この土曜日は、早朝から夕方にかけて、ある中堅ソリューション・ベンダーの営業研修で講師をさせていただいた。総勢21名のマネージメントが、休日を返上しての参加である。
この会社は、あるソフトウェア製品にかかわるシステム開発や技術サポートでは、定評がある。そのため、創業以来着実に業績を伸ばしてきた。
しかし、この不況である。開発案件が、かなりの割合を占めることもあり、通年ならこの時期になれば、年度後半の数字の見通しもたつのだそうだが、これが今年は、なかなか見えない。
多くの中堅SIerにありがちなことだが、営業専任者は、ほとんどいない。マネージャー・クラスが、現場の指揮をとるとともに、新規案件の獲得も任されている。
「この現状に対処するためには、彼らの営業力を強化しなければならない。」そんな経営トップの意向を受け、この研修の開催が決まった。
開始当初は、疑心暗鬼(?)の参加者もいらっしゃったのではないかと思う。しかし、途中、居眠りをする人は誰もいなかった。そして、夕方6時の終了まで、熱いまなざしがこちらをにらみつけている。その空気に気圧(けお)されこちらも自然と熱が入る。そんな、お互いの掛け合いの中で、何とか無事に研修が終了した。
「クラウドとは、単なるバズワードではない。オンプレミス(社内設置+社内運用)の相当部分は、クラウドに移行する。そうなったとき、ユーザーは、プロダクトへの関心を失う。そして、SaaSとして、機能・サービスが部品化されれば、特定のプロダクトに依存した開発案件は、確実に減少してゆく。」
「システム開発ゼネコン(大手SIer)や大手企業顧客は、コスト削減と品質の安定を求め、システム開発の工場化を求めてくる。この点では、インド、中国は、先進国だ。CMMI認証取得は、当たり前となりつつある。そういうところと、これから戦わなくてはならない。」
(09年3月現在、CMMI認証取得企業は、米国1272、中国745、インド409である。特に中国の伸びが著しい。わが国は、267と大きく引き離されている。)
「情報システム部門もコスト・センターとして、リストラの対象になりつつある。彼らを顧客チャネルとしているだけでは、先細りは目に見えている。部門を越える、あるいは新規企業から案件を発掘するしかない。そのことにどれだけの危機感を抱いているか。」
などなど、いろいろと僭越なことを申し上げた。そんな私の話を文句も言わずお聞きいただいたことに、お礼を申し上げたい。
間違いなく、システム・ビジネスにかかわるパライダムは、大きく変わろうとしている。当然今までどおりでいいはずが無い。その変化を一番身近に感じているのは、日ごろお客様に接する機会の多い営業担当者だ。
営業マネージメントは、そんな変化の予兆を感じ取り、危機感を持ち、具体的な施策を率先して行うべき立場にある。
営業マネージメントたるもの、日々の数字に追われ、どう上司に報告しようかと知恵を絞っているというのであれば、その肩書きを進んで返上したほうがいいだろう。そんな暇は本来無い。ましてや会社にとっても無用な人材だ。そんな自覚を持たなければ、これからさらに押し寄せるであろう、より大きな本流の変化に飲み込まれてしまう。
営業という仕事は、決して目の前にある事態に対処する仕事ではない。これからの時代の変化を先取りし、お客様を成功に導くガイドなのだという自覚を持つべきだろう。
休日を返上してのマネージメント研修。そんな危機感と何を実践すべきかについて、何か気づいていただければ、ありがたいと願っている。