「米Rackspaceが、OpenStackによるプライベートクラウドの構築運用に参入(Publickey)。」
こんなブログのエントリーが目に飛び込んできました。
この記事の意味するところは、パブリック・クラウドとプライベート・クラウドのさらなる融合が進み、両者をひとつのリソース・プールとして扱うハイブリッド・クラウドの実現を目指す動きです。
つまり、
- オープン標準のOpenStackというIaaSの構築運用基盤で、パブリック・クラウドとプライベート・クラウドが構築される。
- ユーザーは、この共通化・標準化されたパブリック・クラウドとプライベート・クラウドの組み合わせ(ハイブリッド・クラウド)をひとつのリソース・プールとして運用することができる。
- これにより、アプリケーション毎に異なるセキュリティやコストパフォーマンンス条件を考慮し、ダイナミックで最適なディプロイメント実現できる。
つまり、「シームレス・ハイブリッド・クラウド」という世界ができあがるわけです。
この源流は、Windows Azure Platformの登場にあります。
Windows Azure Platformの登場以前は、オンプレミスとクラウドの開発・実行環境は異なったものであり、相互の互換性はないに等しいものでした。そんなときにWindows Azure Platformは、Windows Server互換の開発・実行環境をPaaSとして提供しました。これにより、オンプレミスとクラウドの垣根を取り払い、シームレスなひとつのリソース・プールとして取り扱うことを可能としたのです。
今回の発表は、これをより下位のレイヤーであるIaaSのレベルで共通化・標準化し、より自由度の高いシームレスなひとつのリソース・プールの実現を目指そうというものです。
こういう話しは、米国発が多いわけですが、意外にも日本でも同様の発想で、いち早く、「シームレス・ハイブリッド・クラウド」戦略を打ち出しているソリューション・ベンダーが存在します。それは、新日鉄ソリューションズ(NSSOL)です。
彼等は、自社のパブリック・クラウド基盤であるabsonneとプライベート・クラウド・アプライアンスであるNSGRANDIR+を共通のアーキテクチャーで実装し、これをセルフ運用ポータル「クラウドマネージャー」により、ひとつのリソース・プールとして捉え、構成の自動化や一元的な運用管理を可能とするITプラットフォーム戦略を打ち出してきました。
また、
- ソフトウェア・スイッチによるユーザードメイン毎のネットワークの個別分離
- L2によるパブリック・クラウドのネットワークとユーザー社内ネットワークとの接続
- 仮想リソースを占有させるバーチャル・プライベート・クラウドに加え物理リソースも固定的に割り当てるオプション
- きめ細かなセキュリティ・オプションによりカスタマイズに近い設定を実現
- 監査レポートの提供
- 次世代型データセンターでの運用により、低コストと高いセキュリティ・耐災害対応の両立
などという、かなりてんこ盛りなサービスを提供するそうです。しかも、計画停止を含めて99.99%の可用性の実現を目指そうとしていいるそうです。
なぜ、これを紹介したかというと、もはやクラウドは、このようなミッションクリティカルが求められるエンタープライズ・システムの受け皿として、十分に検討に値する段階に到達していることを紹介したかったからです。
未だ世の中にはクラウドに懐疑的な風潮もあります。それに根拠がないと言うつもりはありません。しかし、サービス提供者側も、それを十分承知しています。だからこそ、その課題を克服すべく様々な対策を講じてきています。そろそろ、どこかで折り合いをつけないといけない時期に来ているのではないでしょうか。
以前にも紹介しましたが、ユーザー企業の現実は、「IT予算が頭打ちであるにもかかわらずTCOは全予算の7割」という状況です。これに対処するためには、もはやクラウドに向かうしかありません。
しかし、制約の多いパブリック・クラウドに全てを移行することは現実的ではなく、結果として、ハイブリッド・クラウドという選択肢しか残らないでしょう。そのとき、「シームレス・ハイブリッド・クラウド」と言う考え方は、運用管理のしやすさ、コストパフォーマンスや変更への柔軟性という観点から、魅力的な要件のひとつとなるものと考えています。
「シームレス・ハイブリッド・クラウド」を実現するために忘れてはならないのが、ネットワークの仮想化です。
クラウド・コンピューティングは、コンピューティング・リソースを物理的なレイヤーから切り離し、仮想マシンを簡単に、そして突然出現する環境を作り出しました。また、ライブ・マイグレーションによりネットワークを越えて仮想マシンを移動させことも簡単にできるようになりました。そのような仕組みは、リソースの最適配置やシステム全体の可用性向上には、もはや不可欠と見なされるようになっています。しかし、これに伴うネットワークの構成や経路の変更は、いまだ多くを人手に頼っているのが現実です。
「シームレス・ハイブリッド・クラウド」は、クラウド・プロバイダーのデータセンターとユーザー・サイトという、地理的に異なるロケーションをまたいで、ダイナミックなネットワークの構成や経路の変更を必要とします。
そのためには、ふたつのデータセンターのネットワークをひとつの論理ネットワークとして扱い、ネットワーク機器やネットワーク経路の構成をプログラマブルに、かつダイナミックに運用する。つまり、物理的なネットワーク・レイヤーの上に、両者をまたがるひとつの仮想ネットワークを作り上げることが必要になります。
これを実現する新しいネットワークの考え方が「Software-Defined Network(SDN)」であり、それを実現するプロトコルとしてOpenFlowが注目されています。
「シームレス・ハイブリッド・クラウド」と「Software-Defined Network(SDN)」のふたつは、これからのエンタープライズ・クラウドを考える上で、外せないキーワードになると考えています。
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