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あるソリューション・ベンダーの営業会議での出来事。営業部長が持論を展開しています。
あるお客様への営業活動に関し、自分の知っているキーパーソンの名前を挙げながら、どのようにそのキーパーソンにアプローチすればいいのか、担当営業に語って聞かせます。提案の内容についてもいろいろとはなしをはじめました。クラウド・コンピューティング、仮想化、SOAの何たるかなどなど、およそ自分の知っている最新トレンドのキーワードを駆使し、提案内容の詳細にわたり担当営業を説得し始めたのです。そして、最後は、「営業というものはなぁ~・・・」と、営業論を語り始めました。
気がつけば、会議終わりの時間が迫っています。お客様へ出かけなければいけない営業は、「すいません。次がありますので・・・」と頭を下げて出てゆきました。営業部長の独演会も打ち止めとなり、そそくさと事務連絡と数字の話しをして、終わりとなりました。
あとで、当事者の担当営業に話を聞くと、「熱心なのは、わかりますが、何を言いたかったのか、結局のところよくわかりませんでしたよ。」とのこと。たぶん、私も含め、ほかのメンバー全員が同じ気持ちになったのではないでしょうか。
「あなたのためだから・・・」のつもりが、結局は自分ため、自己満足のために他人の時間を使ってしまっただけのことです。
彼は、どうしたかったのでしょうか?担当の営業を説得したかったのでしょうか。それとも、自分の知っていることを披露したかったのでしょうか。それにしては、あまりにも上っ面の知識で、素人の私でも、「ちょっと違うんじゃないですか・・・」といいたい場面が、しばしばでした。
人は、話を聞くよりも、話をするほうが幸せなものです。人を理解するよりも、自分を理解してもらいたい、知ってもらいたいという気持ちのほうが、強いものです。
営業が、お客様に熱心に話をする。それが悪いとは申しませんが、熱心のあまり一方的にこちらのことばかりを話している。何とか、説得しようとの思いなのでしょうが、そういうときほど、お客様の居心地は悪いものです。
「今回発表した新しいバックアップ・リカバリーの製品は、・・・・」と、1時間かけて機能や性能を説明し、購入を促す。そして最後に「いかがでしょうか?」と聞く。その1時間は、お客様にとって苦痛の時でしかないのです。
ならば、「山田課長のところでは、バックアップ・リカバリーにだいぶ手間をかけていらっしゃると聞きましたが、どうなんですか?」と聞けば、山田課長は、喜んで説明してくれるでしょう。
そして、「でも、そのやり方じゃあ、新しいサービスが始まったら、やっていけないんじゃありませんか?大丈夫ですか?」と聞いてみる。
すると、「実は、・・・」と実情を語りだした山田課長に、「もしかしたら、お役に立てるかもしれませんよ。ご興味あります?」と聞く。「そんな話しがあるなら聞かせてよ」となればしめたものです。そのときは、製品のすべてを語ってはいけません。彼の困っているところに絞って説明すれば、話しは10分で済むし、お客様が、語っている時間のほうが長いので、お客様の苦痛は、大幅に軽減されるはずです。
説得力は、営業の説明した時間に比例しません。むしろ、お客様の語った時間が長ければ長いほど、お客様は、説得されるのです。
コーチングに関連して「オートクライン」という言葉があります。もともとは、自己分泌という生理学用語です。コーチングでは、自分で自分に言い聞かせることをそう呼んでいます。
「あなたならできますよ」と他人に言われても、「そうは言いますがねぇ・・・」となる。それよりも、「自分ならできる」と自分に言い聞かせるほうが、はるかに意欲は高まります。これが、オートクラインです。
これと同じことで、お客様は、自分で話しているうちに、その気になってしまうものなのです。そして、それが気持ちいいのです。
件の営業部長も、他人を説得しているうちに自分に言い聞かせていた。いつも間にか、目の前の相手は消えて、自分に語りかけていたのではないでしょうか。きっと、とても気持ちがよかったことでしょう。
お客様に気持ちよくなっていただき、自ら買いたいという意思表明をしていただく。そのためには、何よりも、お客様にたくさん話しをしていただくように、その場を作り上げてゆくことが肝要です。
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