「サンフランシスコであまりにもタクシーがつかまらない。この場で乗りたいのに、手をあげてもタクシーは止まってくれない。」
ライドシェア・サービスの代名詞ともなった「Uber」は、そんな創業者の実体験がきっかけだったそうです。
「タクシーが利用者のニーズに応えてくれないのなら、自分たちでつくってしまおう。」
そうやって2009年3月にこの会社は設立されました。
いつでも、どこからでも、誰もが、すぐにスマートフォンでタクシーを呼び出すことができ、しかも既存のタクシーに比べてずっと安い料金で利用できる。そんなUberは瞬く間に世界に拡がってゆきました。そして7年後の2016年6月現在、世界478都市にサービスを提供し、売上高も1兆円を超えようとしています。
Uberの創業者は自分が感じたことを「それが普通だから仕方がない」とは考えず、「もっといいやり方があるはずだ」と考えたのです。そして、それを実現するために「いまできるベストなやり方は何か」を考え抜いたのです。そのとき「ベストなやり方」の選択肢として、その当時としてはまだ目新しいクラウドやスマートフォンに目を付け、その可能性を最大限に引き出せるように試行錯誤を繰り返しながら作り上げたのがUberだったのです。昨今のデジタル・ビジネスの原点は、共通しています。
- 「困った」を解決したい
- もっと便利に使いたい
- もっといいやり方があるのはず
そんな想いが新しいビジネスを生みだすきっかけとなりました。決して、ITでビジネスをやることが目的だったわけではありません。最新のITを駆使することが一番いいやり方だったのです。そんな原点を突き詰めていった人たちが、誰もが注目するような新しいビジネスを続々と立ち上げているのです。
それほどまでにITは身近なものとなり、これまでの常識や既存の業界秩序を破壊するまでの力を持ち始めています。しかし、身近な現実に目を向けると、かならずしもそうではないようです。
「人工知能を使って、うちでも何かできないのか?!」
こんな話しが経営者かふってきて、さてどうしたものかと現場が頭を抱えています。「世間で人工知能が話題になっているので、うちも乗り遅れてはいけない」ということなのでしょう。「人工知能を使うこと」が目的ではないはずです。目の前の課題を解決したい、もっといいやり方かを見つけたい。それが目的のはずです。その目的に向き合うことなく、手段を使うことを目的にビジネスを考えるという本末転倒な話しは後を絶ちません。
人々に受け入れられるビジネスは、直面する課題やニーズに気付き、真摯に向き合うことからはじまります。その解決策として「ITの新しい常識」を排除せず、その可能性を最大限に活かして行こうという考え方が、これまでにない革新的なビジネスを生みだしているのです。
ところで、あなたは“uber”の意味をご存知ですか。「優れた」あるいは「突出した」という意味があるそうです。まさにUberは世の中の常識を変えてしまうような突出したビジネスとなりました。
「uberist(“突出したことをする人”という意味を表す造語)」
あなたもuberistを目指してみてはどうでしょう。会社につとめている人にも、これからベンチャー企業を立ち上げようという人にも可能性はいくらでもあります。では、どうすれば「uberist」になれるのでしょうか。そこには3つの原則があります。
第1原則:課題の実感
- 誰かがそんなことを言っていた。
- 世間で話題になっている。
- 偉い先生がそんな話をしていた。
といったことではなく、仕事や生活の中に課題を実感することが最初です。自分が実感していることもあるでしょう。あるいは、「工場の現場が困っているらしい」や「お客様が何とかしたいと言っていた」のであれば、それを現場で確かめて、自分の実感として受けとめることです。
「三現主義」ということばがあります。
「現場に出向いて現物に触れ現実を見なければ、ものごとの本質を見極めることができない」
そのことを仕事の現場に息づかせる言葉で「ものづくり」の現場で特に大切にされてきました。例えば、工場の生産現場で不具合品が見つかったとき、現場の状況だけを聞いてデスクの上で判断を下しても的確な判断は下せません。不具合品が作られる工程(現場)に出向き、不具合品(現物)に触れ、不具合品が起きている状況(現実)を見るという三現主義を重視すれば、より正しい判断に近づくことできるというわけです。
「三現主義」で生々しい現場の課題やニーズを実感として捉えることができて、それを何とかしたいという本物の意欲や動機が与えられるのだと思います。
第2原則:トレンドの風を読む
ITは世の中の常識を大きく、そして急速に変えてゆきます。その変化にアンテナを張り、向かう方向を読み解く努力が怠らないようにしたいものです。それには2つの意味があります。ひとつは、「ニーズの変化」を知るためであり、もうひとつは「いまできる最適な手立て」を見過ごさないためです。
「ニーズの変化」とは、これから社会が何を求めて動くのかを知ることです。私はそれを知る手掛かりが「デジタル・トランスフォーメイション」にあると考えています。
人間が経験で現場を理解し人間が行うことを前提に最適化されてきた世の中を、データで現場を捉えITが最も活躍できるように最適化された世の中へと仕事の仕組みや生活のスタイルをかえてゆこうという大変革にこそ、新たな変化を読み解く鍵が隠されています。昨今のデジタル・ビジネスはそんな大変革の具体的な姿です。そして、「サービス化」、「オープン化」、「スマート化」、「ソーシャル化」といったニーズを生みだしています。このニーズの変化を先取りし、新たな施策を考えてゆくことが未来を味方に付ける鍵となるのです。
もうひとつの「いまできる最適な手立て」とは、
- かつてできなかったことが、容易にできるようになった。
- かつて高額でとても手を出せなかったものが、とても安価に手に入るようになった。
- 人々の「当たり前」が変わり、ITを身近なものとして受け入れ使いこなしている。
ITがかつての常識を新しい常識に書き換えている事実に目をつむらないことです。「かつてはこのやり方が最善の手段だった」は、いまも通用するとは限りません。「最善の手段」はいつの時代も新しいのです。過去の経験や成功体験を「いま」に押しつけるのではなく、時代に応じた「最善の手段」を見失しなってはいけません。
「ニーズの変化」と「いまできる最適な手立て」を知るために「トレンドの風を読む」ことが大切なのです。
第3原則:試行錯誤
ITがもたらす変化のスピードは数年先を予測することさえ難しい状況です。それに加えてビジネス環境も世界がITで緊密につながったことで、遠い国や地域の出来事が瞬く間に世界を大きく動かします。絶対の正解はなく、何が最適かを判断することが容易な時代ではありません。だから、最後まで見通した完璧な計画など作れません。だから第1の原則で現場を感じたなら、第2の原則でその時の最適な手立てを駆使してさっと成果をあげ、変化に応じて試行錯誤を積み重ねてゆくことが大切なのです。
いつの時代にも変化はありましたが、変化のスピードがこれほど速い時代は、かつてはありませんでした。将来にわたって安心確実なビジネス・モデルや手段を見出すことは大変難しい時代となったのです。
クラウドやインターネット、さらにはテクノロジーの進化のおかげで失敗のコストは大きく下がりました。そんな時代の後押しをフルに活かして「試行錯誤」をおこなえばいいのです。これもまたuberistたちに与えられたチャンスと受けとめるべきでしょう。
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