新規事業への取り組みは、いつの時代であっても重要な経営課題です。しかし、現実をみれば、先細りする既存市場にしがみつき「改善」の域を超えない取り組みが少なくありません。この状況を変えるためにはどのような取り組みが必要となるのでしょうか。
ステップ1:「あるべき姿」を明らかにする
- 圧倒的な価格競争力で業界トップの地位を確保したい
- スピード対応で他社の追随を許さない
- 顧客の要望にきめ細かく迅速に対応できるサポート力で顧客を囲い込みたい
どうやって実現するかではなく、
- 結果としてどうなっていたいのか
- これができたら「成功」と言い切れる姿
- 理想のゴール
すなわち「あるべき姿」を具体的に明らかにすることが最初の一歩ですこれは経営や事業が目指す「あるべき姿」を明確に定めることであり、経営者や事業に責任を持つ者が最初にやらなければならないことです。
ステップ2:達成基準を決める
どのような結果が出れば成功したと見做すのかを決める必要があります。例えば、「圧倒的な価格競争力で業界トップの地位を確保したい」のであれば、「売上、営業利益、顧客シェアでトップを維持する」こととなります。この場合は、売上だけを達成しても営業利益や顧客シェアで競合他社の後塵を拝するのであれば、成功とは言えません。
また、それを3年間かけて達成するのであれば、例えば初年度は売上、2年目は営業利益、3年目で顧客シェアのトップを達成すると言ったように期限を区切って達成目標を設定することです。
ステップ3:戦略・作戦・戦術を決める
- 戦略(Strategy):目指すべきゴール、すなわち「あるべき姿」を実現するためのシナリオ。
- 作戦(Operation):この戦略を実現するためのひとつひとつのプロジェクト。
- 戦術(Tactics):そのプロジェクトを遂行するための手段や道具。
先週のブログにて紹介した「ITの4つの役割」に対応付けて、見てゆくことにしましょう。
戦略(Strategy)
「戦略」の段階では、「思想としてのIT」を考慮する必要があります。人工知能やIoT、クラウドなどのテクノロジーの進化は、それまで非常識だったことを常識に変えてしまうことだってあります。例えば、
- これまではコストがかかりすぎてとても考えられなかった
- 高度な熟練が必要で人間にしかできなかった
- 業務の連携や人のつながりが簡単には作れなかった など
テクノロジーの進化がかつての非常識を変えてしまう事例が数々登場しています。
「そんなことはできるはずはない」といった思い込みを廃し、テクノロジーのトレンドやデジタル・ビジネスの事例を丁寧に調べ、可能性を探ることです。
ネットや書籍で調べるだけでなく、ベンチャー企業や大学などとの共同研究や技術開発、優れた技術やアイデアを集めるイベントの主宰やコミュニティーへの参加など、感度を高く最新の事情に触れ、知恵や知識を持つ人たちとつながっておく取り組みが大切になるでしょう。
IoTやFinTech、人工知能などのハイテク分野の取り組みでは、大企業とベンチャー企業、大学などが一緒になって、コンソーシアムを立ち上げる例が増えています。そんなところに参加し、エコシステムを築き、戦略を組み立ててゆくことも有効なやり方です。
作戦(Operation)
作戦においては、「仕組みとしてのIT」を考えます。どのような手順で、どのような手続きを行い、どのようなやり方で結果を出すか。そんなビジネス・プロセスや業務手順を明確にして、それを実現するプロジェクトです。
業務プロセスを改革するだけで、ITを使わずに実現するという選択もあるかもしれません。あるいは、効率やスピードを考えれば、ITをうまく使った方が効果的かもしれません。
ITを使うのであれば、具体的なプログラミングや機器の設定作業はITの専門家に任せたとしても、ITで何ができるか、どのような効果が期待できるかを正しく理解し、活用の仕方を考えることは経営者や事業部門の責任です。
戦術(Tactics)
戦術において考慮すべきは、「道具としてのIT」です。例えば、
- どのタブレット端末はコストパフォーマンスが高いか
- どのパッケージ・ソフトウエアが作戦の実現には最適か
- どの開発ツールを使えば開発の生産性を高かめられるか など
これからおこなおうとしている「作戦」にふさわしい手段として最適なものはどれか、また、それを使えるようにするための手順や使いこなすためのスキルをどのように身につければいいのかを検討してゆく必要があります。
「商品としてのIT」はどのようにつくるのか
「商品としてのIT」として、新しいデジタル・ビジネスを実現しようとする場合は、次のようなアプローチで進めてみてはどうでしょうか。
- 戦略:「思想としてのIT」が教えてくれる「これからの常識」で、新しいビジネス・モデルを描く。
- 戦術:「仕組みとしてのIT」で、便利で効率の良いビジネス・プロセスを作る。
- 戦術:「道具としてのIT」で、是非とも使いたいと思わせる使い勝手や見栄えの良さを実現する。
「商品としてのIT」は、それ自身が収益を上げてくれるITです。ですから、ビジネス・オーナーは、ビジネスとITの両方に精通していなければなりません。技術が分かるだけでは、実現することは難しい取り組みです。
なかなか成果をあげることができない新規事業を抱えているとすれば、以上のような視点で、見直してみてはいかがでしょうか。何か新しい気付きが得られるかもしれません。
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- 「ASPとPaaSの違い」を追加しました。p.58
- 「マルチテナント効果」を追加しました。p.59
- 「Oracle 12cのマルチテナント・アーキテクチャ」を追加致しました。p.60
- 「Amazon API Gateway」を追加致しました。p.63
- 「ITで変わる働き方」を追加しました。p.178
【サービス&アプリケーション編】(224ページ)
IoT
- 「モノのサービス化」を新規追加し、解説を加えました。p.27
- 「製造業のサービス化」を新規追加しました。p.31
- 「IoTで変わるビジネス価値」を新規追加し、解説を加えました。p.32
- 「ビジネス価値の進化」を新規追加しました。p.33
- 「機器のイノベーションとビジネス戦略」を新規追加しました。p.41
- 「CRMとトータル・エンジニアリング・サービス」を新規追加しました。p.55
スマートマシン
- 「人工知能と機械学習」を改訂し、解説を追加しました。p.144
- 「人工知能の4レベル」を改訂し、解説を追加しました。p.145
【ビジネス戦略編】(92ページ)
- 「戦略・作戦・戦術とIT」を改訂しました。 p.12
- 「商品としてのITの作り方」を追加しました。p.13
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