「アジャイル開発に取り組んでいるのですが、QCDの達成が難しく、仕事になりませんよ。」
「超高速開発ツールを採用し、生産性の高い受託開発で新規顧客を開拓しようとしているのですが、なかなか成果をあげられません。」
アジャイル開発であれ、超高速開発ツールであれ、それが作られた目的や背景を正しく理解しないままに使っても成果は上がりません。
GEが2012年に導入したFastWorksは、若き起業家で「リーン・スタートアップ」著者エリック・リース氏の監修を得て独自に体系化したもの。
米GEがFirstWorksという取り組みをしています。製品やソリューション開発においては、顧客ニーズに照らして仮説をたてたうえで開発に取り組み、その過程で顧客のフィードバックを得ることで必要に応じて方向転換を図るというやり方です。シリコンバレー流のリーン・スタートアップを重厚長大のGEに取り込み、企業文化を変えてゆこうというのです。
その目的は、「モノを売る」企業から「顧客企業にとっての成果を売る」企業へと変ぼうすることです。
GEと言えば、時間をかけても品質やコストを徹底して追求するシックス・シグマが有名ですが、これでは時代の変化に対応できないというのです。世界は不確実性の時代に突入し、ビジネス環境の変化はこれまでになく加速しています。もはや過去のやり方では生き残れません。そこで、圧倒的な“スピード感”や“適応力”を武器に競争優位を再構築しようというのが、FirstWorksの背景にあります。
アジャイル開発や超高速開発ツールも、こんな時代の変化を背景に登場したのです。
ビジネスの成果に貢献するために、情報システムは現場のニーズに直ちに応えなくてはなりません。ビジネスとITの一体がすすみつつあるいま、この必要性は高まっています。そのためには、小さな失敗を許容してでも、変更変化に即応することが優先されます。失敗が問題となれば、直ちに手直しして対応すればいいのです。「仕様書通り厳密に作り失敗は許されない」ではなく、「現場で使えて成果に貢献できればいい。失敗が問題になるようであれば、必要に応じて直せばいい」という発想に変えなければなりません。
そのためには、常に現場に寄り添い、どうすれば成果に貢献できるかを一緒に考え、試行錯誤を繰り返してゆくことが、アジャイル開発や超高速開発ツールの背景にあるのです。
時間をかけて丁寧に要求を聞き取り仕様書に起こしても、ビジネス環境が変われば要求仕様も変わります。かつてのようにビジネス環境の変化が緩やかであれば、このやり方でも「ビジネスの成果に貢献」できましたが、そんなシステムは少なくなりました。
「仕様書通りシステムを構築する」から、「システムを使って、ビジネスの成果に貢献する」
アジャイル開発や超高速開発ツールは、そのための仕事のやり方であり、手段なのです。
「仕様書通りシステムを構築する」ビジネスのゴールはQCDの達成です。それを確実にするために手間をかけ(=工数をかけ)、その労働力の対価を受け取ることが収益モデルとなります。
一方、「システムを使って、ビジネスの成果に貢献する」ビジネスのゴールは現場の納得や満足です。それを確実にするために、現場と共に成果をあげる方法を考え、現場のニーズを先取りして動くシステムを直ちに見せて「納得できるかどうか」を確認し、変更すべき点があれば直ちに修正する。この関係を継続して提供し続けなくてはなりません。
そのためには、何をビジネスの成果とするかを予め合意し、請負として取り組むのも1つの方法ですし、定額準委任で期間と工数を提供するという収益モデルとなります。このようなやり方のすんなりと請けてくれる契約相手は事業部門かもしれません。あるいは、この変化を感じている情報システム部門かもしれません。
ビジネスのゴールが変われば、売り方も変わります。
「これだけの機能を実装するのに、これだけの工数がかかりますから、これだけ下さい。」から「この成果を達成するために、おおよそこの程度の期間と工数がかかります。このリソースでできうる最高の成果を達成しますので、これだけ下さい。もし、その結果を見て、それ以上のことをやりたいと思われれば、改めて次の契約をしてください。」に変えなければなりません。
成果を提供することがゴールであるとすれば、その手段には手間をかけるべきではありません。例えば、インフラの構築や運用、システム環境の整備は、クラウドや超高速開発ツールに任せてしまえばいいわけです。現場のニーズに即応して直ちに開発し、すぐに本番移行できる仕組みを用意するDevOpsの取り組みも不可欠です。
ビジネスの成果をあげるためにできるだけ少ない生産量(=工数)で、短期間にシステムを実現する。
お客様が求めるシステムへの期待は、いまこのように変わり始めているのです。
最新版(3月度)をリリースしました!
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
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*インフラに関わるコンテンツを大幅に増やしました。
*サイバーセキュリティについて新しい章を追加しました。
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インフラ&プラットフォーム編(311ページ)
【新規】サイバー・セキュリティの章を新設 p.105-110
サイバー攻撃がなぜなくならないのか
サイバー・セキュリティ対策とは何か
サイバー・セキュリティ対策の目的
サイバー・セキュリティ対策の範囲
リスクマネージメントの相関図
【新規】クライアント (=PC) の誕生 p.112
【新規】PC出荷台数の成長が鈍化 p.113
【新規】IoTでさらに増えるクライアント p.114
【新規】新しいクライアントの出現 p.115
【新規】メインフレーム、クライアントサーバー、クラウド p.118
【新規】クラウドの技術的特徴とクライアント p.119
【改定】位置情報を使った新たなサービス p.124
【新規】ユーザーの爆発的増加 p.125
【新規】ユーザーからの簡便な情報発信 ≑ 情報収集 p.126
【改定】これからのクライアント・プラットフォーム p.152-159
【新規】SDI(Software-Defined Infrastructure) p.174
ビジネス戦略編(110ページ)
【新規】ITに関わる法制度と政策 p.97-100
テクノロジー・トピックス編(50ページ)
【新規】ブロックチェーン p.27
サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT(99ページ)
【新規】LPWA(Low Power Wide Area)ネットワークの位置付け p.48
サービス&アプリケーション・先進技術編/人工知能とロボット(99ページ)
【新規】自動走行できる自動車 p.71
サービス&アプリケーション・開発と運用編(66ページ)
*変更はありません
サービス&アプリケーション・基本編(50ページ)
*変更はありません
ITの歴史と最新のトレンド編 (14ページ)
*変更はありません
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