「怠けているヤツなんていませんよ。みんな遅くまで頑張っていますよ。でもね、できるヤツ、できないヤツの個人差が大きくて、結局のところ、組織として安定した成果を上げられないんです。」
営業管理者から、このような悩みを伺うことは少なくありません。多かれ少なかれ、どんな営業組織にもある話です。こういう組織が抱える本質的な問題は、「こういう手順を踏めば、受注できる」という「成功の方程式」が、組織の知恵として共有されていないことにあるのではないでしょうか。こんな問題意識を持つようになりました。
どんなに景気が悪いときでも、確実に成績を上げられる営業はいるものです。ならば、そんな「できる営業」のやっていることを丁寧に洗い出して整理してみれば、他の営業にも役立つはずです。そう思い立ち、「できる営業が必ずやっている受注までの仕事の手順」を書き出してみることにしました。これをいくつものITベンダーやSI事業者に実践の現場で使っていだき、改訂を重ねてきたのが、「営業活動プロセス」です。
私が、講師を務める営業研修では、この「営業活動プロセス」を、Excelで整理し、チェックリストとして配布し、受講者が担当する実際の案件に当てはめて、進捗や課題を把握する手段として使ってもらっています。
- 「やっているつもりだったが、できていないことがあまりにも多くて驚きました。」
- 「このチェックリストを参考にすれば、仕事の抜け漏れも防げるし、お客様に何を伺えばいいのか、忘れずに済みます。」
- 「これを見れば、部下にいちいち説明させなくても進捗状況がすぐに分かって、助かります。」
- 「新入社員や若手のコーチングに使っています。先輩や上司の対応がばらついても、基本的な仕事の進め方は確実に教えることができます。」
- 「エンジニアと進捗を共有するのに重宝しています。集計すれば、経営幹部へも根拠のある説明ができるので助かっています。」
そんなご感想を頂くようになりました。ならば、これをExcelじゃなくて、スマホのアプリにしちゃおうという思い立ち、作ってみたのが「SalesMeister(セールス・マイスター)」です。
スマホのアプリなら、出先で自分のやるべき事をすぐに確認できるし、お客様を訪問した後、すぐにできたこと、できなかったことを確認できます。それを案件毎におこない、集計すれば、自分の予算に対する達成状況が一目瞭然です。また、どの進捗レベルの案件が多いのか、どの案件の優先度を上げればいいのかが、分かるようになります。
かっこよく言えば、「営業の勝率と効率を上げるセールス・ナビゲーター」といったところでしょうか。
無償ですから、是非、ダウンロードして使ってみてください。正直なところ、改善の余地は多々ありますが、皆さんのご意見を伺いながら、徐々にいいものにしてゆこうと思っています。
では、どんな仕組みになっているかを簡単にご紹介させていだきます。
「進度」と「確度」で案件を評価
例えば、あなたの会社の社長とお客様の社長が、子どもの頃からの幼なじみだったとします。そんなお客様の社長から、あなたの会社の社長に仕事の依頼が来たなら、ほぼ確実に受注できるはずです。しかし、具体的に何をすればいいのか、金額や期間はどうするのか、お互いに体制を整えなくてはならないでしょう。契約手続きも進めなくてはなりません。このような作業を進めなければ、受注には至りません。
前者は、必ずしも進捗に関係はありません。信頼関係や商品力などの自社の強みです。これを「確度」とします。
一方、どんなに「確度」が高くても、手順を踏まなければ受注には至りません。これを「進度」とします。
案件の状態、つまり現在位置は、この「確度」と「進度」のマトリックスの交差する場所となります。この「確度」を高めるための作業項目と「進度」を高めるための作業項目を確実にこなしてゆくことが、受注に至る営業活動ということになります。
- 案件の現状とこれからすべきアクション・アイテムが即座にわかります。
- 実践の結果をチェックしてゆくことで、案件の進捗状況や次にやるべきことを知ることができます。
- チェックした内容は、独自のアルゴリズムで計算され勝率の見通しをパーセントや進捗ランクとして示してくれます。
案件毎のチェックリストを集計すれば、予算達成状況や見通しをビジュアルに見ることができます。直感的に予実を把握することで、自分の営業活動の弱点や課題を見つける切っ掛けを与えてくれます。
こんな機能を実装したのが、SalesMeister / Personalです。
SalesMeister組織対応版を準備中
ところで、こうやって営業担当者が自分のために入力するのなら、それを集計すれば、組織全体で予算に対する達成状況や予実の見通しが高い精度で把握できるのではないかと考えられる方もいらっしゃると思います。そこで、SalesMeisterの組織対応版をご提供しようと準備を進めています。
実は、この仕組み、活用度がなかなか上がらないSFAの救世主になるかもしれないと思っているんです。
SFAを既に導入されている企業に話を伺うと・・・
- 報告のためだけにしか使われていません。月末にまとめて入力することが慣例になっていて、営業活動の進捗がタイムリーにつかめません。
- 進捗評価は営業の主観に頼っています。そのためばらつきも多く、個別に確認しなければ、正確なところは分かりません。
- 結局のところ、SFAでは組織全体の予算達成状況や見通しを把握することができず、別途Excelで集計しています。
こんな話を聞くことがあります。その原因は、SFAが管理者に報告するためのツールとしてしか使われていないからです。見方を変えれば、営業担当者にとって、何のメリットもないのです。入力する事へのモチベーションが得られない訳ですから、「ちゃんと入れろよ」と怖い顔をしてもなかなかうまくはいきません。
でも、SalesMeisterなら、そんなことを言わなくても営業担当者の勝率や生産性向上に役立つわけですから、すすんで入力してくれます。その結果、営業管理者は、精度の高い案件の「確度」や「進度」、そして対処が必要な事態をタイムリーに把握することができるようになります。
このあたりの話は、以前投稿させていだいた“「営業プロセス」と「営業活動プロセス」”に詳しく書きましたので、よろしければご覧ください。
「ヤバイ!」をタイムリーに共有し、対処のタイミングを逃さない
順調に営業活動が進んでいるのであれば、営業に任せておくことができます。しかし、お客様に訪問すると、
- お客様の態度がなんとなく変わった、
- 進捗がなかなか前に進まない
など、理由ははっきりしませんが、「違和感」を感じることがあります。また、
- 競合の出入りが増えている、
- 案件の検討が先送りされることになった
など、明らかに「ヤバイ!」と感じることや、確認済み、あるいは実施済みのプロセスが後戻りすることがあります。
そういうときに「つぶやき共有機能」を使えば、即座に状況を関係者で共有できます。言葉で表現できないなら、まずは「ヤバイ!」ボタンを押して、事態の悪化したことだけでも知らせることはできます。また、一度チェックした進捗確認項目を外せば、プロセスが後戻りしたことが関係者に自動的に通知されます。
管理者や営業チームはタイミングを逃すことなく「悪化」に気付くことができ、事態に対処することが可能になります。
今使っているSFAのフロント・ツールに使える
SalesMeisterの組織対応版として、ふたつの仕組みを用意しようと思っています。ひとつは、営業活動の進捗や予実を集計管理する機能まで提供するものです。もうひとつは、SFAのフロント・ツールとしてAPIを提供し、既にお使いのSFAと組合せて使ってもらおうというものです。「SFAは使っているけど活用度が上がらない」というお悩みをお持ちの場合には、お役に立つのではないでしょうか。
チェックシートのカスタマイズができる
今回リリースさせていだいた「確度」と「進度」のチェックリストとマトリックスは、ITビジネス、特にソリューション案件やプロダクト販売での「成功の方程式」となっています。実際に、いろいろな方に試していだきましたが、かなり広範囲なビジネスで使えることを確認しています。
しかし、自社の商材に特化して「営業活動プロセス」を定義したいというご意見もあり、これをカスタマイズできるようにするつもりです。そうなれば、ITに関わらずどんな商材にも適用できるはずです。また、特別な商材への対応にも使えるようにもなります。
こんなことをやってしまおうと準備を進めています。
正直なところビクビクです。内容は、実績もあるので、それなりの自信はあるのですが、アプリとなると操作性や利用シーンなどへの配慮も必要です。そのあたりは、使っていだき、ご批判をいだくしかありません。
そんな、生まれたばかりのSalesMeisterですが、よろしければ、一緒に育てていだければとねがっています。
Facebookページも公開しました。ここが皆さんとの情報交換の「場」です。是非、皆さんにとってお役に立つものとなるように育ててまいりますので、忌憚のないご意見を頂ければと願っています。
なお、このアプリの考え方の前提となっている「営業活動プロセス」については、「営業活動プロセスの理解と実践ノウハウ」という研修を開催する予定です。このブログやホームページで、ご案内させていだきます。よろしければ、そちらにもご参加いだき、実践ノウハウを手に入れてください。
どうぞよろしく御願いいたします。