「努力する人は希望を語り、怠ける人は不満を語る」とは、井上靖の言葉です。
営業ですから、売上が上がらないこともあります。目標どおりプロジェクトが進まないこともあります。そんなとき、つい不満を漏らすことは、誰にでもあることです。
まあ、ここまでは、まだ許されることですが、「XX部長は、ほんとうに物分りが悪くて、こまったものです。」とか「メーカーの段取りが悪くて、間に合わなかったんですよ。」などと、お客様やパートナーに責任を転嫁し、どれほど自分が不満に思っているかを語る人が言いますが、そういう人には、いい加減頭にきます。
お客様に理解していただけるような伝え方をしてこなかったことや自分の段取りが悪かったことを棚に上げて、仕方がなかったと言い訳をする姿は、本当に哀れです。「私には、営業としての品格が欠如しています」と自ら公言しているようなものです。
一方、課題山積の事実を素直に認めつつも、「こうれば、解決できると考えています。」、あるいは、「こんな取り組みをしてみようと思います。そうすれば、きっとうまく行くと思います。」と、今後の取り組みに対して、常に希望を持って、計画を示してくる営業がいます。そういう人は、なんとしてでも応援して成功させてあげたいと思います。
売り上げが上がらない、新規案件がなかなかまとまらない、新規顧客開拓が進まない ・・・。こんな時期だからこそ、私たちは、その現実に率直に向き合わなければなりません。そんなとき、一歩下がって、自分はどちらの言葉を語ろうとしているのかを問いかけてみては、どうでしょうか。
不満を語ろうとしているならば、まだまだ努力が足りないということ。希望を語ろうとしているならば、目標達成に確実に近づいているということ。
ものごとがうまく行かないとき、人は、何とかしなければと、あせる気持ちを抱かずにはいられません。そんな時はどうしても、わが身の不遇を嘆きたくなるものです。
景気の悪さや要領を得ないお客様を担当した不運、できない上司を持ったことの不幸 ・・・。
しかし、数字が上がり、業績がよく、順調なときは、こんなことは、瑣末なこととして、たいした不満もなかったはずです。
人間は何とも都合のいいものです。だからこそ、今の自分の状態を客観的に見つめてみるためにも、どちらの言葉を語ろうとしているかを見直してみるというのも、時にはいいことかもしれません。
ところで、営業である皆さんにとっては、今年のビジネスをどうして行こうかと、計画に頭を悩まされている方も多いのではないかと思います。
当然、会社としては、達成目標を皆さんに提示し、既に予定されている売上金額の積み上げと目標とのギャップを埋めるための「ギャップ・フィル・プラン」を求められているはずです。
ささやかな提案なのですが、そのギャップ・フィル(予定されている売り上げと達成目標の間を埋めること)すべき数字の10倍を達成するためには、どうすればいいかを考えてみては、いかがでしょうか。
つまり、目の前にある、あるいは、ありそうな話を積み上げたところで、所詮は数字のつじつま合わせになってしまい、現実味などありません。
余談ですが、以前お手伝いをさせていただいたあるSIerのベテラン営業の方が、
「こんな数字なんか、所詮できないんだから、適当に数字を埋めるしかないでしょう。そもそも、こんなできもしない数字を設定すること自体、経営者の良識を疑いますよ。」
と思いっきり不満全開でした。そんな話を聞きながら、彼の営業としての良識を疑ったことは、いうまでもありません。
閑話休題。そこで、発想の転換です。どうせ現実味などないのなら、思い切って、大風呂敷を広げ、大きな視点で自分の仕事の進め方を見直してみるというのも、一つの方法ではないかと思うのです。これは、決して冗談で申し上げているつもりはありません。
大きな視点でビジネスを考えると、今まで同じ仕事のやり方では、到底実現できません。新しい発想、新しい仕事の進め方、新しい商材を考えなければなりません。そこに自分だけではなく、SEさんやサポートの人たちの知恵を結集して、いろいろと議論し考えてみてはいかがでしょう。
このブログでもたびたび話題にしていますが、「To Be(目標達成後の姿)を決めてから、To Do(目標達成のためのやり方)を考える」ということです。順番を逆にしてはいけません。
まず到達点を決めることからはじめる。そこに至る手順は、いろいろあるし、状況が変われば、その手順や手段、つまりTo Doは、変わります。いや、むしろ臨機応変に変えるべきなんです。でも、To Beを変えることは、簡単にやってはいけないことです。
そんな考え方で、10倍のギャップ・フィル・プランを考えてみてはいかがでしょうか。思わぬ商機が、みつかるかもしれませんよ。