがクラウドへ移るわけではない」という確証バイアスに引きずられ、クラウドの劇的な進化や開発・運用の新しい常識を遠ざける人たちがSI事業者には少なからず見受けられます。いまのSIのやり方がクラウドでは通用しないことは、以前紹介したブログで詳しく解説しています。
>> ルールを変えて下さい。それができなければクラウドSIerにはなれません!
クラウドの常識を前提に、SIの古い常識を変えなければ、クラウドに関わるビジネスも十分な成果をあげることはできません。冒頭で紹介した、マイロサービスやサーバーレス、コンテナといったキーワードは、クラウドを前提としたこれからの開発や運用のあり方に大きな変化を強いることになります。
最後は、ITに期待されるビジネス価値の変化です。従来ITは、「生産性向上やコストの削減」に重心が置かれていました。しかし、いまやITは「ビジネスの差別化や競争力の強化」に重心が置かれ、高い利益率を期待できるITビジネスはこちらに移ってしまいました。そしてIT予算の意志決定権限は、情報システム部門から事業部門へとシフトしています。この変化については、下記のブログで詳しく解説しています。
>> IoTやAIでの新規事業開発は、これまでのSIと何が違うのか
これは、ビジネスとITの一体化がすすみつつあることを意味します。当然、SI事業者やITベンダーへの期待も変わろうとしています。
「ビジネスとITの一体化」がすすめば、ITはビジネスのスピードに同期化し、ビジネス環境の変化に即応できなくてはなりません。ビジネス環境が急激に変化する時代にあって、このスピードは加速しています。アジャイル開発やDevOpsは、そんな文脈から読み解く必要があります。
ビジネスに貢献するための手段を提供するビジネスから、ビジネスに直接貢献するビジネスへ
ITビジネスには、いまそんな役割が期待されているのです。
このような3つの環境変化により、従来までの「情報システムの構築と運用」を主体とした“System Integrator(SI 1.0)”は、「稼働率は維持できても、利益を維持できない」ビジネスへと変わってしまいました。お客様は、ビジネス価値を手に入れる手段(システムの構築や運用)の提供から、ビジネス価値を迅速にあるいは直接手に入れられるサービスへと需要を変化させています。
この需要の変化に対応し、お客様の期待に応えるためには「ITサービスの提供」、すなわち“Service Integrator(SI 2.0)” への転換を進めなくてはなりません。これは、工数という労働力の提供からサービスの提供へと商材を転換することであり、同時にフローからストックへと収益モデルを転換する取り組みでもあります。そのためには、短期的な収益の減少を許容すると共に、事業部門や営業の業績評価基準を変えなければなりません。
しかし、それ以上に大きな転換を迫られるとすれば、お客様との関係の転換です。従来、ITは「現場の要求は中長期的に変わらない」ことを前提に要求仕様を固めますから、ビジネスの現場と開発を一旦切り離して作業を進めることも可能でした。システム開発は既存の業務を前提に新たな機能の実装や改善を行います。そのため、何をして欲しいかをユーザーが決定しそれを要求し、IT事業者はこれに応えるやり方でビジネスを実現してきました。
しかし、不確実性の高まるビジネス環境において、要求仕様の変化は激しく、事前に要件を固めることができないものもあります。また、ITを武器に新たな競争優位を築くための新しいビジネス・モデルの創出とも一体であって、何をして欲しいかがユーザーにも分かりません。そのため、IT事業者は専門家の立場でユーザーと一緒になって「ビジネスを成功させるためには何をするか」を探索しなければなりません。
「仕様書通りのシステムを、QCDを守って完成させる」ことから、「お客様と一緒になって、ITを活かした新たなビジネスを創出する」へ
お客様とIT事業者の関係は、そんな新たなステージへとシフトしつつあるのです。いま各社が「共創」と呼んでいるのは、そんな取り組みのことではないでしょうか。このことについては、以下の記事に詳しく解説しています。
>>「共創」の3つのタイプ 〜 この言葉をお題目にしないために 〜
お客様の新たな価値を創出するソリューションを提供し、お客様のビジネスに貢献する
そんな役割を担う“Solution Innovator(SI 3.0)” のステージへ向かう必要がありそうです。
“System Integrator(SI 1.0)”から“Service Integrator(SI 2.0)”へ、そして“Solution Innovator(SI 3.0)”へのシフトを進めて行かなければなりません。
いまどのステージに自分たちはいるのでしょうか。もはや SI 2.0は前提です。新たな競争優位を築くのであれば、SI 3.0へのシフトを推し進めなくてはならず、ITの古い常識をそのままに、これからのビジネスを創ることができないのです。
【受付開始】ITソリューション塾・東京/大阪/福岡
「IoTやAIで何かできないのか?」
「アジャイル開発やDevOpsでどんなビジネスができるのか?」
「うちの新規事業は、なぜなかなか成果を上げられないのか?」
あなたは、この問いかけに応えられるでしょうか。
「生産性向上やコスト削減」から、「差別化の武器としてビジネスの成果に貢献」することへとITは役割の重心を移しつつあります。そうなれば、相手にするお客様は変わり、お客様との関係が変わり、提案の方法も変わります。そんな時代の変化に向き合うためのお手伝いをしたいと思っています。
東京での開催は5月16日(火)からに決まりました。また、大阪では5月22日(月)からとなります。さらに福岡は7月11日(火)からを予定しています。
詳細日程や正式なお申し込みにつきましては、こちらをご覧下さい。
ITソリューション塾では、IoTやAI、クラウドといったテクノロジーの最前線を整理してお伝えすることはもちろんのこと、ビジネスの実践につなげるための方法についても、これまでにも増して充実させてゆきます。
また、アジャイル開発やDevOps、それを支えるテクノロジーは、もはや避けて通れない現実です。その基本をしっかりとお伝えするよていです。また、IoTやモバイルの時代となり、サイバー・セキュリティはこれまでのやり方では対応できません。改めてセキュリティの原理原則に立ち返り、どのような考え方や取り組みが必要なのか、やはりこの分野の第一人者にご講義頂く予定です。
2009年から今年で8年目となる「ITソリューション塾」ですが、
「自社製品のことは説明できても世の中の常識は分からない」
当時、SI事業者やITベンダーの人材育成や事業開発のコンサルティングに関わる中、このような人たちが少なくないことに憂いを感じていました。また、自分たちの製品やサービスの機能や性能を説明できても、お客様の経営や事業のどのような課題を解決してくれるのかを説明できないのままに、成果をあげられない営業の方たちも数多くみてきました。
このようなことでは、SI事業者やITベンダーはいつまで経っても「業者」に留まり、お客様のよき相談相手にはなれません。この状況を少しでも変えてゆきたいと始めたのがきっかけで、既に1500名を超える皆さんが卒業されています。
ITのキーワードを辞書のように知っているだけでは使いもものにはなりません。お客様のビジネスや自社の戦略に結びつけてゆくためには、テクノロジーのトレンドを大きな物語や地図として捉えることです。そういう物語や地図の中に、自分たちのビジネスを位置付けてみることで、自分たちの価値や弱点が見えてきます。そして、お客様に説得力ある言葉を語れるようになるのだと思います。
ITソリューション塾は、その地図や物語をお伝えすることが目的です。
ご参加をご検討頂ければと願っております。
最新版(4月度)をリリースしました!
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
新入社員のための「最新トレンドの教科書」も掲載しています。
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*クラウドについてのプレゼンテーションをインフラ編から独立させました。
*使いやすさを考慮してページ構成を変更しました。
*2017年度新入社員研修のための最新ITトレンドを更新しました。
*新しい講演資料を追加しました。
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クラウド・コンピューティング (111ページ)
*「インフラとプラットフォーム編」より分離独立
【新規】クラウドによるコスト改善例 p101-108
開発と運用(68ページ)
【新規】管理運用の範囲 p.37
【新規】サーバーレスの仕組み p.40
インフラとプラットフォーム(211ページ)
*クラウドに関する記述を分離独立
【新規】多様化するデータベース p.127
【新規】クラウドデータベース p.156-158
IoT(101ページ)
【新規】IoTはテクノロジーではなくビジネス・フレームワーク p.16
【新規】LPWA主要3方式の比較 p.52
人工知能(103ページ)
【新規】自動化と自律化が目指す方向 p.14
【新規】操作の無意識化と利用者の拡大 p.21
【新規】自動化・自律化によってもたらされる進歩・進化 p.22
テクノロジー・トピックス (51ページ)
【新規】RPA(Robotics Process Automation) p.17
サービス&アプリケーション・基本編 (50ページ)
*変更はありません
ビジネス戦略(110ページ)
*変更はありません
ITの歴史と最新のトレンド(14ページ)
*変更はありません
【新入社員研修】最新のITトレンド
*2017年度版に改訂しました
【講演資料】アウトプットし続ける技術〜毎日書くためのマインドセットとスキルセット
女性のための勉強会での講演資料
実施日: 2017年3月14日
実施時間: 60分
対象者:ITに関わる仕事をしている人たち
【講演資料】ITを知らない人にITを伝える技術
拙著「未来を味方にする技術」出版記念イベント
実施日: 2017年3月27日
実施時間: 30分
対象者:ITに関わる仕事をしている人たち
詳しくはこちらから
新刊書籍のご紹介
未来を味方にする技術
これからのビジネスを創るITの基礎の基礎
- ITの専門家ではない経営者や事業部門の皆さんに、ITの役割や価値、ITとの付き合い方を伝えたい!
- ITで変わる未来や新しい常識を、具体的な事例を通じて知って欲しい!
- お客様とベンダーが同じ方向を向いて、新たな価値を共創して欲しい!
斎藤昌義 著
四六判/264ページ
定価(本体1,580円+税)
ISBN 978-4-7741-8647-4Amazonで購入
人工知能、IoT、FinTech(フィンテック)、シェアリングエコノミ― 、bot(ボット)、農業IT、マーケティングオートメーション・・・ そんな先端事例から”あたらしい常識” の作り方が見えてくる。