前回紹介させていだいた第二の変化の本質は、「開発や運用にかかわる常識の崩壊」といえるだろう。開発や調達のコストを20パーセント削減するの類ではない。期間もコストも、何分の一となる手段が、手の届くところにある。SIerは、そんな新しい常識とうまく付き合わなくてはならない。
では、どのような付き合い方があのだろうか。次の3つの方法があるように思う。
1.クラウド・ブローカー
この言葉は、昨年7月、ガートナーのレポートで紹介された。
「クラウド・サービスを組み合わせ、お客様の目的とする機能を実現するインテグレーター」といったところだろうか。多様化、細分化するクラウドのサービスを、お客様が自分で選択し組み合わせることは容易ではない。そこを代ってやってあげますよというサービスである。
また、それらをお客様のオンプレミス・システムと連携させる開発も含まれる場合もあるだろう。つまり、クラウド・サービスを素材にシステム・インテグレーション・サービスを提供するようなものだ。
このようなサービスを提供するには、クラウド・サービスについての目利き力、SOAやESB(Enterprise Service Bus)などのノウハウ、そして、業務についての知識や業務プロセスを整理し、抽象化できる能力やUMLなどのスキルが必要になるだろう。
2.ビジネス・コンサルティング
クラウド・ブローカーの上流工程を切り出したものといえるかもしれない。お客様の業務プロセスや仕事の仕組みについてのコンサルティングとその最適化、また、BPOとして受託するサービスである。
現在、この部分は大手SIerやコンサルティング会社が、握っている。ただ、特定の業務分野や中堅中小の企業に向けて、パッケージ化したり、テンプレート化することで、コストの低減が図れるのではないだろうか。特に中堅中小の企業にとって、大手企業以上にコスト削減にはセンシティブであるし、業務プロセスを改革するにしても人材がいない。クラウドやオフショア・サービスを前提として、業務プロセスの改革を支援できれば、その価値は大きいはずである。
このようなサービスを提供するには、業務ついての知識やBABOKに代表されるような業務分析能力、業務プロセスを整理し、抽象化できる能力、UMLスキルなどが必要になるだろう。
3.クラウド・サービス活用型ベンダー
Googleは、300万台を超えるサーバーを所有しているという。また、年間サーバー出荷台数が1000万台といわれる中、Google,Salesforce,Amazon,Microsoftの4社で200万台近くのサーバーを購入しているらしい。この圧倒的な物量に対抗することは、もはや容易なことでない。また、その技術革新のスピードやサービス・メニューの充実も、豊富な資金に支えられている。これに対抗するサービスを独自に構築し、提供できるだろうか。
しかし、その一方で、クラウドならでは課題も抱えている。国をまたがることで生じる法規制やコンプライアンスの問題。払しょくできないセキュリティへの不信。インターネットを介することによるQOSへの不安などである。このようなクラウドの抱える課題を克服することができれば、お客様に大きなメリットを提供できるだろう。
また、ユーザー・インターフェイスや日本固有の業務にかかわるオペレーションに近い部分は、クラウドやオフショアで対応することは困難である。
クラウドの提供する圧倒的なスケール・メリットを利用しつつ、クラウドの使い勝手を向上できるサービスやパッケージを提供ることができれば、それは大きなビジネス・チャンスになる。
例えば、アプレッソのDataSpider Servista。各社のクラウド・サービスが提供するデータ形式に対応し、オンプレミスのデータベースなどと連携するアダプタ群、サービスの高速実行を可能にする実行環境などを提供するデータ統合化ツールなどは、その一例である。
また、インターナショナルシステムリサーチのCloud Gateは、GoogleのGmailが抱えるセキュリティ上の不安を解消してくれるパッケージ・ソフトウェアである。
このように、クラウドの良さをうまく利用し、課題を克服したり、使い勝手を向上できるソフトウェアやサービスを提供するというビジネスは、十分にチャンスがあるだろう。
第二の変化を、避けることはできない。とすれば、その流れをうまく利用する道を探るべきである。
「まだ時間がある。すぐには変わりませんよ。」と言い続けて、もう何年になるだろうか。現実を見ず、避けてきた人たちは、今自分が、崖っぷちに立っていることに気付いていない。
そろそろ、自分の足元を見るべきだ。第二の変化は、あなたの常識を、もはや非常識なものにしてしまっているかもしれない。