「課長は、分かってないよなぁ。あれで、課長なんだからねぇ。」
「社長は、ぜんぜん先が見えてないよ。これじゃあだめだよね。」
「部長の考えは、もう古いんだよ。できるわけないじゃないか。」
・・・
できないことの言訳として、「ダメ上司」を引き合いに出してみたところで、いったい何の解決になるのでしょうか。
ダメな人間をダメだと言ってみたところで、いったいどんな進歩が、そこにはあるというのでしょうか。
このような人達に共通する特徴は、
■ 問題の原因が、常に自分以外にあると考える。
■ 想像力の欠如、つまり、相手の立場や視点でモノを考えることができない。
■ 自分のやり方や考え方、ライフスタイルを変えたがらない。
と言えそうです。
「私は、自分の得にもならないこと、余計なことはしたくないんですよ。」という考えとも通じるものがあるように思います。謙虚さのない態度ともいえるでしょう。
自分が課長だったら、自分が部長だったら、自分が社長だったら・・・そのとき自分は、どう考えるだろうかと考えてみてはいかがでしょうか。なぜ、彼は、こんなことを言うのだろうかを想像すれば、どこが同じで、何が自分と違っているかを冷静に、分析的にとらえることができるでしょう。
なるほど、そういう前提に立てば、そんな考え方もあるなぁと考えてみる。そういうところに、新たな知恵や知識への気付があるかもしれません。
相手のことを理解するとは、自分と同じところと違うところを見極めて、その違いの理由を知ることです。自分と対立することがあれば、それこそが、新しい発見です。その違いを克服することができれば、それは成長であり、進歩だと考えてみることはできないでしょうか。
自分との違いを見極めずに、ちよっとした言葉の端を捕まえて、全てを否定し、相手の意見を一切受け付けないようでは、何の進歩もありません。
まあ、これは、決して部下のことばかりではありません。上司もまた、部下の能力や状況について、想像することを放棄し、自分の基準に部下を当てはめて、「何で、あいつは、こんなコトが分からないんだ。」と嘆き、愚痴を言う。そして、理由や論理を説明して納得させようという努力を放棄し、「俺のいうとおりやっておけば間違えない。いずれわかるから、これでやりなさい!」と怒鳴ってみる。
まあ、どっちもどっちという気がします。
営業活動で、お客様との交渉は、大切な仕事のひとつです。交渉とは、次の3つのプロセスで行なわれます。
まず、最初は、相手と自分の考えや要求の違いを明確にすることです。次に、その違いを埋める手段を洗い出すことです。最後に、手段の選択肢の中で、どれを採用するかを合意することです。この手順を踏んで、初めて交渉は成立するわけです。
相手の目線から、自分や周りを見る。相手を否定することから始めるのではなく、違いを見極めるコトから始める。それができなければ、交渉を始めることができません。
お客様の目線に立って考えることをせず、「なんで、あいつが、俺の客なんだよ!」と文句を言っているようでは、営業活動はできませんから・・・
他人は、常に異なる意見や考えを持っています。同じ考えの人など、あり得ません。だからこそ、お互いが相手の状況や立場、考えを理解しようと努力しなければ、進歩も幸せもないように思います。たとえ、あなたの上司が、自分と違う意見を述べたとしても、その背後にある彼の考えや立場を考えずに、頭から否定しては、何の解決策も見いだせません。
たとえ、あなたの上司が、本物の「ダメ上司」であったとしても、まずは、自分について考えてみることです。「自分はダメ部下にはなっていないだろうか」と。そして、相手の立場になって、考えてみることです。
「なんで、あいつが、俺の上司なんだよ!」と声を荒げてみても、「自分は、不遜な人間です。成長はあきらめました。自分の得にならないことは、何もやるつもりはありません。」と相手には伝わるだけではないでしょうか。
そういう人は、きっと「なんで、あいつが、俺の部下なんだよ!」と、あなたの上司に思われているかもしれませんね。