日本型クラウドを考えるとき、もっとも心配なことは、ビジネス・プロセス・マネージメント(BPM)の問題だ。
日本人の素性として、業務をプロセスに分解し、整理、系列化することには、どうも向いていないように思う。
BPMが、なぜクラウドと結びつくかといえば、それは、SOAとの関係においてである・・・とくると、話がみえなくなったという人もいるかもしれないので、このあたりを整理しておこう。
いままでも述べてきたとおり、クラウドは、万能ではない。提供するサービスに違いがあり、得手不得手もある。
当然、利用する側は、それを使い分けるべきだ。そのとき、どのシステム機能を外部のクラウドに預け、どこを自社システムに乗せるかを判断しなければならない。
システムは、ビジネスを実現する手段だから、個々のビジネス機能に対応するシステム機能を実装する必要がある。
だから、まずは、ビジネス全体の流れを整理、系列化して、重複なきようにプロセスに分解する。そして、ビジネス全体をこれらプロセスの組合わせとして表現する。
このような、一連の作業が、BPMだ。
つまり、BPMとは、あるビジネスの範囲で、それをプロセスに分解、整理し、整列させることである。システムは、この分解された個々のプロセスに対応するように実装される。
各業務プロセスは、相互に独立性が高いほうが望ましい。
たとえば、[受注]-[出荷]-[受領]-[売上計上]という業務のプロセスが存在するとしよう。しかし、商品によっては、[受注]-[出荷]-[売上計上]-[受領]のほうが、都合がいい場合がある。もし、最初に決めた業務プロセスが、[受注]-[出荷・受領]-[売上計上]であれば、このような商品によるプロセスの組み換えが不可能となる。ということは、その都度、別々のシステムを作らなければならない。これでは効率が悪いので、プロセスは、その機能において重複無く、独立させなければならない。
この業務プロセスに対応して、システム部品を用意しておけば、必要に応じてその部品を組合わせ、あるいは、順序を変えれば、必要とするシステムを実現できる。システムが、汎用化された部品の組み合わせとして作られていれば、他のシステムでも利用できるので、開発の生産性は高まる。
このように、システムを特定の機能やサービスを提供する部品に分解し、他でも使えるようにインターフェイスを統一して、システムを開発する。これが、SOAのアプローチだ。
つまり、BPMで整理されたビジネス・プロセスに対応したシステム開発の方法が、SOAとなる。
これがなぜクラウドと結びつくかというと、このようにシステムが、機能やサービス単位で部品化されていれば、どこをどのクラウド・サービスに、どこをオンプレミスにという判断が容易になる。インターフェイスを標準化すれば、異なったクラウド・サービス、オンプレミス・システムを必要に応じて、最適に組合わせ、利用できるようになる。
また、各業務プロセスに対応したシステム部品が、クラウド上で汎用的なサービスとして提供されれば、その部分の開発は不要となり、すぐに利用できる。走すれば、必要なシステムを短期間に利用できる。また、業務が変われば、その部分を他に入れ替えることもでき、変更にも柔軟に対応できる。
クラウドが目指す理想像とは、こんなシステム形態といえるだろう。だから、クラウド-BPM-SOAは、切り離せない関係にあるのだ。
冒頭申し上げたとおり、このような業務プロセスの整理整頓については、欧米人の方が、どうも素性がいいのではないかと思っている。日本人にできないとは思わないが、残念ながら、個人技、職人芸を尊ぶ文化である。これは、システム開発の現場にも根強い。それは、それで、すばらしいこととは思うのだが、世界に向けてビジネスを発信してゆこうとすると、このBPM-SOAのアプローチが不可欠である。
そこをどう乗り越えればいいのか。それについては、また、次回。
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