「おっしゃるとおりです。何とかしなくては思っています。」
講演で「システムインテグレーション崩壊」を叫べば、SI事業者の皆さんから一様にこのようなご感想を頂きます。
私はこれまで、「システムインテグレーション崩壊」や「システムインテグレーション再生の戦略」などの著書、講演を通じ、ITを生業とする企業の課題を指摘し、その対処の方法を提案してきました。ITがこれまでの常識を崩壊させ、新しい常識に上書きされつつあるいま、自らが変わらなければ、これからの時代を生き抜くことはできないと警鈴をならしてきたのです。しかし、言葉ではご理解頂けても実践に移せない企業が少なくありません。その理由のひとつは、「お客様が変わらないから」ということではないかと思っています。
お客様のITとの係わり方が変わらなければ、SI事業者への期待も変わらず、依頼する仕事も変わりません。これまで通りの需要があるのに、無理をして、リスクを冒してまで自分たちを変えようというモチベーションが生まれてこないのではないかと考えています。
もっともな話だと思います。しかし、そんな成り行きまかせのやり方では、やがて時代取り残され、気がつけば競争力や存在価値を失ってしまうことは目に見えています。
「2匹のカエルを用意し、一方は熱湯に入れ、もう一方は緩やかに昇温する冷水に入れる。すると、前者は直ちに飛び跳ね脱出・生存するのに対し、後者は水温の上昇を知覚できずに死亡する」
「茹でカエル」の喩えをご存知の方も多いのではないかと思いますが、気がつけば死んでいるカエルになりかねない状況にあるのです。
では、この状況からどのようにすれば抜け出すことができるのでしょうか。2つの方法があるように思います。
ひとつは、SI事業者がお客様にビジネスの変革を促すことです。もうひとつは、変わろうとしているお客様に果敢にアプローチすることです。
前者は、システムではなくビジネスであり、経営への「デジタル・トランスフォーメーション」の提案です。既存業務の改善ではなく、ITを活かして経営のあり方やビジネス・プロセスを変革する。あるいは、ITを使うことでこれまでに無いビジネスを実現することに関わってゆくことです。もちろん、SI事業者だけでできるわけではなく、お客様と一緒になり、考えてゆかなければなりません。言われたことをするのではなく、お客様にこちらから新しいビジネス・モデルを提示し、一緒に実現しましょうという呼びかけです。
もうひとつは、変わろう、変わりたいというお客様に積極的に協力してゆくことです。
「事業部から現場の状況をリアルタイムで把握したいという要望があるんだけど、どうすればいいだろうか」
情報システム部門からこのような相談を請けることはありませんか。もし、そんな相談が全くないというのなら、かなりヤバイと思うべきです。自分たちの存在が単なる力仕事の工数でしかないとお客様に思われていると言うことです。このような状況にならないためには、前者のような積極的な提案とまではいかなくても、テクノロジーのトレンドやデジタル・ビジネスなどの取り組みについて、お客様に折に触れて伝えてゆくことで、新しい相談事にも関心があることを伝え続けておくことが大切です。
いずれにしろ、そのような相談に対して積極的に関与することです。そして、そういう変化を求めているお客様の仕事を増やし、力仕事だけの仕事を減らしてゆくことを考えてゆくというのはどうでしょう。そうすれば社内の意識を変え、前者のような変革を促すアプローチができるようになるかも知れません。
両者に共通することは、「お客様のビジネスの成功」です。与えられた開発要求を、QCDを守って納品することではありません。その意識を持たない限り、自分たちのビジネスの有り様を変えてゆくことは難しいでしょう。
「お客様といっても情報システム部門しか付き合いがなく、きっかけがなかなかつかめません。」
情報ステム部門不要論がささやかれるいま、情報システム部門の中には、自らの変革を模索されているところが少なくないように思います。私も情報システム部門からそのようなご相談を請けることがあります。そんな彼らに知恵を与え、一緒になってその変革をお手伝いするというのも、ひとつの係わり方ではないでしょうか。事実、情報システム部門が変革の提案をまとめ経営者や事業部門に説明するための戦略を作り、資料作りをお手伝いさせて頂くケースはよくあります。そんな需要が十分にあるのです。
もちろん、経営者や事業部門に直接アプローチすることもひとつの方法です。そして、彼らを動かし情報システム部門を動かすことも可能でしょう。しかし、結局は情報システム部門の協力が必要になりますから、ならばはじめから彼らと一緒になって仕掛けてゆくという考え方も大切にすべきだと思います。
ITはこれまで「効率化の手段」でしかありませんでした。しかし、UberやAirbnbなどのデジタル・ビジネスの台頭、IoTや人工知能など、お客様のビジネスの常識を大きく変えてしまう実践がすすんでいます。ITを武器に差別化を図り競争優位を実現することが求められるようになりました。この期待に応えなければなりません。
クラウドや人工知能、オフショアの普及により「システムを開発する」ことで収益を上げることは難しくなるでしょう。これからは「システムを使うこと」によって、お客様のビジネスの成功を支援して、その対価を受け取るビジネスへと自らの役割を変えてゆかなければなりません。
自分たちを変えるためにはお客様をカエル(変えるor替える)ことです。そして、それはお客様とともにお客様自身のビジネスを変革することに貢献することなのです。
開催!ITソリューション塾・関西(グランフロント大阪タワーA)
詳細は、こちらにてご覧下さい。
*定員に達しました締め切りとなります。もし、まだ決定ではないけれど、ご参加のご意向がありましたら、まずはメールにてお知らせください。参加枠を確保させて頂きます。
【最新版】最新のITトレンドとビジネス戦略【2016年5月版】
*** 全て無償にて閲覧頂けます ***
【大幅改訂】新入社員研修のための「ITの教科書」
最新版【2016年5月】をリリースいたしました。
今月の目玉は「新入社員のための研修教材の追加」と「IoTや人工知能についての資料を大幅に追加」したことです。ご活用下さい。
【新入社員研修教材「最新のITトレンド」・2016年版】
最新のITトレンドについての新入社員向け研修教材として作成致しました。内容は、月次に更新している「最新のITトレンドとビジネス戦略」からの抜粋です。
加えて、以下のドキュメントもダウンロード頂けるようにしました。
- 事前課題(Word形式)
- 理解度テスト(Excel形式)
- 最新ITトレンドの教え方(PPTX形式/解説をノートに記載)
本教材の各ページには、できる限り解説を併記しています。ただ、未記入のものもありますが、今後の更新にて順次追加致します。
【最新のITトレンドを理解するための基礎知識】
主に新入社員を対象に、最新のITトレンドを理解するために知っておくべき基礎知識を改定しました。プレゼンテーションに加え、解説文(教科書)も合わせて掲載いたしましたので、自習にも役立ちます。
【インフラ&プラットフォーム編】(266ページ)
- サービス編と重複する内容を削除すると共に、全体の順序を変更しました。
- 「クラウドによる新しい組合せ」を追加すると共に、解説文を掲載しました。p.27
- 「ASPとPaaSの違い」を追加しました。p.58
- 「マルチテナント効果」を追加しました。p.59
- 「Oracle 12cのマルチテナント・アーキテクチャ」を追加致しました。p.60
- 「Amazon API Gateway」を追加致しました。p.63
- 「ITで変わる働き方」を追加しました。p.178
【サービス&アプリケーション編】(224ページ)
IoT
- 「モノのサービス化」を新規追加し、解説を加えました。p.27
- 「製造業のサービス化」を新規追加しました。p.31
- 「IoTで変わるビジネス価値」を新規追加し、解説を加えました。p.32
- 「ビジネス価値の進化」を新規追加しました。p.33
- 「機器のイノベーションとビジネス戦略」を新規追加しました。p.41
- 「CRMとトータル・エンジニアリング・サービス」を新規追加しました。p.55
スマートマシン
- 「人工知能と機械学習」を改訂し、解説を追加しました。p.144
- 「人工知能の4レベル」を改訂し、解説を追加しました。p.145
【ビジネス戦略編】(92ページ)
- 「戦略・作戦・戦術とIT」を改訂しました。 p.12
- 「商品としてのITの作り方」を追加しました。p.13
閲覧は無料です。ダウンロード頂く場合は会員登録(500円/
http://libra.netcommerce.co.
まずは、どのような内容かご覧頂ければ幸いです。
「ポストSIビジネスのシナリオをどう描けば良いのか」
これまでと同じやり方では、収益を維持・拡大することは難しくなるでしょう。しかし、工夫次第では、SIを魅力的なビジネスに再生させることができます。
その戦略とシナリオを一冊の本にまとめました。
「システムインテグレーション再生の戦略」
- 歴史的事実や数字的裏付けに基づき現状を整理し、その具体的な対策を示すこと。
- 身の丈に合った事例を紹介し、具体的なビジネスのイメージを描きやすくすること。
- 新規事業を立ち上げるための課題や成功させるための実践的なノウハウを解説すること。
また、本書に掲載している全60枚の図表は、ロイヤリティ・フリーのパワーポイントでダウンロードできます。経営会議や企画書の資料として、ご使用下さい。
こんな方に読んでいただきたい内容です。
SIビジネスに関わる方々で、
- 経営者や管理者、事業責任者
- 新規事業開発の責任者や担当者
- お客様に新たな提案を仕掛けようとしている営業
- 人材育成の責任者や担当者
- 新しいビジネスのマーケティングやプロモーション関係者
- プロジェクトのリーダーやマネージャー