「競合他社と同じものを売っている」。IT営業は、この現実と向き合っている。
言うまでも無いが、たとえブランドは違っても、PCサーバーといえば、CPUは、インテル、OSは、LinuxかWindows、データベースは、SQL ServerかORACLEである。
また、ネットワーク機器といえば、CISCOというように、どこのITベンダーも結局はお客様に同じものを売っている。 また、客様の要求条件やその時のテクノロジーの進展状況を考えれば、たとえ商品は異なっていても、結局は似たようなものを提案することになる。
クラウドの時代になって、モノはますます売れなくなるだろう。また、SaaSの普及は、ヒトを売る商売を今まで以上に難しくする。そうなると、同じものを売ることさえ、難しくなってしまう。
IT営業は、このような状況で競争しなければならない。 ここでひとつ疑問が生じるのだが、同じものを同じように説明し、提案すれば、差がつかないはずではないのか。しかし、結果は、必ず差がつき、どこかに決まる。それは、なぜなのか。 それは、「わずかな差の積み重ね」の結果だ。
商品の知識、訪問頻度、真摯な態度、お客様への気遣い、お客様についての理解、調整能力、特化した技術やノウハウ、組み合わせの巧みさ、選択肢の多さ、説明の精緻さ、説明のうまさ、提案書の美しさ・・・あげれば切が無い。
どれかひとつを取り上げて、決定的な差をつけることは、たぶん相当に難しい。結局は、ここにあげたようなことひとつひとつに関心を持ち、自らを磨き上げ、全体として大きな差を作る以外に方法は、無いように思う。
このような「わずかな差の積み重ね」が、お客様の中の「存在感を高めてゆく」ことになる。その存在感の大きさこそ、お客様の意思決定に決定的な影響力を与えることになる。
実は、ここに大きな発想の転換がある。このような差は、商品力や技術力だけでは決まらない。視点を変えれば、営業力が、存在感を高めてゆく上で、今まで以上に大きな役割を果たしてゆくことになる。 ここで言う営業力について、私は、次のように考えている。
「お客様のあるべき姿を実現するために、必要なプロセスを確実にこなしてゆくプロデュース能力」である。
お客様の期待は、モノやヒトなどの手段の提供ではない。結果としてこうなっていたいという「あるべき姿の実現」だ。この「あるべき姿」を実現するために、最適な手段を考え、その実現に必要なリソースを集め、タイムリーに提供し、進捗を管理する。お客様は、この一連のプロセスをこなすプロデューサーとしての役割をIT営業に期待している。
だからこそ、IT営業は、お客様に関心を払い、その実現のために精一杯努力する。つまり、なんとしてでもお客様にあるべき姿を実現してほしいという思い入れである。言い換えれば、お客様への「愛情」なのだと思う。 好きだ、好きだと口だけで言うのではなく、お客様の成功を願い、その実現に向けて、最善を尽くす。これは、何かひとつがうまくやればいいというものではない。ささいな事の積み重ねなのである。
この積み重ねにより、お客様は、あなたを「役に立つ」存在として、認めてくれるようになるだろう。
お客様の成功を願う「愛情」に裏打ちされた「役に立つ」存在となること。それが、お客様の中で、営業としての存在感を高めることになる。
このような話をするとITソリューション・ベンダーの経営者やマネージメントの多くは、「そんなことはわかっている」と答えられるであろう。しかし、現実には、「精神」は理解できていても、そのこれを実現するための具体的な取り組みをしているところは極めて少ない。
あるべき論を語りはするが、後は自助努力に任せる。それができないのは、営業のセンスや意欲の問題であり、組織や会社の問題ではないという。
これでは、営業は育たない、営業力は決して向上しない。
商品の発掘や技術力の向上に、時間とコストを割いても、営業を育て、営業力を強化することに力を注がなければ、いずれは、時代の流れの中で淘汰されてしまう。
「営業」という存在をいかに差別化の武器として強化するか。そんな戦略的な発想が、これからのITソリューション・ベンダーには、求められているのではないだろうか。
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