既存の枠組みの限界と「増築」の違和感

この年末年始は、書籍の執筆と研修教材の作成に時間を割くことができました。 もちろん、これが仕事ですから、このような作業は日常的に行っています。ただ、普段であれば、スケジュールに縛られ、これらの作業は、知らず知らずのうちに染みついた「常識」に足を縛られ、大きく飛び跳ねた内容にはできません。

これまで自分が考え、語ってきたことを下敷きにして、表現を工夫したり、たとえ話を変えてみたり、あるいは、新しい情報が飛び込んできたら、それを既存の教材に、自然な形で組み入れるといった作業も少なくありません。 現状の枠組みは大きく変えず、より分かりやすく、新しいことも取り込み、内容を改善することで、仕事をこなしてきたわけです。まあ、それはそれで、なかなか手間のかかることでもありますが、そうやって、お客様の関心を保ち、仕事を維持できていたわけです。

それが悪いというわけではありませんが、既存の枠組みに改善や追加を繰り返していると、その枠組み自身が耐えきれなくなってきます。例えて言えば、家の間取りが変わらないのに、ものが増え続け、いろいろと家具を変えたり、配置を換えたりとやりくりし、体裁を保っているといった状態でしょうか。まあ、見た目はなんとかなってはいるものの、一貫性に乏しく、どこか窮屈で、気持ちが悪い状況といった感じです。

そんなわけで、なんとかしたいとは、常々思っていました。ただ、日常に追われて、それができずにいましたが、この年末年始は、少し時間的に余裕もあり、そんな現実を見直す機会となりました。

「脅して教える」から「寄り添う」スタイルへの大転換

書籍の執筆については、まだ編集者との議論の最中でもあり、詳細は割愛いたしますが、これまでであれば、「そんなバカなことは辞めて、とっとと行動を変えなさい!」といった調子で、「脅して、教える」といったなんとも不遜で偉そうな展開でした(笑)。例えば、2014年の「システムインテグレーション崩壊」や2016年の「システムインテグレーション再生の戦略」、2025年の「システムインテグレーション革命」などは、まさにそんなスタイルです。 これが自分の持ち味であり、講義や講演でもこのスタイルが多く、自分なりにしっくりと馴染む感じで、ここから、なかなか抜け出せずにいたというのが偽らざる気持ちです。

そんな私が、いま書こうとしているのは、スタイルがまったく違います。「わかるよ、わかるよ、あなたの気持ち、だったらこんな風にしてみませんか、こんなやり方すれば、無理なくできますよ」という優しさと励ましに満ちたスタイルです。我ながら、よくもこれほどの大転換ができるなと思いますが、なんだか、これもまた心地よく、気持ちよく筆が進むことに、自分でも驚いています。

研修資料については、既に大筋はしっかりと出来あがっており、これで十分に仕事になっています。それなりのご評価も頂けていました。ただ、先にも述べたとおり、改善と追加が重なり、窮屈で気持ちが悪い状況となっていたことも事実です。そんなわけで、大筋そのものを作り変えようとしています。ただ、ベースとなるパワーポイントの研修教材が1000ページほどあり、これら全てを書きかえるとなると、相当の時間がかかります。そこで、まずは、教材の大筋を描き直しているところです。それに合わせて既存の素材を流用しつつ、新しい筋に従って配置を換え、どうしても埋まらないところは新しく作り、改造を試みている最中です。

改造を終えるには相当の時間はかかりそうですが、大筋さえ描ければ、後は知的力仕事です。もちろん、筋と素材を行ったり来たりしながら、完成度を上げることにはなりますが、新しい楽しみが増えたようなもので、面倒なことではありません。

転機の背景にあるもの:生成AIの劇的な進化

ところで、このような行動に打って出たきっかけですが、その背景にあるのは、生成AIです。以前から、この窮屈な気持ち悪さはつきまとっていましたが、いざそれをやるとなると相当大変な作業になることは分かっていたので、躊躇していました。 しかし、生成AIが急速に機能や性能を向上させ、私を取り巻く状況が、短期間のうちに変わってしまったのです。

まず、大きな変化は、資料を作るスピードが格段に向上し、「こういう文章を書きたい」、「こういう資料を作りたい」と思い立ち、それを文章化できれば、あっという間にそれができあがってしまうようになったことです。 今思えば、2024年9月のChatGPT o1の登場が大きな転機だったかもしれません。それ以前は、こちらのリクエストに50点くらいしかまともに応えてくれず、ハルシネーションも多かったように思います。それが、一気に70点くらいに向上した感じでしょうか。もちろん、そのままで使えるレベルではありませんが、まずは最低限のたたき台が生成AIだけで作れるようになったとの印象でした。

ご存知の通り、ChatGPT o1は、初めての論理推論可能なモデルです。その後の改善やDeep Research機能の登場、Google Geminiの追撃、その他、生成AI機能を使った様々なサービスが登場し、一気にその性能を向上させ、70点は80点に、さらには、取りあえずならこのまま使えるというレベルにまで短期間のうちに達しました。極めつけは、Gemini 3の登場です。アウトプットの完成度は極めて高く、文章だけではなく、イラストやスライドの作成も相当なレベルです。特にイラストについては、格段の改善です。それ以前は、こちらの意図するイメージを描くこともできず、「気持ちの悪い日本語的文字」を平気で描いていましたが、これがまともに使えるレベルになりましました。おかげで、文章や研修教材の作成は大幅に捗り、もはや生成AIなしでは、自分の仕事ができないレベルになってしまいました。

おかげで、毎日書いているブログやお客様に提出しなくてはならないレポート、研修教材は、そのほとんどが何らかのカタチで生成AIの助けを借りるようになりました。 結果、手に入る情報量は増え、資料の数も増え、その過程で、新たな知識の習得は早まり、自分の知識の再構成も進みました。

そうなると、過去の枠組みに縛られる必要はなくなりました。つまり、既存のやり方やスタイルで繰り返してきた「知的力仕事」は、劇的に効率化できるようになり、既存の枠組みに押し込めることがますます難しくなってきたこと、そして、新しいやり方にチャレンジするにも、そのリスクが大きく低減したことです。つまり、うまくいかなくても、すぐにやり直すことができるようになり、「こんなに時間と手間をかけてやったのだから、簡単には変えられない」といった心理的壁が、一気に引き下げられたのです。

生成AIという相棒との共創プロセス

例えば、書籍の執筆については、B5書籍のページ換算で140ページくらいの文章を、生成AIを使い、実質10日間くらいの時間で書き上げました。それをある出版社の編集者に見せたところ、これは出版できる内容ではないとダメ出しを喰らいました。しかし、納得いかない私は、他の出版社にも持ち込んでみたのですが、やはり、同様のダメ出しを喰らいました。そこで、少し冷静になり、それぞれの編集者より頂いた指摘を受け止め、見直してみると、「そうだよな、こんな本誰も読まないよな」と気がついたのです。そこで、頂いたご指摘を反映して、方針を大転換し、書き直すことにしました。まだ、全文を書いたわけではなく、はじめにと目次を執筆して、編集者とやり取りしながら、相変わらずダメ出しをもらいながらも、少し光明が見えてきたところです。書き直し作業は、それまで書いた内容を修正するというのではなく、そのたびにまったく新しく書きかえています。

当然ながら生成AIの助けを借りています。いろいろと考えてはこんなことを書きたい、伝えたいと思ったことをまずは一気に文章化し、また、これまでに書いた文章や参照したいweb情報なども素材として与え、生成AIに文章を書かせています。 そのスピード感は実に心地いいものです。アウトプットされた文章を読んでは、ここをこうしてほしい、ここに新たにこんな内容を追加してくれなどの対話に、たっぷり時間をかけています。多分この一連のやり取りで、生成AIに書かせた文章量の数倍は、こちらがインプットしている感じです。ただ、行ったり来たりのやり取りが早いので、疲労感はなく、気がつけば相当の時間をこの対話に費やしていることに驚くことがあります。かつて、心理学者のミハイ・チクセントミハイが提唱したフロー状態になっているわけです。 先にも述べたとおり、このプロセスを通じて、沢山の気付きや知識を得ることができ、私の学びのスピードも劇的に向上しており、執筆速度も加速度を増している感じがしています。

研修資料づくりもこんな感じです。そこにかけている時間が、昔より減っているのではなく、同じ時間でも集中度が高まり、フロー状態になりながら、気がつけば沢山のアウトプットを、質を保ちながら作れるようになったのです。 こうなると、既存の筋に収めるのには無理が生じてくるのも仕方がなく、大改造に着手せざるを得ない状況になってしまったのです。

「ガンダム」に乗った凡人の覚醒

AIで、自分の仕事が奪われるのではないかと漠然とした不安を持つ方も少なくはないように思います。しかし、私にはその感覚はありません。それはまるで、偶然にも「ガンダム」という人知を超えた高性能機に乗り込み、運命が一変してしまったアムロ・レイのような状況です。ガンダムの圧倒的な機体性能が、未熟な自分の能力を拡張し、幾多の戦いを経て潜在能力を引き出し、ついには超人的な直感と認識力を持つ「ニュータイプ」へと覚醒させた!今の私は、まさにそんな感覚を味わっているのです(笑)。

もちろん、私ごときが「ニュータイプ」であるはずはなく、凡人にすぎませんが、生成AIという相棒を得て、あるいは、一体化して、こうやって仕事が進められることで、あきらかに自分のパフォーマンスが何倍にもなったことは間違いありません。 仕事が奪われるどころか、仕事が増える勢いです。まあ、その分、かなりの金額を相棒に支払ってはいますが、それ以上の見返りは得ています。それは、収入ということだけではありません。新しいことに挑める楽しみと、それを維持できる知的体力を手に入れたことです。

まもなく、今年最初の「ITソリューション塾」が始まります。まずは、その成果をここで発揮できればと、年初より気合いを入れています。

【募集開始】ITソリューション塾・第51期(2026年2月10日開講)

時代の「デフォルト」が変わる今、ITソリューション塾・第51期の募集を開始します。

ITソリューション塾

ITソリューション塾は2009年の開講以来、18年目を迎え、これまでに4000名を超える卒業生を送り出してきました。

開講当時、まだ特別だった「クラウド」は、いまやコンピューティングの「デフォルト」です。そして18年目のいま、社会は急速に「AI前提」へと移行しつつあります。

これは単にAIの機能が向上したということではありません。ビジネスや社会のあらゆる現場で実装が進み、AIがあらゆる仕組みの「デフォルト」になろうとしているのです。

第51期ではこの現実を受け止め、AI技術そのものの解説に加え、クラウド、IoT、システム開発、セキュリティなど、あらゆるテーマを「AI前提」の視点で再構成して講義を行います。

【ユーザー企業の皆さんへ】

不確実性が常態化する現代、変化へ俊敏に対処するには「内製化」への舵切りが不可欠となりました。IT人材不足の中でも、この俊敏性(アジリティ)の獲得は至上命題です。AIの急速な進化、クラウド適用範囲の拡大、そしてそれらを支えるモダンITへの移行こそが、そのための強力な土台となります。

【ITベンダー/SI事業者の皆さんへ】

ユーザー企業の内製化シフト、AI駆動開発やAIOpsの普及に伴い、「工数提供ビジネス」の未来は描けなくなりました。いま求められているのは、労働力の提供ではなく、モダンITやAIを前提とした「技術力」の提供です。

戦略や施策を練る際、ITトレンドの風向きを見誤っては手の打ちようがありません。

ITソリューション塾では、最新トレンドを体系的・俯瞰的に学ぶ機会を提供します。さらに、アジャイル開発やDevOps、セキュリティの最前線で活躍する第一人者を講師に招き、実践知としてのノウハウも共有いただきます。

あなたは、次の質問に答えられますか?

  • デジタル化とDXの違いを明確に説明できますか? また、DXの実践とは具体的に何を指しますか?
  • 生成AI、AIエージェント、エージェンティックAI、AGIといった「AIの系譜」を説明できますか?
  • プログラミングをAIに任せる時代、ITエンジニアはどのような役割を担い、どんなスキルが必要になるのでしょうか?

もし答えに窮するとしたら、ぜひITソリューション塾にご参加ください。

ここには、新たなビジネスとキャリアの未来を見つけるヒントがあるはずです。

対象となる方

  • SI事業者/ITベンダー企業にお勤めの皆さん
  • ユーザー企業でIT活用やデジタル戦略に関わる皆さん
  • デジタルを武器に事業改革や新規開発に取り組む皆さん
  • 異業種からSI事業者/ITベンダー企業へ転職された皆さん
  • デジタル人材/DX人材の育成に携わる皆さん

実施要領

  • 期間:2026年2月10日(火) ~ 4月22日(水) 全10回+特別補講
  • 時間:毎週 水曜日 18:30~20:30(※初回2/10など一部曜日変更あり)
  • 方法:オンライン(Zoom)
  • 費用:90,000円(税込み 99,000円)

受付はこちらから: https://www.netcommerce.co.jp/juku

※「意向はあるが最終決定には時間かがかかる」という方は、まずは参加ご希望の旨と人数をメールにてお知らせください。参加枠を確保いたします。
📩 saito@netcommerce.co.jp

講義内容(予定)

  • デジタルがもたらす社会の変化とDXの本質
  • ITの前提となるクラウド・ネイティブ
  • ビジネス基盤となったIoT
  • 既存の常識を書き換え、前提を再定義するAI
  • コンピューティングの常識を転換する量子コンピュータ
  • 変化に俊敏に対処するための開発と運用
  • 【特別講師】クラウド/DevOpsの実践
  • 【特別講師】アジャイルの実践とアジャイルワーク
  • 【特別講師】経営のためのセキュリティの基礎と本質
  • 総括・これからのITビジネス戦略
  • 【特別講師】特別補講 (現在人選中)

「システムインテグレーション革命」出版!

AI前提の世の中になろうとしている今、SIビジネスもまたAI前提に舵を切らなくてはなりません。しかし、どこに向かって、どのように舵を切ればいいのでしょうか。

本書は、「システムインテグレーション崩壊」、「システムインテグレーション再生の戦略」に続く第三弾としてとして。AIの大波を乗り越えるシナリオを描いています。是非、手に取ってご覧下さい

【図解】これ1枚でわかる最新ITトレンド・改訂第5版

生成AIを使えば、業務の効率爆上がり?
このソフトウェアを導入すれば、DXができる?
・・・そんな都合のいい「魔法の杖」はありません。

=> Amazon はこちらから

神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO

IMG_9926.jpeg

unnamed-2.jpg

八ヶ岳南麓・山梨県北杜市大泉町、標高1000mの広葉樹の森の中にコワーキングプレイスがオープンしました。WiFiや電源、文房具類など、働くための機材や備品、お茶やコーヒー、お茶菓子などを用意してお待ちしています。

8MATOのご紹介は、こちらをご覧下さい。