営業の仕事は、お客様に満足を提供することです。その大前提は、お客様が、何を期待し、商品やサービスを購入したあとで、お客様がどうなっていたいのかを具体的に想像すること。お客様の「あるべき姿」を見極めることなのです。
お客様の「あるべき姿」に到達できて、初めてお客様は、満足を感じることができるのです。
お客様が、何をほしいか、つまり「手段」ではなく、お客様が、結果として、どういう状態になっていたいのかという「あるべき姿」を実現する一番いい方法は、何かを追求する。
時には、それが、お客様の考えていた「手段」でなくても、そのほうが、より大きな価値をお客様が享受できるのなら、そのほうがいい。それを信じて、知恵を絞る。
これができなければ、お客様に満足を与え、感謝され、お金をいただくことはできません。
けっして、こちらの「売りたいもの、伝えたいことを」を一方的に伝え、買えと迫ることではありません。
お客様から、「それが、私のほしいものです。売ってもらえませんか?」とお願いされなければ、本物じゃない。それが、営業という仕事の「あるべき姿」ではないかと考えています。
しかし、お客様は、自分の抱える課題や悩み、こうしたいという考えをストレートに伝えてくれることは、まずありません。それ以前に、自分には、何が必要なのかがわかっていない。あるいは、整理できていないことのほうが、普通です。ですから、お客様は自分の「ことば」で、ほしいもの、あるべき姿を説明できないのです。
だから、お客様の話を聞きながら、私はいろいろなことを想像する。その人のおかれている立場、その人の話し方の特徴、仕事の内容や世の中の動き・・・。
まあ、そんなに理路整然と考えているわけではありませんが、言葉の裏側にあるものを読み取ろうと、話を聞きながら、必死に想像をめぐらせる。
すると、「なるほど」と、相手が、これから話をどう展開しようとしているのか、何を言おうとしているのかが、見えてくることがあります。
それが見えれば、あとは、相手が話したいこと、話そうとしていることに、うまく誘導してあげる。
「ということは、こういうことですよね。」
「ならば、こういう風にかんがえることもできるのではないですか?」
「なるほど、まとめるとこういうことになりますよね。つまり、・・・」
と導いてあげる。
すると、相手は、「そうなんですよ。まさに、そのとおりなんです。」と、いたく納得され、「つまりですね、私たちが、考えていることは、・・・」と自分で、自分達の状況や課題を説明してくれるようになるのです。
「ならば、こうすれば、いいじゃないですか・・・」と切り出せは、「それじゃあ、ぜひそれでお願いします。」となる。
・・・いつも、こんなにうまくいくとは限りませんが、基本は、こんな展開です。
営業の仕事は、お客様に「ほしい」という気持ちを起こさせることです。どんなにすばらしい商品であっても、お客様が、自分の「ほしい」に気づかなければ、ものは売れません。そのためには、こちらが語るのではなく、相手に徹底的に話をしてもらうことです。
人は、他人の話を聞くよりも、自分の話をするほうが、何倍も嬉しいものです。しかも、自分で話したことは、自分の心に刻み付けられます。
「そうか、自分に必要なものは、これなんだ。」と自覚します。ですから、自発的に購入したいと申し出ていただけるのです。
お客様は、納得し、満足し、そして、感謝してお金をお支払いいただくわけです。
営業の仕事は、商品やサービスについて、その魅力を伝えめことで、ほしいという気持ちを起こさせることだと考える人がいます。
それは、決して間違えでは無いのですが、それは、「そういう何かがほしい。」という気持ちを持っている相手にしか通用しません。つまり、火のあるところに油を注ぐ場合には、このとおりです。
しかし、そもそも、火が起きていない場合は、どうすればいいのでしょう。営業の仕事は、そんなお客様に火をおこすことも必要なのです。
営業ですから、数字が命です。その数字を達成するためにも、火をおこさなければなりません。しかし、その前提は、相手の成功を願う気持ちです。
相手の成功を願うことで、もっとこうすればいいのではないか、こんな取り組みをすれば、いいのではないかとアイデアが浮かんでくる。それをぶつけることが、提案なのです。
提案営業とは、そんな仕事なのだとおもいます。