「優秀といわれる営業は、どうも一匹オオカミで動き回る人間が多い。ほんとうにこれでいいのでしょうか?」
ある大手SIerの人材育成担当者から、こんな話をうがいました。「優秀といわれる営業」・・・本当に、こういう営業を優秀といっていいのでしょうか?私には、合点がゆきません。
「一匹オオカミ」とは、人の助けを借りず、自発的に行動を起こします。ベテランであり、お客様との信頼関係もしっかりとできていて、手堅く仕事を取ってきます。その一方で、部下や後輩の面倒は、あまり見ない・・・というか、未熟な連中に任せていたら効率が悪い、面倒だから自分でやってしまったほうが早い。そう考え、一人で行動する場合が多い。こんな人物像が、イメージされます。
しかし、見方を変えれば、現実逃避の結果として、孤立している人物とも見ることができます。
自分のこれまでの経験や人間関係に自信があり、その実績と信頼関係に頼って仕事をしている。新しい技術や社会のトレンドには関心が薄く、お客様の経営や事業戦略へのかかわりにも消極的。ただただ職人的な人間関係の寝技に頼っている。これは、自分にしかできないことと信じて疑わず、お前たちにはどうせわからないことだからと一緒に仕事をすることには消極的で、まわりからも近寄りがたい。そんな孤立した存在が、「一匹オオカミ」なのかもしれません。
お客様との人間関係は、確かに頼りになります。いざというときにお願いすれば、「おまえが、そこまで言うならしょうがないなぁ」と仕事をくれることもあります。しかし、それは景気がいい時の話。リーマンショック以来、仕事量そのものが減少し、出せる仕事もありません。また、経営者は、少しでもコストを抑えるために、必ず複数企業との比較検討を求めるようになりました。今までの実績や信頼関係という武器が、もはや使えない時代なのです。
オフショアやクラウドは、お客様の選択肢を多様化させ、意思決定をますます複雑なものにするでしょう。お客様自身も、提案する側も何が最適解かを見出すことが難しい時代となります。
システムのインフラは、コモディティ化し、開発や運用には、クラウドやオフショアに置き換えるという選択肢が加わります。
このような時代の変化の中で、お客様の意思決定の基準やそのプロセスも変わり始めています。これまでは、システム部門にゆだねていた意思決定が、業務に責任をもつ部門の影響をこれまで以上に受けるようになります。
クラウドやオフショアの普及は、お客様の期待をシステム技術から業務への対応力へシフトさせるでしょう。
業務分析力、業務プロセスの抽象化や企画設計の力、各種サービスの多様な選択肢の中から最適なものを選別できる目利き力、国をまたがるプロジェクトを管理できる力などが、要求されるようになるでしょう。
このような変化に対応するためには、お客様の業務や経営、そして、最新の技術や社会のトレンド、そしてその要点を体系的にとらえ、提案に活かせる能力が、求められます。
当然、このような提案やプロジェクトの運営は、もはや職人技を自認するベテランの営業職だけでは手に負えるものではありません。トレンドを読み、お客様を知り、プロジェクト全体を見渡し、自社や他社を問わない最適なサービスや製品、そして、人材の組み合わせを作り上げる力が必要です。つまり、一個人の知識や能力では、もはやどうしようもないのです。
お客様個別の課題を解決する最適な組み合わせを作り上げるプロデューサーとしての能力が、求められているのです。
営業活動とは、商品やサービスを販売し、お金を頂くことではありません。お客様の価値を高め、その価値の一部を対価として頂くことです。商品やサービスは、お金を受け取る手段にすぎないのです。
かつては、お客様の要求に応えられる力が、重宝がられました。それがお客様の価値を高める手段でもありました。しかし、お客様自身が、解決策を模索している時代にあっては、その解決策を提案し、その解決に必要な一切をプロデュースすることが求められているのです。
一匹オオカミや職人営業に、もはや未来はありません。過去の栄光は、勲章にすぎません。新しい時代にふさわしい「優秀な営業」とは、過去の基準での優秀ではないのです。
また、営業力を営業職の能力ととらえるべきではないことにも気づくべきです。エンジニアも含め、会社として、組織としての営業力の在り方を模索すべきでしょう。時代は、今、そんな変化を求めているのです。
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とても魅力的な記事でした。
また遊びにきます。
ありがとうございます。