「営業とは、どのような仕事だと思いますか?」
ある新入社員研修の冒頭で、そんな質問を投げかけてみました。
「営業の仕事は、エンジニアとお客様との仲介者です。」、「会社の顔となってお客様とかかわる仕事です。」、「お客様との信頼関係を築く仕事です。」という、まっとうな、そして、模範的な解答が返ってきました。
そんな回答の中に「営業とは、商品を売って、お金をいただく仕事です。」という、元気な男子社員の発言。その発言に、私は、ちょっと申し訳ない気持ちはありましたが、異議を唱えました。「営業は、商品を売ってお金をいただく仕事ではありません。」と。
彼らとしてみれば、とても意外だったようです。「えっ」という顔をして、一瞬、その場の空気が、固まってしまいました。
「確かに、形だけ見れば、営業という仕事は、お客様に商品やサービスを売ることで、その対価をいただく仕事です。しかし、お客様は、その商品がほしいわけではありません。自分の課題を解決したいのです。お客様は、課題が解決できるという「価値」に対価を支払っているのです。商品やサービスは、その価値を手に入れる手段であり、対価の対象ではないのです。」
営業の現場に立つと、ついこの本質を見失ってしまうことがあります。
ソリューションとは、お客様の課題を解決することであることは、頭では分かっています。しかし、気が付くと自社の製品やサービスをソリューションと読み替えている。そして、自分たちのノルマ(予算)達成という課題解決の手段としてしまっては、いないでしょうか。
また、お客様の話をろくに聞かず、自分たちの商品やサービスが、いかに優れているかを、お客様に滔々と語ってはいないでしょうか。
お客様の業務の現状を理解する努力もせずに、聞きかじりの理想論をまくし立て、いかにお客様は、その理想からかけ離れているかを説教してはいないでしょうか。
どれも、お客様の価値を高めるためではなく、自分たちの価値や自己満足のために営業をしてしまう。これでは、営業という仕事の本質から、どんどん離れてしまうことになります。
このような発想の根底には、お客様への愛情の欠如があるのかもしれません。
人が、人を心から愛するならば、その人のためにできることは何かを必死に考えるでしょう。そのために、一生懸命、相手を知ろうとするはずです。そして、相手の幸せを見て、こちらも同じ気持ちで喜びを感じることができるはずです。
お客様を成功させたい、お客様の課題を解決したい。そのために、何をすればいいのかを考える。そのために必要な情報や知恵を集め、お客様とも語り合う。そして、彼らが成功することを心から喜ぶことができる。また相手も感謝し、その感謝とともに対価をお支払いいただく。
そんな仕事ができれば、本当に幸せだと思うのです。
なかなか、できることではないと思います。しかし、そんな理想を描き、努力することは、誰にでもできるはずです。
これから営業の現場に出る新入社員。彼らだからこそ、理想を範としてほしいと思っています。現場に出て、それどころではない現実に直面することもあるでしょう。だからこそ、冷静になった時には、この理想をもう一度思い返してもらえればと願っています。
営業力とは、スキルだけではありません。このような精神を持ち続けることが、もっとも大切なことなのだと思います。そうすれば、お客様にも愛してもらえます。決して、離れることはないでしょう。それこそが、究極の営業力といえるかもしれません。
■ 研修 「営業活動プロセスとその実践ノウハウ」 開催します
ソリューション営業の即戦力化と成約率を高める取り組みについての研修です。
7月7日(水)・九段下にて開催いたします。
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「営業は、商品を売ってお金をいただく仕事ではありません。」
営業を”企業”と読み替えるべきものではないでしょうか?企業内での営業職の位置づけからすると「商品を売ってお金をいただく」で良いのではないでしょうか?そして、頂くお金は、仕入れに対してそれ相応の儲けを載せさせて頂く。これは企業という物体の’利潤追求’という存在価値そのものですから、誰からの非難も否定も受ける物ではないと思います。一方、その企業内でお客様との直接的接点である営業は、企業の行為が具現化される部門なのではないでしょうか?