お客様から、こんな電話がかかってきました。
「斎藤さん、今日請求書が、送られてきたんだけど ・・・ 分割してほしいとお願いしたよね。一本にまとまっちゃってるよ。今日中に経理に持ってゆかなければ、間に合わないんだけど。直ぐに何とかしてくれないかなぁ ・・・」。
お客様の声は、冷静です。と言うよりも、冷たさを感じます。営業の斎藤さんは、それに応えて、
「山田課長、すみません。直ぐ対応しますが、FAXでなんとかなりませんか ・・・?」
さて、あなたは、この対応をどう思いますか?
お客様は、斎藤さんに何かを依頼しているわけではありません。クレームしているんです。そんなこともわからない不感症の営業が、増えていると聞きます。はやりの言葉で言えば、KY営業と言うべきでしょうか?
山田課長は、明らかに怒り心頭です。大人ですから、冷静に対応しようとしています。「なんとかしてくれない!」は、依頼ではなく「なんとかしろよ!」と怒りをぶつけている。そんな相手の気持ちも分からずに、電話越しに「すいません」のひとこと。しかも、FAXですませようとしています。
私が、山田課長なら、「斎藤さん、あんた何考えているんだ。自分のミスにも関わらず、自分の都合ですませようと言うわけですか(怒)」となるでしょうね。
たぶん、斎藤さんは、以前から同じような応対をしていたのでしょう。普段、ちゃんとやっていたなら、山田課長も最初から「FAXで送ってくれればいいから」と救いの手をさしのべてくれていたかもしれません。
先日、こんなことがありました。あるSIerの営業さんとその会社の社食で昼食を取っていると、その同期と思われる営業がやってきました。すると彼は、「やあ、田中(仮名)、久しぶり。どう、元気?」と話に割り込んで来るではありませんか。こちらは胸にゲスト・バッチをしています。彼のお客様かもしれません。そんな、相手を目の前にして、会話に踏み込んでくる気働きのなさにあきれてしまいました。田中さんも、まいったなぁという顔をしているのですが、かれは、お構いなしです。そこで私は、ちょっとお手洗いにと、席を立つことにしました。
もどってくると、割り込んできた営業さんは、食堂の端に座って、何もなかったかのように食事をしていました。田中さんは、「斎藤さん、本当に申し訳ありませんでした。」と深々と頭を下げてくれました。私は、思わず「こいつ、やるじゃん」と心の中で拳を握りました。
こんなこともありました。入社2年目の営業さんと私、それにちょっと気の弱そうなお客様ふたりの4人で昼食をしていました。その営業さんは、食事の最中でもありながら、自社製品やサービスのことなど、いろいろと話をしています。仕事熱心なことは、いいことですが、食事の最中には、どうかと思います。
ただ、ここまではまだ許せるのですが、彼があまりに熱心に話をするものですから、彼の食事がなかなか終わりません。こちらは、もう食べ終わり、お茶などすすっているのに、まだ半分残っている。気の弱そうなお客様です。彼の話に相づちをうってはいるのですが、本音は、早く終わりにしてくれよ!でしょう。疲れた顔をしています。しかし、その営業さんの勢いは止まりません。私は、彼に、「それじゃあ、先に会議室に戻っているよ。連絡もしなければならないし。」と言いながら、お客様と一緒に席を立ちました。彼は、意表をつかれたように「はっ、はい ・・・」と応えて、再び食べ始めました。
「斎藤さん、大丈夫、この見積書、ちゃんとうちの部長とも相談しておくから。」
「吉田課長、私から部長に説明しておきましょうか?」
「大丈夫、大丈夫、彼も忙しいし、時間を見つけてこっちでやっとくよ。」
「ああよかった、これで今月末の受注は、問題なしだ:)」と喜んで営業課長に報告しているようでは、まだまだ未熟です。吉田課長は、ほんとうにやってくれる保証はありますか?もしかしたら、あなたがあまりにしつこいので、その状況を逃れたいと思った吉田課長が、こんな対応したと言うことは考えられないでしょうか?
以前「お客様に騙されない」でも申し上げたことですが、表から見える状況だけを理解して判断すると思わぬ結果になりかねません。
私も新人営業の頃、提案や見積も「完璧」にこなし、あとはお客様からの連絡を待つのみと思っていたのですが、ふたを開ければ、競合他社に決まっていたという苦い経験があります。
後で分かったことですが、競合他社は、担当者ではなく、彼の上司である部長、その上の本部長にもアプローチし、担当者からの上申にストップをかけさせていたことが分かり、自分の甘さを痛感したことがあります。
営業の不感症。これは、若手に多い症状です。中には、いい歳して、未だに不感症の営業はいます。想像力の欠如と申し上げてもいいかもしれません。お客様の立場に立つ、お客様の視点で、お客様の気持ちになって ・・・ そんな言葉が、むなしく響きます。
経験を積ませることも大切ですが、それでは貴重なビジネス・チャンスを失うことや、いままでお客様と培った信頼関係を損ねることにもなりかねません。いずれ分かるだろうでは、被害が増すばかりです。
やはり教育です。ここに上げたようなケースを示しながら指導する、あるいは、先輩や上司が、気がつけば直ぐ指摘する。それができるような部下との関係を築くこと、そして指導の方針をしっかりと持っておくことが必要ではないかと思います。
あなたは、大丈夫ですか?あなたの部下が、不感症に感染してはいませんか?