「機構設計用に1万台ほどの3次元CADシステムが導入されているが、ここから3千台を解約しようとしていますよ。」
設計システムのコンサルタントとから、ある自動車会社について、こんな動きを教えて頂きました。そこには、自動車の設計需要が、大幅に減ってきているという背景があるということです。これは、不況だからというわけではありません。自動車の作り方や製品トレンドが変わってきたためです。
まず一番大きいのは、プラットフォーム(台車)統一化の動きだそうです。プラットフォームの開発は、自動車の性能を左右する大きな要素であり、今までは車種毎に最適化された設計開発が行われていました。そのため、種類も多く設計開発に膨大なコストをかけていたそうです。しかし、高い安全基準への適合や低燃費への対応を今まで以上にもとめられることとなり、そのコストが自動車メーカーにおおきな負担となってきているそうです。
このような理由から、プラットフォーム統一化の動きが加速しているそうです。つまり、車種が違ってもプラットフォームは同じものを利用し、上にのせるボディーを変えることで車種にバリエーションを持たせようとのこと。この動きは、自動車業界の再編と相まって、メーカーを越えた統一が進み始めています。その結果、設計需要の低下に拍車がかかっているそうです。
また、電気自動車の普及も3次元CADの需要を大きく減らすことになるとのこと。というのは、モーターがひとつひとつのタイヤと直結する構造となると、エンジンから動力をタイヤに伝える機構が不要となります。そのため、機構系の設計が大幅に簡素化されることから、需要も減ることが予想されているそうです。
3次元CADビジネスに大きく依存してきた一部のシステムベンダーにとっては、大変なことです。ライセンス収入が大きく減るだけではなく、それに付帯したハードウェア需要の減退、保守サービス費用。周辺開発に伴う請負や委託、CADデータの入力委託など、その影響は広範にわたります。
このような需要構造の変化にどう対応するか。経営の根幹にも関わる大きな課題となっています。
昨日のブログでSierやITベンダーの中抜きについて書きましたが、これも3次元CAD需要の減少と同様に、不況が原因ではありません。お客様のニーズが、大きく変化したからです。
この変化は、今までのトレンドの延長上にある変化と言うよりも、パラダイムの変化と言うべきでしょう。つまり、今まで自分たちが乗っかっていた軸から、あたかも別の軸に飛び移ったようなモノかも知れません。ですから、同じ視点でこの先を予想し、戦略や施策を考えても、役に立たないかも知れないのです。
過去の歴史を振り返れば、不況はこのようなパラダイムの変化を加速します。景気がいいときは危機感もあまりなく、車も時速40Kmの制限速度を守りながらある目的地に向かって真っ直ぐ走っていました。しかし、いざ大災害が起こり、そこから逃れるためには、目的地を変えなければなりません。そのため大きく進行方向を転換をする必要があります。しかも、大災害はどんどんこちらにも迫ってきます。時速120kmもの猛スピードで移動しなければならないのです。
「業績が悪いのは不況のせい」と本当に言い切れるでしょうか。その裏側では、お客様に大きなパラダイムの変化が起こっているのではないでしょうか。もしかしたら、お客様自身もそのことに気づいていないかも知れません。
「課題は変化の中にある」、「課題をお客様と共有することからソリューション営業の仕事は始まる」。
そんなことを具体例を挙げながら研修では、話をしています。昨日、今日のケースでは、この大きな変化は見える形で目の前に存在しています。しかし、見えるようになるまでには、もっといろいろな形で兆候が現れていたのではないでしょうか。私たちも、お客様もその変化を見落としてはいないでしょうか。
お客様は、パラダイムの変化に対してもソリューションを求めています。こんな時こそ、ソリューション営業である私たちの出番です。
お客様の課題を解決するという私たちの仕事の原点を自覚し、この変化にどう対処するか。ITができることは、少なくないはずです。
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