「AIが営業の仕事を奪う」

このフレーズを耳にして、不安を覚える人は少なくありません。確かに、製品情報や課題解決の方法を調べるだけなら、ChatGPTのようなAIツールを使った方が、人間よりも遥かに速く、正確でしょう。

しかし、ここで視点を少し変えてみてください。AIはあなたの「敵」ではなく、あなたという人間の能力を数倍、数十倍にも拡張してくれる「最強の味方」になり得る存在だとしたら?

拡張スーツを纏(まと)うということ

想像してみてください。偶然手に入れた力で、悩み多き普通の若者からヒーローへと変貌を遂げた『スパイダーマン』のピーター・パーカーを。あるいは、『ガンダム』という強力な機体に乗り込むことで、自身の潜在能力を極限まで引き出し、歴史を動かす力を持ったアムロ・レイを。

AIとは、まさに彼らが手にした「力」であり、「機体」なのです。

あなた自身を無理に変える必要はありません。AIという「拡張スーツ」を身にまとうだけで、これまで「自分には無理だ」と諦めていた壁を、驚くほど軽やかに飛び越えられるようになります。

文章を書くのが苦手でも、データの分析ができなくても、外国語が話せなくても構いません。その不得意な部分は、拡張スーツであるAIが補ってくれます。

自分にはない能力を手に入れ、誰も想像しなかった未来を切り開く。その主役は、AIではなく、スーツを纏った「あなた」なのです。

月額数千円で雇える「最強のチーム」

さらに、AIを使うということは、自分専属の優秀なパートナーを何人も雇うことと同じです。

あなたは、どんなことでも気兼ねなく相談し、議論し合える相手を持っていますか?

AIは、24時間365日、文句ひとつ言わずにあなたの相談に乗り、理不尽な修正要求にも応じ、時にはあなたの知らない知識を授けてくれる「優れた教師」にもなります。

もし、これほど優秀なスタッフを人間として雇えば、莫大な人件費がかかるでしょう。採用も教育も大変です。しかしAIなら、月々わずか数千円、飲み会一回分程度のコストで、この「最強のチーム」をあなたの部下にできるのです。

もはや、たった一人で歯を食いしばって頑張る必要はありません。この最強のチーム(AI)を従え、拡張スーツ(AI)を纏った状態で、改めて営業という仕事に向き合ってみましょう。そこには、これまでとは全く違う景色が広がっているはずです。

古い営業スタイルの終焉と、顧客の迷い

さて、強力な武器を手に入れた私たちが直面しているのは、「何が正解かわからない」世界です。

これまでのSI/IT業界の営業は「何を売るか」を軸に動いてきました。「この製品で解決できます」「ご予算はこれくらいです」。こうした「モノや工数を売る」スタイルは、顧客自身が課題を明確に定義できていた時代には有効でした。

しかし今は、DX、AI、サステナビリティなどが複雑に絡み合い、変化の速度が劇的に上がっています。多くのお客様は、「自分たちが本当に解決すべき課題は何か」さえも分からない状況に置かれています。

先日、ある製造業のCIOが漏らした言葉が象徴的です。

「正直、システムを作るだけなら、うちの若手がAIを使って大半はできてしまう。私が本当に困っているのは、『この先10年、どんな技術をどう活用して生き残るべきか』という道筋が見えないことなんです。ITベンダーに相談しても、製品の話ばかりで、まともな答えが返ってこないのが本当に残念です」

これは、単なるモノ売り営業への「決別状」であり、同時に新たな役割への「招待状」でもあります。

新たな営業の姿:「提言営業」という教師の役割

AIという最強のチームを従えたあなたが、お客様に提供すべき価値。

それは、「お客様自身も気づいていない課題を発見し、解決策を提言する『教師』としての導き」です。

お客様の要望を聞くだけの御用聞きではなく、一歩先を行き、潜在的な課題を指摘し、議論をリードする「提言営業」。言わば、お客様の「先生」となって、新たな視点を提供する役割です。

「お客様の先生になるなんて、おこがましいのでは?」

そう思うかもしれません。しかし、先生とは「全てを知っている人」のことではありません。「基礎や原理原則を深く理解し、迷ったときに立ち返るべき場所を示せる人」のことです。

AIという拡張スーツがある今、最新のトレンドや膨大な事例収集はAIに任せればいい。だからこそ、人間であるあなたは、AIにはできない「本質的な理解」や「文脈の統合」に注力できるのです。

基礎を制する者が、応用を制す

先生として信頼されるためには、ITの小手先の技術ではなく、揺るぎない「基礎」を持つことが重要です。以下のようなアプローチで、思考の足腰を鍛えましょう。

  • 歴史を学ぶ: コンピュータやインターネットの歴史を知ることで、未来の方向性を予測する。
  • 基礎概念を押さえる: アルゴリズムやデータの基本原理を知り、技術の「なぜ」を理解する。
  • 現場の声を聞く: エンジニアとの対話を通じ、技術のリアリティを知る。
  • 越境学習をする: 経営学、心理学、デザイン思考など、IT以外の分野と技術をつなぐ視点を持つ。
  • 社会課題と接点を考える: 高齢化や環境問題に対し、技術がどう貢献できるかを構想する。

そして、日々の習慣も変えていきます。

  • 10年先を想像する: お客様の業界の未来について仮説を立てる。
  • 「もし私が経営者なら」: お客様の立場で決断をシミュレーションする。

これらは一見大変そうですが、ここでもAIが役立ちます。「○○業界の10年後のシナリオを3つ挙げて」とAIチームに指示を出せば、たたき台は瞬時に出来上がります。あなたはそれを吟味し、自分の知見(基礎)と照らし合わせて「提言」へと昇華させればよいのです。

不確実性の時代に「売らずして売れる」関係を

「相手の幸せを第一に考える」という利他の精神を持ち、「本質を理解した知識」で導いてくれる先生。そんな存在になれれば、売り込みは不要になります。

「厳しいことを言うようですが、今のままでは5年後にシステムが陳腐化します」

「御社が真に取り組むべき課題は、システムの刷新ではなく、データ活用人材の育成です」

AIを活用して作った裏付け資料と共に、耳の痛いことも誠実に伝える。そうした姿勢が信頼を生みます。

「新しいプロジェクトは、やっぱり君たちにお願いしたい」

そう言われる関係こそが、これからの営業のゴールです。

まず行動、走りながら考える

最後に、最も重要なことをお伝えします。

ここまで読んだ内容を「完璧に理解してから」動こうとしないでください。

「AIを使って未来予測の資料を作ってみる」

「お客様に『御社の業界はこう変わると思いますが、どうお考えですか?』と問いかけてみる」

まず行動に移してください。やってみて、うまくいかなければ、AIチームに「もっと良い言い回しはない?」と相談すればいいのです。

考えてから行動するのではなく、行動してから考える。それが、変化の激しい時代にスキルを磨く最短ルートです。

拡張された能力と、変わらぬ「心」

AIという拡張スーツを纏い、最強のチームを従えたあなたは、もはや無力な個人ではありません。

しかし、どれだけAIが進化し、あなたの能力が拡張されたとしても、その中心にあるべきなのは「相手の幸せを願う心」です。

テクノロジーの力(AI)と、人間の本性(利他の心)。

この二つを融合させ、お客様の未来を照らす「教師」へと進化できたとき、あなたはAIに仕事を奪われるどころか、AI時代を牽引するなくてはならない存在になっているはずです。

【募集開始】ITソリューション塾・第51期(2026年2月10日開講)

時代の「デフォルト」が変わる今、ITソリューション塾・第51期の募集を開始します。

ITソリューション塾

ITソリューション塾は2009年の開講以来、18年目を迎え、これまでに4000名を超える卒業生を送り出してきました。

開講当時、まだ特別だった「クラウド」は、いまやコンピューティングの「デフォルト」です。そして18年目のいま、社会は急速に「AI前提」へと移行しつつあります。

これは単にAIの機能が向上したということではありません。ビジネスや社会のあらゆる現場で実装が進み、AIがあらゆる仕組みの「デフォルト」になろうとしているのです。

第51期ではこの現実を受け止め、AI技術そのものの解説に加え、クラウド、IoT、システム開発、セキュリティなど、あらゆるテーマを「AI前提」の視点で再構成して講義を行います。

【ユーザー企業の皆さんへ】

不確実性が常態化する現代、変化へ俊敏に対処するには「内製化」への舵切りが不可欠となりました。IT人材不足の中でも、この俊敏性(アジリティ)の獲得は至上命題です。AIの急速な進化、クラウド適用範囲の拡大、そしてそれらを支えるモダンITへの移行こそが、そのための強力な土台となります。

【ITベンダー/SI事業者の皆さんへ】

ユーザー企業の内製化シフト、AI駆動開発やAIOpsの普及に伴い、「工数提供ビジネス」の未来は描けなくなりました。いま求められているのは、労働力の提供ではなく、モダンITやAIを前提とした「技術力」の提供です。

戦略や施策を練る際、ITトレンドの風向きを見誤っては手の打ちようがありません。

ITソリューション塾では、最新トレンドを体系的・俯瞰的に学ぶ機会を提供します。さらに、アジャイル開発やDevOps、セキュリティの最前線で活躍する第一人者を講師に招き、実践知としてのノウハウも共有いただきます。

あなたは、次の質問に答えられますか?

  • デジタル化とDXの違いを明確に説明できますか? また、DXの実践とは具体的に何を指しますか?
  • 生成AI、AIエージェント、エージェンティックAI、AGIといった「AIの系譜」を説明できますか?
  • プログラミングをAIに任せる時代、ITエンジニアはどのような役割を担い、どんなスキルが必要になるのでしょうか?

もし答えに窮するとしたら、ぜひITソリューション塾にご参加ください。

ここには、新たなビジネスとキャリアの未来を見つけるヒントがあるはずです。

対象となる方

  • SI事業者/ITベンダー企業にお勤めの皆さん
  • ユーザー企業でIT活用やデジタル戦略に関わる皆さん
  • デジタルを武器に事業改革や新規開発に取り組む皆さん
  • 異業種からSI事業者/ITベンダー企業へ転職された皆さん
  • デジタル人材/DX人材の育成に携わる皆さん

実施要領

  • 期間:2026年2月10日(火) ~ 4月22日(水) 全10回+特別補講
  • 時間:毎週 水曜日 18:30~20:30(※初回2/10など一部曜日変更あり)
  • 方法:オンライン(Zoom)
  • 費用:90,000円(税込み 99,000円)

受付はこちらから: https://www.netcommerce.co.jp/juku

※「意向はあるが最終決定には時間かがかかる」という方は、まずは参加ご希望の旨と人数をメールにてお知らせください。参加枠を確保いたします。
📩 saito@netcommerce.co.jp

講義内容(予定)

  • デジタルがもたらす社会の変化とDXの本質
  • ITの前提となるクラウド・ネイティブ
  • ビジネス基盤となったIoT
  • 既存の常識を書き換え、前提を再定義するAI
  • コンピューティングの常識を転換する量子コンピュータ
  • 変化に俊敏に対処するための開発と運用
  • 【特別講師】クラウド/DevOpsの実践
  • 【特別講師】アジャイルの実践とアジャイルワーク
  • 【特別講師】経営のためのセキュリティの基礎と本質
  • 総括・これからのITビジネス戦略
  • 【特別講師】特別補講 (現在人選中)

「システムインテグレーション革命」出版!

AI前提の世の中になろうとしている今、SIビジネスもまたAI前提に舵を切らなくてはなりません。しかし、どこに向かって、どのように舵を切ればいいのでしょうか。

本書は、「システムインテグレーション崩壊」、「システムインテグレーション再生の戦略」に続く第三弾としてとして。AIの大波を乗り越えるシナリオを描いています。是非、手に取ってご覧下さい

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神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO

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八ヶ岳南麓・山梨県北杜市大泉町、標高1000mの広葉樹の森の中にコワーキングプレイスがオープンしました。WiFiや電源、文房具類など、働くための機材や備品、お茶やコーヒー、お茶菓子などを用意してお待ちしています。

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