「トレンド(Trend)とは、『時流』。過去から現在を通り越して未来に向かう流れ。」
先週のブログで、そんなITのトレンドを整理してみました。
>> コレ一枚でわかる最新ITトレンド / この流れに乗るか、押し流されるか
ならば、このトレンドは、ITビジネスにどのような変化をもたらすのでしょうか。
ITインフラの構築と運用は、クラウドや人工知能に代替されてゆく
クラウドの技術基盤は、SDI(Software Defined Infrastructure:ソフトウエアによって定義・設定できるシステム基盤)です。従来、サーバーやネットワークの調達や設定は、物理的機器の購入、据え付け作業や設定を必要としました。しかし、SDIになれば、これら作業は、全てはディスプレイからコマンドを叩いたり、Web画面からメニュー選択したりするだけで実現します。
また、運用は、標準化された手順を間違えなくこなすための「自動化」の範疇を越え、不測の事態にも人手を介すことなく自ら状況を分析、判断し、最適な対処をこなしてくれる「自律化」までカバーすることになります。
このような仕組みは、AWSやWindows Azureといったパブリック・クラウドに留まりません。VMwareのEVO:RAILやNutanixといった構築や運用を劇的に向上させるWebスケールITに対応した統合システムの出現は、プライベート・クラウドにも拡がりつつあります。
アプリケーションの開発と運用は、ビジネス・スピードとの同期化を求める
ビジネスはITの支え無しには成り立ちません。さらに、ITを前提としたビジネス・モデルも益々増えてゆきます。加えて、ビジネス環境の不確実性の高まりや変化の速さは、ビジネス・スピードを加速します。ITもこれに追従することがこれまで以上に求められます。
こうなると従来のように仕様を全て固めてからシステムを開発する「ウォーターフォール開発」では対応は難しく、「アジャイル開発」への要請は時代の必然となります。また、開発生産性が高く運用管理負担も大幅に低減できるPaaSの活用、また、スピードに対処するためのSaaSの選択も増えてゆきます。さらに開発やテストの一部は、人工知能に置き換わってゆくでしょう。
開発と運用の関係も大きく見直されようとしています。DevOpsの取り組みは、開発と運用を一体に運営し、ビジネス変化へのITの即応を支える基盤となります。
ビジネス・スピードとIT対応の同期化は、これまでにも増して重要視されるようになります。
ビジネスは競争力の強化のために、テクノロジーへの依存を高めてゆく
かつて、テクノロジーの価値は、生産性や効率の向上にありました。しかし、成熟した社会に於いて、生産性や効率はもはや許容水準を満たすようになり、利便性や快適さと言った感性的価値が、ますます求められるようになり、テクノロジーの価値もそちらへの重みを増してゆきます。
このような変化への対応は、改善によってもたらされるものではなく、ビジネス・プロセスの変革を促し、人々の価値観さえも大きく変容させようとしています。テクノロジーは、このような変化を支える決定的要因として位置付けられようとしています。
IBM Watsonに代表される人工知能の登場、ドイツで進められる新しい産業革命Industrie 4.0などは、生産性や効率の改善に留まらない、新たな価値の創造をめざすものです。また、自動車配車サービスUberのように既成勢力との軋轢を生みながらも新しい常識を生みだしている、テクノロジーを前提としたこれまでにないビジネス・モデルの登場も、ますます増えてゆくでしょう。
これからのビジネスにおける競争力は、テクノロジーをうまく活かせるかどうかにかかってきます。
このような変化は、ITビジネスの収益構造を「工数提供の対価からビジネス価値の対価へ」とシフトを促します。ビジネス価値とは、「スピード、変革、差別化」であり、テクノロジーは、これを支える重要な要件になります。
いま起きているITトレンドのパラダイムシフトは、これまでの常識を覆すようなテクノロジーが、幾重にも折り重なるように登場し、お互いに影響を及ぼし会いながら新しい常識へと置き換えてゆく、とても複雑な変化です。かつての「メインフレームからダウンサイジングへ」や「集中処理からクライアント・サーバーへ」とってわかりやすい変化ではありません。それが、ビジネスの将来予測を難しくしています。
だからこそ、これら新しい様々なテクノロジーから、これまでにない新しい組合せを創り出すことが求められているし、まさにそのチャンスが与えられているのです。
近代イノベーション論に大きな影響を与えたシュンペーターは、イノベーションについて、「新結合」であると述べています。つまり、これまでにない組合せを創り出すことが、社会や生活に大きな変革をもたらし、価値観を変えると述べています。決して、新しいテクノロジーを持ち込むことだけが、イノベーションの条件ではないと言うことです。このように考えれば、まさに、イノベーションがこれからのビジネス価値を生みだすのです。
本来、「システムインテグレーション」は、その役割を担っていたはずです。しかし、いつの間にか、ビジネス価値を工数価値へと置き換えてしまいました。改めて本務に立ち返えり、これからの行く末を見直してゆく必要がありそうです。
ITビジネスにかかわるということは、まさにそんなイノベーションの最前線に赴くことに他なりません。そこに関心を持てず、行動も起こせないとすれば、この業界で、もはや生き残ることはできないかもしれません。
新刊「【図解】コレ一枚でわかる最新ITトレンド」
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こんな方に読んでいただきたい!
- IT部門ではないけれど、ITの最新トレンドを自分の業務や事業戦略・施策に活かしたい。
- IT企業に勤めているが、テクノロジーやビジネスの最新動向が体系的に把握できていない。
- IT企業に就職したが、現場の第一線でどんな言葉が使われているのか知っておきたい。
- 自分の担当する専門分野は分かっているが、世間の動向と自分の専門との関係が見えていない。
- 就職活動中だが、面接でも役立つITの常識を知識として身につけておきたい。
目次
- 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
- 第1章 クラウドコンピューティング
- 第2章 モバイルとウェアラブル
- 第3章 ITインフラ
- 第4章 IoTとビッグデータ
- 第5章 スマートマシン
【定員となり締め切らせて頂きます】ITソリューション塾【第18期】
2月4日より始まる「ITソリューション塾・第18期」に、多くのご応募をいだきありがとうございました。結果として、予定を上回る79名/26社のご参加となりました。「異なる会社の皆様が、志を同じくしながら時代の変化について考えてゆく。」そんな機会にしたいと思っています。次の第19期は、5月連休明けを予定しています。どうぞ、改めてご参加をご検討いだければと存じます。
最新ITトレンドとビジネス戦略【2015年1月版】を公開しました
ITのトレンドとビジネス戦略について、集大成したプレゼンテーションです。毎月1回、「テクノロジー編」と「戦略編」に分けて更新・掲載しています。
【2015年1月版】より「テクノロジー編」と「戦略編」の2つのプレゼンテーションに分けて掲載致します。
「テクノロジー編」(182ページ)
- ストーリー展開を一部変更しました。
- 「クラウド・コンピューティング」の追加修正
- Webスケールとクラウドコンピューティングについて追加しました。
- パブリック・クラウドとマルチクラウドの関係について追加しました。
- 「IoTとビッグデータ」の追加修正。
- M2MとIoTの歴史的発展系と両者の違いについて追加しました。
- ドイツのIndustry 4.0について追加しました。
「ビジネス戦略編」(49ページ)
- ストーリー展開を一部変更しました。
- 2015年問題の本質というテーマでプレゼンテーションを掲載致しました。
- 人材育成について
- 生き残れない営業を追加しました。
- エンジニアの人材育成について新たなプレゼンテーションを追加しました。
トップ10に選ばれした!
拙著「システムインテグレーション崩壊」が、「ITエンジニアに読んでほしい!技術書・ビジネス書大賞」のトップ10に選ばれました。多くの皆様にご投票頂き、ほんとうにありがとうございました。2月19日(木)のデベロッパーズサミットにて、話をさせて頂きます。よろしければお立ち寄りください。
「システムインテグレーション崩壊」
〜これからSIerはどう生き残ればいいか?
- 国内の需要は先行き不透明。
- 案件の規模は縮小の一途。
- 単価が下落するばかり。
- クラウドの登場で迫られるビジネスモデルの変革。