「現場の話しをきいてくれるのはいいけど、パートのおばさんや担当者の話だけを聞いて、それだけでシステムを作らないで欲しい。」
ユーザー企業の経営者がこんな話をされていました。
「いまの仕事の流れは理解できるでしょうが、それを変えたいから相談しているんです。いままでのやり方をそのままに、現場の意見だけで仕様をまとめないでもらいたい。経営者や業務に責任を持つ人たちの話をしっかりきいて、提案して欲しいんですよ。こんなやり方がいい、こんな技術を使えばいい、こんなふうに仕事のやり方を変えましょうと提案して欲しいんです。」
情報システムはなぜ必要なのでしょうか。個々の目的はいろいろありますが、行き着くところは「経営への貢献」です。
現場がいまのやり方になれているからというだけで、そのやり方をそのままにシステムを作っても、それはほんとうに経営に貢献できるのでしょうか。自分たちの経験や既知の技術だけにたより、自分たちに「できること」を「いままでのやりかた」でシステム提案をする。それで本当にお客様の「経営への貢献」は果たせるのでしょうか。
お客様は「QCDを遵守したシステム開発と安定稼働」を求めているのではありません。売上の向上、業務の効率化、顧客満足度の向上といった「経営への貢献」を求めているのです。仕様書通りのシステムができることではなく、ビジネスが成功することを求めているのです。
その目的を実現するために「すべきこと」を明確にしていますか。
- 自分たちにできるかできないかの前に、まずは何が「あるべき姿」なのかをはっきりとさせる。
- それを実現するために「すべきこと」を考える。
- それを判断できる立場の人にぶつけ、合意を求める。
そのうえで、自分たちのできること、できないことを明らかにし、できることは自分たちで、できないところは外部の協力や市販の製品を利用するなどして、「すべきこと」を満たす提案をすることが、お客様の期待です。
「ウエブやスマートフォン、タブレットで買い物ができるように仕組みは整えています。でも私たちの客層は紙のカタログやチラシでなければ受け入れてもらえません。そのためFAXや電話での注文に相当手間がかかっています。ミスも少なくありません。それを何とか解決したいと思っています。」
このようなお客様に「スマートフォン対応オンライン販売簡単作成・管理システム」を提案しても、「おまえ、何しに来たんだ?」と言われるだけの話しです。それよりも、FAX注文の画像認識で読み取ってテキスト・データに変換しデータベースへ登録する仕組みを提案してはどうでしょう。電話での質問を音声認識しAIで音声応答し、注文まで受け付けてくれるシステムを提案してはどうでしょう。それが一番やりたいことなのですから。
「そんな経験はない」、「うちには技術がない」と諦める前に少しでも調べてみてはどうですか。世の中にはこれらを可能にするクラウドサービスが既に存在しています。自分たちで全てを実現する必要などありません。既にあるサービスのAPIを使って、自社で開発する販売管理システムに組み込むことを考えてはどうでしょう。
まずは調べてみることです。つい先日までは不可能だと思われていたことが、あっという間にできるようになる時代です。もし使えそうなら試しに使ってみることです。そんなお客様の「困った」を解決する取り組みを通じて、いまの「最先端」を自分たちのノウハウとして積み上げてゆけばいいのです。
「簡単なことではない」と言うのは簡単ですが、日々進化するITが世の中を変えていることに目をふさぎ、過去の経験の延長だけでお客様の課題を解決しようなんて、お客様に対して失礼ではありませんか。お客様は「解決策」を期待して声をかけてくれたのだとすれば、それに全力で応えることでしょう。それが自分たちにできるかどうかを考える前に、いま一番の解決策を探し求めるべきです。その上で自分たちにできることは提案し、できないことは他社と協業する、あるいは素直に身を引くことなのです。
しかし、毎回「身を引く」では、ビジネスにはなりません。だから、勉強すべきであり、ノウハウを積み上げなければならないのです。
「これだけの工数と手間がかかるので〇〇〇万円かかります。」
もうそんな提案はやめにしませんか。
「御社の経費を〇〇〇万円削減しますので、〇〇〇万円の投資をしませんか。」
あるいは、
「御社の売上を〇〇〇万円増やしますから、〇〇〇万円の投資をしませんか。」
そう提案してはどうでしょう。
お客様が求めているのは手段ではなく結果です。「経営にこれだけ貢献する」という結果がほしいのであって、それを実現する手段が欲しいわけではありません。
本来の目的を達成するためには、システムの提案だけでは無理ならば、仕事のやり方にまで踏み込んで自分ならこう考える、こうやるだろうと伝えてみてはどうでしょう。そうやってお客様に議論を仕掛け、相手からだめ出しをもらうのです。そんな繰り返しを重ねながら、目的を達成する最適な手段をお客様と一緒に作ってゆくのです。提案営業やコンサルティング営業とは、このような仕事の進め方をするものです。
先週のブログでも申し上げたとおり「お客様の期待に応える」だけの営業はやがて人工知能の営業に置き換えられてゆきます。人間の営業に残された可能性は、「お客様の期待を超える」ことができるかどうかにかかっています。
そのためには知識をアップデートしておくことも大切ですが、お客様と経営や業務について議論ができることです。そして、
「自分の提案はお客様の経営に貢献できているだろうか」
その問いかけを忘れないようにしたいものです。
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まずは、どのような内容かご覧頂ければ幸いです。
「ポストSIビジネスのシナリオをどう描けば良いのか」
これまでと同じやり方では、収益を維持・拡大することは難しくなるでしょう。しかし、工夫次第では、SIを魅力的なビジネスに再生させることができます。
その戦略とシナリオを一冊の本にまとめました。
「システムインテグレーション再生の戦略」
- 歴史的事実や数字的裏付けに基づき現状を整理し、その具体的な対策を示すこと。
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こんな方に読んでいただきたい内容です。
SIビジネスに関わる方々で、
- 経営者や管理者、事業責任者
- 新規事業開発の責任者や担当者
- お客様に新たな提案を仕掛けようとしている営業
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- 新しいビジネスのマーケティングやプロモーション関係者
- プロジェクトのリーダーやマネージャー