「○月○日12:00〜13:00、こちらのURLから入ってください。議事録はこちらのURLでお願いします。」
私が理事を務める「一般社団法人 情報支援レスキュー隊(IT DART)」の打ち合わせは、こんな連絡から始まります。
それぞれに本業を抱えた多忙な人たちの集まりですから、隙間の時間をお互いにひねり出さなくてはなりません。議論はWeb会議システムのGoogle Hangoutを使い、どこにいても行うことができます。移動中、駅のベンチからスマートフォンで参加する人もいます。記事録は共同で編集できるGoogleドキュメントを使い、会議を進めながら誰とはなしに議論した内容を書き込んでゆきます。議論すべきテーマは会議が始まるまでに、それぞれが空いた時間を見つけて、事前にその記事録に書き込んでおくようにします。参加者はそれを見ながら議論をすすめてゆきます。
「アクションアイテムは、ここに書き込んでおいてください」
その場で誰かがGoogleスプレッドシートの新しいファイルを作り、そのURLを共有します。議論を続けながら全員がそこにアクションアイテムを書き込んでゆきます。
「時間になりましたので、終わりにしましょう。次回は、○月○日19:00からでお願いします。ご苦労様でした。」
こうやって時間通り会議が終わるスッとWebから消えてゆきます。しかし、議事録は既に完成し、アクションアイテムもほぼ出来上がっているので、それぞれの仕事にすぐに移ることができます。限られた時間での集中した議論、オンラインツールを使った記録作成と情報共有で、打ち合わせが大きな負担になることはありません。
先日、IBM Watson日本語版発表記者会見にブロガーとして招待をうけ参加してきました。その中でSoftbankが自社の営業支援ツールとしてWatsonを活用した事例を紹介していました。
「○○株式会社の財務状況はどうなっている?」
「同業他社と比べて何処に課題がありそうかなぁ?」
「この課題に対して使えそうな提案事例はないかなぁ?」
そんな担当営業の曖昧な問い掛けにWatsonは必要な情報を探し出して教えてくれます。財務データはインターネットからWatsonが収集し、事例などの資料の登録にタグ付けや分類は必要ありません。Watsonが内容を解釈し、質問の意図から情報を探してきます。彼は、その情報を参考に戦略を考え、提案書をまとめてお客様に向かいます。
これまでコスト削減、期間短縮などの業務プロセスの効率化のために多大なIT投資が行われてきました。しかし、それが十分に効果を上げているとは言えません。我が国の労働生産性は、OECD加盟34カ国中21位、加盟国全体の平均にも及びません。財政危機が懸念されるギリシャよりも低い順位です。
その原因のひとつとして、「非効率な働き方」があるのではないでしょうか。例えば、会議を始め前に時間をかけて「根回し」を行い、会議は儀式として粛々と行われ、会議が終わると突然参加者が賑やかに話し始め本音を語り出し、翌日になって書式に則って整えられた議事録が参加者に送られてきます。
営業資料の登録を促しても分類やタグ付け面倒で登録はすすまず、財務データの比較のためのツールも使いこなすにはその方法に習熟しなければなりません。
ITはこのような課題を解決し働き方の生産性を劇的に高めてくれる可能性があります。
我が国の生産年齢人口は2015年の7,682万人から2020年の7,341万人へと341万人減少します。こういう状況で稼働率を上げる努力をしても働き手が少なくなれば、ビジネスの成長はありません。それよりも、労働の付加価値を高め、生産性を向上させることでビジネスを成長させる施策に真剣に取り組むべきではないでしょうか。
もちろんITだけでできるわけではありません。リモートワークやアジャイル開発など、働き方を革新することも必要でしょう。労働時間の短縮もひとつの選択しかもしれません。
先日、あるIT企業の人事の方と話す機会がありました。この会社は残業を禁止し18時には全員帰社しなければなりません。最初は、戸惑いもあったようですが、いまではかつてとは比較にならないほどに生産性が高まり業績も好調だそうです。
リモートワーク、アジャイル開発、残業禁止に共通するのは、それを行う個人の自主的な改善努力です。自分の役割や責任を自覚し、他人に迷惑をかけない思い遣り、自らの不断の工夫と努力なくして成果をあげることはできません。それらをテクノロジーだけで実現することはできませんが、テクノロジーなくしてできないことも確かです。
工数積算型ビジネスからサービス提供型ビジネスへ転換しようと大号令のもとにすすめようとしている企業は少なくありません。しかし、このようなビジネスを成功に導くためには、どれだけの時間働くかではなく、どれだけの成果をあげるかを追求した働き方であり、そのための仕組みや評価基準です。いかに少ない工数で大きな成果をあげるかです。テクノロジーもそのために使わなくてはなりません。
生産年齢人口の減少は、優秀な人材の確保も難しくするでしょう。そういう人材を集め定着させるためには、多様なワークスタイルや兼業・副業を認める労働条件を用意しなくてはならないでしょう。優秀な人材は言われなくても勉強します。仕事の効率を上げることへの工夫も惜しみません。そういう人材に魅力的なワークスタイルを許容し、大きな成果を期待するというのは必須の施策となるでしょう。
稼働率を上げることから生産性をあげることへ
ポストSIビジネスを成功させるためには、このような働き方の改革にも取り組まなくてはならないのです。
「ポストSIビジネスのシナリオをどう描けば良いのか」
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これまでと同じやり方では、収益を維持・拡大することは難しくなるでしょう。しかし、工夫次第では、SIを魅力的なビジネスに再生させることができます。
その戦略とシナリオを一冊の本にまとめました。
「システムインテグレーション再生の戦略」
- 歴史的事実や数字的裏付けに基づき現状を整理し、その具体的な対策を示すこと。
- 身の丈に合った事例を紹介し、具体的なビジネスのイメージを描きやすくすること。
- 新規事業を立ち上げるための課題や成功させるための実践的なノウハウを解説すること。
また、本書に掲載している全60枚の図表は、ロイヤリティ・フリーのパワーポイントでダウンロードできます。経営会議や企画書の資料として、ご使用下さい。
こんな方に読んでいただきたい内容です。
SIビジネスに関わる方々で、
- 経営者や管理者、事業責任者
- 新規事業開発の責任者や担当者
- お客様に新たな提案を仕掛けようとしている営業
- 人材育成の責任者や担当者
- 新しいビジネスのマーケティングやプロモーション関係者
- プロジェクトのリーダーやマネージャー
【最新版】最新のITトレンドとビジネス戦略【2016年2月版】
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新入社員研修のための教材を公開しました。基礎的なことですが、これだけは知って欲しいという内容をできるだけ平易な文章と図解で紹介しています。プレゼンテーションだけではなく、教科書としてMS Wordの解説資料も合わせて掲載しています。
まもなく始まる新入社員研修や基礎的なことが不安という方の復習用にもご活用下さい。
【ITの基礎】
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【更新】最新のITトレンドとビジネス戦略
人工知能に関連した記述を増やしたこと、および、ITや情報システムの基礎的な知識については、「新入社員のための研修教材」として切り出し、そちらでより詳しく解説しています。
【サービス&アプリケーション編】(204ページ)
*スマートマシンと人工知能について、資料を刷新致しました。
- 2045年までのスマートマシンのロードマップを追加しました。P.119
- スマートマシンが労働にもたらす影響について追加しました。p.126-128
- 自動運転車の動向について追加しました。p.129-130
- 人工知能についてのページ順序を変更しました。
- 従来の機械学習とディープラーニングの違いを図表に組み込みました。p.149-150
【ビジネス戦略編】(86ページ)
- 営業人材の育成について、「営業の能力モデル」についての解説を追加しました。( p.72-75)
【インフラ編】(246ページ)
- 変更はありません。