「 「クラウドは従来システムよりも安全」という考え方は、連邦政府の共通認識です。ハードとソフトを所有して自ら運用しているから安全と考えるのは錯覚です。—
セールスフォースの副社長であるヴィヴェク・クンドラ氏の言葉です。
彼は、2009年に新たに創設された「連邦政府CIO(情報統括官)」に就任、米国連邦政府の情報システム改革を推進した人物で、「クラウド・ファースト(Cloud First)」を提唱したことでも知られています。
彼は情報システムに関わる予算を大幅に削減するとともに、政府の透明性を高め、情報利用の利便性を促進する「オープンガバメント」にも取り組みました。
それらを「クラウド・ファースト」で推進したのです。
連邦政府と比べるなどおこがましいことですが、企業情報システムもまた「クラウド・ファースト」は十分通用するものとなりつつあるように思います。
私は今、2000億円、2000人規模の企業で、情報システム戦略策定に関わっています。そして、この考え方が現実的なものであることを実感しています。
情報システム部門のスタッフは30名、メインフレームで基幹業務をこなしています。PCサーバーは100台、配布されているPCは3000台を超えています。
決して大規模ではありませんが、この人数で全社の情報基盤を支える事は容易な事ではありません。
このような状況にありながら、会社は収益基盤の拡大をめざし海外法人の設立や企業買収を加速しています。そのため、ITガバナンスの強化はこれまで以上に重要なものとなりつつあります。
新たな業務ニーズやスマートフォンなどのユーザーの利便性向上にも対応しなければなりません。また、この会社は工事関係という事もありPCの追加や移設が頻繁に行われます。そのため、ユーザーのPCやネットワークに関わる運用負担も大きな問題となっています。
だからといって、IT予算が大幅に増額される事はありません。こういう現実を考え合わせると、「クラウト・ファースト」が最も合理的な解決策となりそうです。
もちろん課題は少なくありません。しかし、現実に引きずられていては、成果は改善のレベルにとどまるしかありません。大きな改革は不可能です。
現状を一旦棚上げし、自分たちにとっての「あるべき姿」をまず描く事が大切です。そして、あらためて、その「あるべき姿」と現実とのギャプを考える。どうすればそのギャップを埋められるかを追求してゆくと、いろいろと解決策があるものです。
そんな議論を重ねながら描きつつある新たな情報システム戦略は、「IT資産の全面クラウド化」です。メインフレーム、サーバー、デスクトップ、そして、その運用もすべてをクラウド基盤で実現するという筋道が見えてきました。
そんなシナリオをITソリューション・ベンダー各社に示しながら、ご提案を伺っています。しかし、残念ながらクラウドを未だ補完的なソリューションと位置づけ、その真価を十分に理解していないところも少なくないようです。とても残念なことです。
改めてクラウドの真価と可能性について、考えてみてもいいかしれません。世の中は、「クラウド・ファースト」が十分現実な世界となりつつあるということを。そして、それを前提としたビジネス戦略を考えてみるべきです。お客様は、そういう提案を聞きたいと思われているはずです。
参考までに、各社のパブリック・クラウド・サービスの稼働率(availability)をベンチマークしているサイトを紹介させていただきます。
これをみればお分かりのように多くのサービスが高い稼働率を示しています。もちろん、稼働率だけでサービスの善し悪しを評価できるとは思いませんが、ひとつの目安として十分に実務に耐えうるレベルである事がおわかりいただけるのではないでしょうか。そして、何よりも、こういう情報がしっかりと開示されているのもクラウドです。
セキュリティの懸念もないとは言えません。しかし、上記の企業でセキュリティの専門スタッフはいません。また、技術的にわかる人も数名にとどまっています。こんな現実を考えるなら、冒頭の言葉にもあるとおり、専門のスタッフが取り組んでいるクラウド・サービスのほうが安全と考えてもなんの矛盾もありません。
そろそろ、クラウドへの偏見を断ち切り、現実を冷静に見つめてビジネスを考えてゆくべき時代が来たように思います。
—————————————————
■ これからのITを考える大会議 ■
—————————————————
7/5(木)、ユーザーの情報システム部門の方とITベンダーの営業がともに集い、ITのこれからを考えます。
IT業界のこれからについて、有志が集まり、思いをぶつ け合い、考え、企画した大会議です。
「IT業界にイノベーションが起きるためには?」
「ユーザーの発展に貢献できるITとは?」
をユーザー、IT企業の営業パーソンを中心とした対話の中から明らかにするために100名規模の大会議を開催します。
大人数での会議を実現するために今回「ワールドカフェ」 という会議手法を使って、大きく、深い議論を目指して行 きます。
この大会議の後、何かムーブメントを起こしてみませんか ?
◎ アンケートのお願い ◎
関連してアンケートも集めています。ご参加の有無にかかわらず、ご協力いただければ幸いです。
◎ フェースブック・ページ ◎
フェースブック・ページも開設しました合わせてごんください。