以前のブログで「ソリューション営業にとって最も必要とされる能力は想像力です」と書きましたが、この問題もまさにその能力を必要としています。
それでは、どこに間違えがあったのか、考えてゆきましょう。
■ 間違え(1) キーパーソン役割に応じた行動していない
研修でもご紹介しましたが、キーパーソンには、情報提供者、影響力保持者、意思決定者、承認権限者の4つの役割があります。この担当者Aさんは、どれに該当するのでしょうか?
実は、彼は窓口であり、強いて言えば情報提供者程度の役割しか担っていません。意思決定や決裁、あるいは、機器や技術の選択などへの影響力も持ち合わせていないようです。
情報提供者であるAさんは、誰の意向で動いているのか、そして、導入の意思決定に誰が関わっているのかを見極めようともせず、だだAさんの言うとおりに行動していました。これでは、どのような意思決定に関わる動きが行われているか、全く情報が得られません。
情報提供者であるAさんは、あくまできっかけです。彼をきっかけとして、影響力保持者や意思決定者彼である彼の上司、あるいはPCを業務で必要としている販売の現場責任者にアプローチし、彼らと直接的な関係を築くべきです。
■ 間違え(2) 真のニーズ/To Beに迫っていない
Aさんによれば、PC導入の目的は、「営業担当者が商談の現場で見積金額を即座に確認できたり、在庫確認や注文処理をその場で行えるようにすること。」です。しかし、それが真のニーズ/To Beなのでしょうか?
そもそも、なぜ営業担当者が商談の現場で見積金額を即座に確認したり、在庫確認や注文処理をその場で行えるようにする必要があるのでしょうか?インターネットの時代です。営業がお客様のところへ出向いて商談をしなくても、お客様が自分でWebから在庫を確認し、その場で注文する方法もあるはずです。あるいは、電話でのダイレクトマーケティングや注文受付の仕組みを導入すれば、営業や受注業務にかかるコストを大幅に低減できるかもしれません。
なぜ「営業担当者が商談の現場で見積金額を即座に確認できたり、在庫確認や注文処理をその場で行えるようにすること」が必要なのかを一切問うことなく、担当者であるAさんの言うとおりに対応している。
担当者のAさんにとっては、営業であるあなたはすぐに言うとおり対応してくれる“いい人”です。しかし、あなたの行動は、会社の真のニーズ/To Beに応えているとは言えず、意思決定や決裁に際しては、なんら影響はありません。
間違え(1)でも申し上げましたが、より影響力の大きなキーパーソンに直接アプローチし、裏付けをとるとともに、真のニーズ/To Beを把握し、対応すべきであることは、言うまでもありません。
■ 間違え(3) キーパーソンにアクセスできるせっかくのチャンスを活かしていない
単発の少額取引ならばともかく、将来大きな取引になる可能性があるわけです。そのような大切な案件で見積書の提出を宅配便だけですましてしまうという発想は、ことの重大さ、優先順位の付け方を間違っています。
お客様に会ってくれとお願いしてもなかなか会えないことはよくあります。しかし、今回の見積書や注文書の提出は、お客様からのご要望です。このチャンスを活かさない手はありません。書類をAさんに持参すると同時に、「是非上司の方にご挨拶だけでもさせて欲しい」と言うべきです。それをきっかけに、上位のキーパーソンへのアクセス・チャネルを切り開くくらいの図々しさが必要です。
■ 間違え(4) ソリューションになっていない
ソリューション・ビジネスとは、お客様の課題を解決するビジネスです。お客様にとって課題が解決できるならば、あなたの会社の製品である必要はありません。営業であるあなたとっては、自社の製品を何とか売らなければならないという課題に直面していますから、それさえ売れれば、“あなたの”ソリューションにはなるかもしれませんが、お客様のソリューションになるとは限りません。
携帯電話は確かにあなたの会社の製品ではありません。しかし、どの機器がいいのかを推奨し、せめて業者を仲介するとか、手続き等は一括して引き受けるなどの、便宜も合わせて提案すべきでしょう。それができて、始めてお客さまが求めるソリューションという商品が完成します。
些細なことですが、仮に物品の販売だけであっても、競合他社と価格競争になったとき、所詮製品価格で大きな差別化をすることはできません。従って、お客様にとっては、どちらでも良いわけで、少しでも楽できる、あるいは、融通が利くところに依頼したくなるのは心情です。そこまで、考えて行動すべきです。
■ 間違え(5) 営業活動プロセスに従った行動をとっていません
「営業活動プロセス」とは、営業活動の手順です。その手順は、お客様の意思決定プロセスと密接に結びついています。
お客様は、欲しいと思ってものをすぐに買うわけではありません。公式、非公式な手順や手続き経て、意思決定、稟議決裁、導入、支払となるのです。そのようなお客様の意思決定のプロセスを先回りして、必要な対策を事前に打っための指針が営業活動プロセスです。
営業であるあなたは、担当者Aさんの連絡や情報だけをたよりに行動しています。なんら、彼の上司や業務部門などのキーパーソンに自らアプローチすることなく、待っていただけです。その間、お客様の中では、意思決定のためのいろいろなプロセスが進んでいるはずです。それを予測せず、且つまた確認もせず、先回りの行動もしていません。
B社の動きも掴んでいませんでした。B社は、きっとあなたの情報を掴み、もっと有利な条件や便宜を図ったのかもしれません。しかし、もし営業であるあなたが要所要所のキーパーソンを先回りして押さえ、先手を打って彼らのニーズを聞き出して、適切な対応をしていたなら、B社に入り込まれる余地を与えなかったかもしれません。
まだまだ、つっこみどころはありそうです。皆さんは、いかがでしたか?
研修でお伝えしている「営業活動プロセス」とは、皆さんが営業活動をする上で、お客様の状況を予測するためのフレームワークであり、必要な対策を事前に打っための指針です。
是非「営業活動プロセス」をうまく使って、お客様を先読みし、先回りできる営業活動をして頂ければと願っています。
やはり、難しいです。
私にとっては、特に【真のニーズ/To Beに迫っていない】というのが、普段陥りやすい”間違い営業”だなぁ、と思います。
このような”間違い探し”が冊子でまとまっていて、週1問ずつぐらい解いているのを続けていると、かなりよい勉強になりそうですね。
当然、実践にで色々試していかないと、自分のものにはなりませんが。
ありがとうございました!