「お客様のご期待をしっかりと受け止め、確実に応えてゆくこと。私たちの強みは、そこにあると思っています。」
グループ全体で2800名を擁するJBCCホールディングス株式会社 代表取締役社長、山田隆司氏は、自社の強みをこのように表現されました。
「我が社の強みは、中堅中小企業を中心に直接のお客様が約2万社あります。そういうお客様にITの専門家は少なく、これまでも私たちにお任せいただいてきました。この状況は、これからも大きく変わることはないと考えています。」
クラウドの普及でテクノロジーのコモディティ化がすすみつつある今の時代、この考え方が、これからも通用するのでしょうか、もっと専門領域に特化して、尖った強みを築かれようというお考えはなのかと伺ってみました。
「私たちは、早い時期から3Dプリンターに関わってきましたし、電子カルテなど医療分野でも強みを持っています。しかし、その分野が、グループの経営に大きく貢献してくれるにはもう少し時間がかかる。それよりも、まずは、現状の2万社というお客様のニーズにどう応えてゆくかが優先です。」
しかし、従来同様の製品販売や受託開発で、事業を伸ばしてゆくのは、容易なことではありません。
「私たちは、これまで、情報システム部門や情報システム担当者にアプローチしてきました。しかし、生産性やコスト削減の役割を担ってきた彼らには、もはや、やるべきことも一巡して、新たな需要を見出せません。そこで、業務部門へのアプローチを強めています。」
しかし、これまでシステム部門にしかアプローチできなかった営業が、簡単に業務部門に行けるようになるとは思えません。
「そのとおりです。そこで、“総出作戦”をはじめたんですよ。」
“総出作戦”とは、所属や役職にかかわらず、お客様の経営者や業務関係者にリレーションがあったり、話ができる人たちを営業現場に投入したりして、案件発掘の切っ掛けを掴もうという取り組みだそうです。経営幹部であっても例外はありません。
「業務の現場には、情報システム部門に行っているだけでは分からない課題やニーズが山のようにあることが分かりました。また、ITを成長や競争優位の武器に使いたいとも考えています。私たちは、ここにまだ手つかずのブルーオーシャンがあったことに、いまさらながら気付いたんです。」
でも、これまで同様の人月積算の仕事では、業務の現場に受け入れてもらえるとは到底思えません。
「アジャイル開発の手法と超高速開発ツールを使って、短期間、低コスト、高品質のシステム開発を行っています。現場の声を直接聞き、現物で確認しながら、現場の人たちと一緒に進める開発ですから、できあがりの満足度は、極めて高いものになります。」
業務の現場に行くとは、単に営業のことだけではなかったのだと分かりました。現場のニーズにしっかりと応えられる手段があったからこそ、“総出作戦”が実を結ぶことになったようです。
「AWSやIIJ GIOのクラウドを使ってお客様のご要望に応じたシステム基盤の構築や運用を受託するサービスもはじめています。そのほとんどが、新規のお客様であり業務部門からの直接のお取引になっています。案件規模は大きくはありませんが、粗利は高く、従来型の受託開発を越えています。しかも、ストック・ビジネス(継続的に収益を上げ続けるビジネス)ですから、着実に積み上がってゆきます。機器の販売を前提にしていると、リース更改のタイミングで他社との競争になり、それが利益を押し下げるひとつの原因でもありましたが、クラウドならそんな競争は起きません。ほぼ継続的に使い続けてもらえるので、収益の安定確保にもつながっています。」
しかし、クラウドは案件単価も下がりますから、売上や利益といった業績を上げにくいはずです。営業は、短期的に業績を上げやすい物販や従来型の開発案件を優先するのではないのでしょうか。
「クラウドの営業部隊を別組織にしました。そして、物販や従来型の受託開発案件を担当する部門とは、業績評価基準を変えたんですよ。これは現場のモチベーションを上げることに大いに役立っています。」
約2万社の顧客ベースを活かして経営や業務の現場にアプローチできるのは、50年にわたるこの会社の歴史の積み上げがあったからなのでしょう。その資産を活かして「お客様のご期待をしっかりと受け止め、確実に応えてゆくこと」をアジャイル開発と超高速開発ツールという最新の武器で磨きをかけて、業務現場の満足を確かなものにしています。そこで案件単価が安くなっても、今度はクラウドで長期安定的に利益を上げ続けることができます。そんな物語ができつつあるようでした。
「アジャイル開発と超高速開発ツールを使うようになって、シニアの技術者が活躍できるようになりました。想定していなかったことですが、社員の平均年齢が上昇している我が社にとっては、ありがたいことですよ。」
なるほど、現場での場数を踏んでいるエンジニアだからこそ、業務の現場の人たちとの会話もスムースにでき、要件も整理できるわけです。そして、その要件を整理するだけでシステムを構築できる超高速開発ツールだからこそ、シニアが活かされると言うことのようです。社員の高齢化に頭を抱えるSI事業者にとっては、ひとつの選択肢になるのかもしれません。
新規事業の開発や新規顧客の開拓を求める余り、既存の事業資産を負の資産と捉えているSI事業者も少なからずあります。しかし、JBCCを中核とするJBグループでは、むしろ積極的に自分達の事業資産、すなわち、2万社の既存顧客、50年の歴史に裏打ちつれたお客様との人間関係、そして、場数を踏んだベテランのエンジニアを、アジャイルや超高速開発、クラウドといった新たな手段で再武装させることで、新たな価値を生みだす事業資産へと変えようというのです。派手さはありませんが、これだけの歴史と規模を抱える企業だからこそ、それを強みにできるのでしょう。
業務の現場と最新のテクノロジーを結びつける。そんな、ITビジネスの原点を垣間見た気がします。
「最新のITトレンドとビジネス戦略(全326ページ)」を最新版に更新しました。新規追加のプレゼンテーションは6枚ですが、新しい解説文を24ページ追加し、全てロイヤリティ・フリーとさせて頂きました。ご活用下さい。
テクノロジー編【2015年5月版】(271ページ)
新規ページを6ページ、最新の解説文を24ページ追加しています。
・これからのオフィスインフラを追加しました。
・パブリッククラウドの適用リスクを追加いたしました。
・コレ一枚でわかるIoTとビッグデータを改訂しました。
・IoTとモノのサービス化を追加しました。
・産業革命の歴史を追加しました。
・プレゼンテーション(24ページ)の「ノート」に最新の解説文を追加致しました。こちらも合わせてロイヤリティフリーでご活用下さい。
ビジネス戦略編【2015年5月版】(55ページ)
新規追加はありません。誤字脱字の修正、解説文の訂正を行いました。
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「情報と処理の基礎は教えているが、クラウドやIoT、
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目次
- 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
- 第1章 クラウドコンピューティング
- 第2章 モバイルとウェアラブル
- 第3章 ITインフラ
- 第4章 IoTとビッグデータ
- 第5章 スマートマシン