先日投稿した「もうすぐ消滅するという人間によるコード生成について」の記事の中で、AIを使ったシステム開発は、いまは黎明期だが、近い将来、「AIエージェントによる(システム開発)プロセスの再定義」の時代がやってくると、私の予測を書かせて頂きました。この記事では、これをさらに深く考察します。
コード生成支援ツールとAIエージェントの台頭
GitHub Copilotと同様の作業領域をカバーするCursor、「システム開発全般をカバーする」Devineや BoltといったAIエージェントが登場しています。この分野での機能や性能の向上は、今後も確実に進んでいくと思われます。
DXへの関心の高まりや、これに伴うシステム開発需要の増大を考えれば、このようなツールを既存のシステム開発業務に取り入れていくことは避けられないと思います。IT人材の不足が叫ばれる中、それを補う手段として、現実的かつ有効な手段と考えられるからです。しかし、少し先を見通すならば、この状況は、大きく変わってしまうでしょう。
先週紹介した、このチャートに示すとおり、AIツールを使ったシステム開発(AI駆動開発)は現時点では黎明期ですが、この先には、「AIエージェントによるプロセスの再定義」というフェーズがあります。ただ、ここに至る過程で、2つのシナリオに分かれることが考えられます。
ひとつは、「既存の開発プロセスの改善」を目的にAIを利用するというシナリオ、一方は、AIを利用することを前提にシステム開発のあり方を再定義して「既存の開発プロセスを変革(=新しく作り変える)」するというシナリオです。
私の知る限りでは、多くのSI/ITベンダーのシナリオは、AIを使って「既存の開発プロセスの改善」であるように見えます。アジャイル開発やDevOpsに十分に適応できていない企業にとっては、既存の顧客、既存のやり方を前提に改善を図ることで収益の道を探るしかありませんから、当然のことと言えるでしょう。
ただ、大手元請企業では、これでなんとかなるにしても、これまで下請け企業に任せていた仕事がAIに置き換わります。大手元請企業から、仕様書に従ったコードを書くといった業務に収益の多くを依存している下請企業は、短期的に急激な仕事量の減少を想定しなくてはなりません。
一方、既存のやり方にこだわらず、「既存の開発プロセスを変革」することに取り組む企業は、AIの効果を最大限に引き出し、成果をあげられるはずです。彼らは、クラウド、アジャイル開発、DevOps、コンテナ、マイクロサービスなどの「モダン開発」を当たり前にできる企業です。当然、このような企業はシステム開発を生業にしている企業だけではなく、自らクラウド・サービスを提供するベンチャー企業やユーザー企業の内製チームも含まれます。「AIエージェントによるプロセスの再定義」は、この延長線上にあります。
AIのもたらす変化の本質とは、「モダン開発」への移行を加速するということです。結果として、人手に頼るからこそ必要だった「外注」の必要はなくなり、内製化への動きを一層推し進めることになるでしょう。
この想定が正しいとすれば、「既存の開発プロセスの改善」を目的にAI利用に取り組んだ企業は、一旦、「既存の開発プロセスを変革」することへと舵を切り直さなくてはなりません。結果として、数年間の遅れで最終ステージである「AIエージェントによるプロセスの再定義」の入口に立つことになります。変化の速い世の中にあっては、これは致命的な格差となるかもしれません。
「AIエージェントによるプロセスの再定義」で変わるシステム開発のあり方
「AIエージェント」とは、「与えられた目標を達成するために必要なタスクを自律的に実行するソフトウェア」のことです。例えば、次のような目標をAIエージェントに与えたとしましょう。
「〇〇サービスの利用者に対する11月末の請求に対して、12月末時点で未入金の顧客一覧を作成し、その顧客に対して、定型書式A112を使い、督促状を作成し、それを印刷せよ」
AIエージェントは、この目標を達成するために、次のような作業(タスク)を人間に頼ることなく勝手にやってくれます。
- 指示された目標を達成するための一連の作業を必要なタスクに分解
- タスク実行の計画を策定
- タスクごとの結果を評価
- 目標が達成できたかを評価
- 評価結果から判断し、達成できるまでタスクを繰り返し実行する
ソフトウェア・エンジニアが、プログラムを作成するために行っている一連のタスクを、AIエージェントが人間に変わって自律的に行ってくれるというわけです。
いまはまだできることに制約はありますが、機能や性能は、短期間のうちに向上していくものと考えられます。そうなれば、このようなAIエージェントを複数組み合わせて開発チームを作るという考え方が出てくるでしょう。
彼らは、システム開発全般をこなせる優秀かつ自律したソフトウェア・エンジニアです。例えば、2つのAIエージェントでペアプロを実行し、コード生成やリファクタリングを行い、完成度の高いコードを生成します。そして、プルリクエストして、それを別のAIエージェントがレビュー・マージして、デプロイします。やがては、開発プロジェクト全体のスクラム・マスターも、AIエージェントが担う時代が来るでしょう。これが、「AIエージェントによるプロセスの再定義」の時代ということになります。
人間の役割は、「プロダクト・オーナー」となります。何をしたいのか、何を実現したいのかを決めて、成果を評価し、スクラム・マスター役のAIエージェントに指示やフィードバックを与えることになります。
言うまでもなく、これは「アジャイル開発」のプロセスです。変わり続けるビジネス現場の最前線からの変更要求、改善要求に即応できる体制を、このようなやり方で、低コストかつ短時間で実現できるわけです。
ウォーターフォール開発で、AIエージェントを使う場合、コード生成の効率化には貢献できても、システム開発工程全般に適応させることは現実的ではありません。なぜなら、ウォーターフォール開発には、「現場との継続的な対話を通じて、現場が必要とするものを直ちに実現し、変更も積極的に受け入れながら、一緒になってビジネスの成果に貢献する」という思想がないからです。不確実性が高く、変化の速い時代にあっては、「アジャイル開発」が前提になることは言うまでもありません。
また、このような仕組みは、クラウドとの一体化を前提に整備が進むはずです。なぜなら、前提となるAIモデルは、その規模や汎用性を考えれば、クラウドで動かす以外の選択肢がないからです。
AIエージェントを使った開発は「エンジニアを採用しなければならない」あるいは、「足りないエンジニアは外注に依存しなければならない」という問題を解消します。また、クラウドを使うわけですから、自前でシステムを所有し、運用や管理をする必要がなく、そのための人材も不要です。つまり、内製化の足かせを解き放つわけです。これは、内製化を促進させる原動力となるはずです。
このように、AIエージェント前提のシステム開発では、純粋な開発者は不要となりますが、一方で、AIエージェントを賢くするエンジニアや、社内の標準やルールを優先して使わせるための仕組みを作るエンジニアが必要となります。つまり、「AIをうまく使いこなすための仕組みを作るエンジニア」が必要になるわけです。
AIで変わるエンジニアの役割
AIが生成するコードには、確率的な「ゆらぎ」があることを心得ておく必要があります。例えば、同じスクリプトで指示を出しても、毎回まったく同じコードを生成するとは限らないということです。このようなAIツールで生成したプログラムコードで、ソフトウェア品質を保証できるかという問題があります。
「ソフトウェア品質」の定義は、単純なものではありませんので詳細は割愛しますが、簡単に言えば、次のように言うことができるでしょう。
「ソフトウェアがどれだけユーザーの期待に応え、きちんと動作するかの指標」
料理に例えれば、次のようになります。
- 美味しい料理:ユーザーが求める味、見た目、量などを満たしていること。ソフトウェアで言えば、必要な機能が揃っていて、使いやすく、快適に動作すること。
- まずい料理:味が悪い、見た目が悪い、量が足りないなど、ユーザーを満足させられないこと。ソフトウェアで言えば、バグが多い、使いにくい、動作が遅いなど、ユーザーにストレスを与えること。
ソフトウェア品質が高いと、ユーザーは快適に利用でき、満足度も高くなります。逆に、品質が低いと、ユーザーは不満を感じ、最悪の場合はそのソフトウェアを使わなくなる可能性もあります。
従来、ソフトウェア品質はエラーのない製品を提供することであり、不具合(バグ)をゼロにすることに焦点が置かれていました。しかし、テクノロジーの進歩とめまぐるしく変わるユーザー要求の変化に対応しなければならない時代となりました。そのため、予め用意された要求仕様書に記載された機能を満たせば良いという単純なものではなくなり、ユーザーの要求と期待の変化にも迅速に応えなければなりません。
さらに、優れた製品や顧客満足度だけでは、必ずしもビジネスに成功できるとは限りません。ユーザーニーズを先取りするための機能やサービスを実装することも必要です。そのため、製品は継続的に改善され、単に「不具合(バグ)をゼロにする」だけでなく、ユーザーの期待を上回る体験や機能を提供し続けることができなくてはなりません。
ソフトウェア品質をこのように捉えるならば、「AIで生成したコードが問題なく機能する」ということだけでは、品質が保証されているとは言えません。また、開発標準やセキュリティへの対応を考えると、「AIのゆらぎ」は、AIツールを使う上での重大な課題です。
この点に於いて、人間のエンジニアの役割は、極めて重要です。例えば、ソフトウェア・エンジニアには、つぎのようなことが求められます。
ビジネスの視点から「いかなる成果を達成すべきか」を明確化:ビジネス・オーナーやユーザーとの対話、現場の観察により、「漠然とは思っているけど言葉にはならない要求」や「ビジネスの成果に貢献するために何をすべきか」を明確にできなくてはなりません。
品質が保証されたマイクロサービスの整備とその優先的利用: AIが生成したコードをそのまま使うのではなく、主要な機能はマイクロサービスとして予め用意しておくというやり方です。このような方法を使えば、「極めて優秀なエンジニア」が少人数いれば、彼らが品質を保証されたマイクロサービスを作っておき、AIがこれを優先的に使う仕組みにすることができます。また、RAG(Retrieval Augmented Generation:検索拡張生成)などを組み入れて品質を保証する仕組み作りも必要でしよう。こうしたアーキテクチャを整備することで、誰が作業しても、品質を確保しながら高速開発を実現できるようになるわけです。
プロダクトに対する責任の担保:できあがったソフトウェアプロダクトの責任は、人間にしかできません。つまり、一連のプロセスを、監視、承認、判断することは、これまでと変わらず人間の役割となります。但し、「AIエージェントによって構成された開発チーム」ですから、その仕事は極めて早くなります。そうなれば、イテレーション(アジャイル開発における反復)のサイクルは、いま人間が行っている「週単位」から「日/時間単位」に変わるかもしれません。なんらかの自動化の手段がなければ、対応は難しくなるでしょう。
もちろんここでもAIが活躍する余地はありますが、責任を担保するのはあくまで人間であり、そのためのルールや仕組みを作ることは重要になるはずです。
上記からも分かるとおり、「AIエージェントによる開発チームに開発を任せられる時代」になったとしても、人間の役割がなくなることはありませんが、その内容が大きく変わります。上記のことから妄想を膨らませれば、次のようになります。
- 人間のエンジニアには、システム開発全般についての包括的知識を有した上で、事業や経営についての会話ができ、ビジネスの視点から「いかなる成果を達成すべきか」を言語化できる能力が必要となる。
- 「極めて優秀なエンジニア」が少人数いれば、ITの専門家でなくても品質を担保されたソフトウェアを作ることができるようになる。
- ビジネスの成果に責任を持てるのは、事業会社/ユーザー企業の人間である。従って、ユーザー企業に所属するエンジニアが主導する形で、システム内製が進み、外部のエンジニアは、高度な専門性を活かして、彼らを支援する体制となる。
これからも分かるように、「仕様書を書いて、コードを生成する」ことで成り立っていたSIerの「人月ビジネス」は、AIエージェントの性能向上とクラウドとの一体化、それに後押しされる内製化によって、縮小していくのでは避けられません。
AIの発展が促すソフトウェア・エンジニアの新たな役割
ここまで述べたことを、次のようにまとめることができます。
- 現在は黎明期であり、できることが限られている。しかし、近い将来、システム開発に特化したAIエージェントの機能や性能が向上することで、純粋な開発者は不要となる。
- AI前提の開発(以下、AI駆動開発/AI-driven Development)が、その価値を最大限に発揮するのは、「アジャイル開発×DevOps×クラウド」である。ウォーターフォール開発でもAI駆動開発は、人的工数の削減や開発期間の短縮には、一定の効果が期待できる。しかし、いま求められているのは、「変化に俊敏に対処してビジネスの成果に貢献する」ことだ。システムの開発や運用のプロセス、システム・アーキテクチャーもまた、この考え方を前提に考えなくてはならず、この点を無視して「コード生成やドキュメンテーション、運用管理をAIで効率化する」ことに限定すれば、ビジネスの成果への貢献は限定される。ひいては、SIビジネスの存在意義が喪失する。
- ソフトウェア・エンジニアの役割を再定義する必要に迫られている。「QCDを守って仕様書通りのプログラムを完成させること」から、「ビジネスの成果に貢献するためにITを前提としたビジネス・モデルやビジネス・プロセスを実現すること」への転換が必要だ。
ここで申し上げたいことは、ソフトウェア・エンジニアは、「ビジネス/事業について関心を持ち、そちらの知識やスキルを持つ必要がある」と単純に受け止め手欲しいわけではありません。もちろんこの点も重要ですが、ソフトウェア・エンジニアとして最も大切なことは、「システム開発全般にわたり、包括的な知識やスキルを有していること」や「ITを活かしたビジネスについての知識やスキルを有していること」です。
ビジネスは、チームプレイであることは言うまでもありません。そのチームのメンバーは、全員がITを前提にビジネスを考えられなくてはなりません。しかし、それぞれに得意分野があって当然です。ソフトウェア・エンジニア(そういう名称がこれからもそのままでいいのかどうかはともかく)は、まずは大前提として、ITプロフェッショナルであることの自覚と知識の土台が必要です。
Javaでコードを書くことができる、Oracle DBを設定できる、AWSでの環境構築ができることに留まらず、それらの動作する原理原則を理解し、その原理原則をどのように使えば、ビジネスの成果に貢献できるかを考えられる能力が必要です。
つまり、ソフトウェア工学とプロダクト・マネージメント、さらには、これを実装するためのプロジェクト・マネージメントなど、システム開発だけではない、ITシステム全般にわたる包括的な知識スキルを持ったITプロフェッショナルであることを土台とすることが、自らの存在意義/パーパスになるのです。
コードを書くことやドキュメンテーション、定型的な運用やトラブルに対応するための保守作業などの「知的”力”仕事」は、AIやクラウドに役割が移行します。そのような役割から、新しい価値を生みだす「知的”創造”仕事」、すなわち、よりレベルの高い戦略的な思考や創造的な問題解決、複雑な意思決定に注力し、ITを活かすためのスペシャリストとして、その役割をシフトさせることが、求められるようになります。
AIは膨大なデータから規則や特徴を抽出し、「究極の一般」を導き出すことで、パターン化や一般化が可能な知的作業の生産性を高めます。一方、人間は観察や対話、共感を通じて、その場の状況における独自性や希少性、「究極の特別」を見出します。つまり、AIは知的作業の量的限界を解消し、人間は独創性や希少性を見出すことで、知性を拡張しそれぞれ単独では実現し得ない知性の発展へとつなげることができます。
そんなAIに自律性を持たせようというのがAIエージェントです。AIエージェントとは、「何をしたいのか=目標」を与えれば、自ら計画を立て、結果を評価し、うまく行かなければそれを検証し、改善するなどして、目標達成を自律的になし遂げる能力を持つソフトウェアです。つまり、人間の「エージェント(Agent)=代理人」として、仕事をこなしてくれる「非常に賢い自分専属の秘書」あるいは「安心して仕事を任せることができる優秀な部下」といったところでしょうか。
先にも述べましたが、現段階では、全ての知的作業をこなしてくれるAIエージェントは存在しません。しかし、特定の業務領域に特化したAIエージェントは登場し始めています。例えば、システム開発の広範なタスクをこなしてくれるDevinやBoltは、そのさきがけとも言えるサービスです。
人間に最後まで残る役割は責任をとること
このようなサービスの登場によって、人間の役割は、「責任をとること」と「考えること」へとその重心が移ってくるように思われます。
「責任をとること」とは、いまの社会に於いて、人間にしか果たせない役割です。AIが発展を遂げ、多くの知的作業を人よりも何倍も早く、正確にこなしてくれたとしても、その結果に責任をとれるのは、人間しかいません。「AIがこういう答えを出したのだから、仕方がありません。私はそれに従っただけです。」と責任を回避しようとしても、いまの社会が許容してくれることはないでしょう。
また、責任には「判断」が伴います。判断には、善悪、社会規範、思想や文化といった、様々な価値観に影響を受けます。AIは、そんな多様な価値観があることは教えてくれても、その中で、どの価値観に基づき選択し判断することが正しいのかは、教えてはくれません。その選択と判断は、人間に委ねられています。そして、その結果に対して、人間は、責任をとらなくてはならないのです。
人間が「責任」をとるべく判断するには、「考えること」が必要です。考えることは、人間が身体を通じて積み上げた習慣、感性、思想、文化、人間関係などが複雑に絡み合い、その判断は、状況に応じて相対的です。私たちは、これを「感覚的」であるといいます。時にして、「感覚的」な判断は、「論理的」な合理性を欠くことがあります。
私たちの日常にあっては、時にして「感覚的」な不合理性は、「論理的」な合理性を超越する存在です。論理的に正しくても、それを誰もが受け入れてくれるとは限りません。「究極の一般」を追求するAIの限界は、「状況に応じて相対的」であることを求める「人間社会の掟(おきて)」を乗り越えられない点にあると言えます。
一方、人間は、その時々の状況の中で、相対的に正しい選択を迫れ、判断しなくてはなりません。つまり、人間は、「感覚的」に状況に合いふさわしい「究極の特別」を見出すことを求められます。
人間は、自らの身体を駆使して観察し、共感し、対話し、実践して、体感し、そこから得た「感覚的」知識をも加味して、考えなくてはなりません。身体を持たないAIにこの役割を担うことはできません。そして、人間は、自分が考え下した判断とその結果に対して、責任を持つことが求められます。
よりよい判断を下すには、「論理的」知識を積み上げることが大切です。しかし、それだけでは不十分です。人間関係や対話を通じて得られる人間理解、美術や文化などに親しむことにより得られる美意識、行動を起こした結果としての成功や失敗より得られる体験的ノウハウといった広範な知的体験が、現実世界におけるよりよい判断を導く上では欠かせません。
ただ、このような知的体験に限界はなく、人間は常に不完全であり続けます。だからこそ、徹底して考えて、その時々の状況に応じた特別を見出し、判断を下さなければなりません。しかし、不完全な人間の行為ですから、その判断もまた不完全です。だから自分が選択し判断したことに責任を負う必要があるのです。そして、人間はその結果から学び、考えて、選択や判断の能力を磨いていくのです。
AIはそんな不完全な人間社会の知識を学習して、規則や法則、特徴を見つけだし、共通性や汎用性の高い「妥当な答え」を導くことを目指します。当然ながら、そこには絶対の正解はありません。AIの導く答えは、あくまで確率的な確かさでしかないのです。しかし、多くの知的作業においては、特にパターン化、一般化できる知的作業(知的力仕事)においては、個別であり特別は例外として排除され、確率的確かさが、高い生産性をもたらします。この点に於いて、AIは極めて強力です。
しかし、全ての状況がパターン化、一般化できるわけではありません。むしろ現実は、そうでないことに満ちているし、そこにこそ、新たな発展のきっかけがあります。
最適な判断は、時に既存の一般常識を逸脱するところにあります。それが、個別性や希少性の高いものであれば、そこには大きな価値が生まれます。これこそが、AIにはできない人間ならではの独創性なのです。
AIは、「究極の一般」をめざし、これからも知的生産性を高め続けるでしょう。その結果として、パターン化、一般化できる「知的”力“仕事」から人間は解放されます。また、「知的”思索“仕事」や「知的”管理“仕事」に必要な情報の整理や評価、管理や運用のための負担を軽減してくれます。人間は、そうして生みだされた時間や機会を使って、「考えることに」これまで以上に邁進できるようになるはずです。そして、考えた結果として、相対的な最適を見つけて判断し、その結果に「責任」を負い、社会を変えていくのです。
「考えて判断し、結果に責任を負う」
いまも昔も変わらぬ人間社会の原理です。これは、AIが発達した未来でも変わることはありません。AIは、その前段として、人間にとって大きな負担となっていた知的作業を軽減し、人間は「考えて判断し、結果に責任を負う」ことに徹底して役割を移すことができるようになったとも言えます。
AIの機能や性能の向上で、人間は、人間にしかできないことに意識や時間を集中できるようになり、社会の発展にこれまでにも増して貢献して、人間や社会の進歩が加速する
私たちはいま、そんな未来をリアルに描けるようになったのだと思います。
実践で使えるITの常識力を身につけるために!
次期・ITソリューション塾・第48期(2025年2月12日 開講)
次期・ITソリューション塾・第48期(2025年2月12日[水]開講)の募集を始めました。
次のような皆さんには、きっとお役に立つはずです。
- SI事業者/ITベンダー企業にお勤めの皆さん
- ユーザー企業でIT活用やデジタル戦略に関わる皆さん
- デジタルを武器に事業の改革や新規開発に取り組もうとされている皆さん
- IT業界以外から、SI事業者/ITベンダー企業に転職された皆さん
- デジタル人材/DX人材の育成に関わられる皆さん
ITに関わる仕事をしている人たちは、いま起こりつつある変化の背景にあるテクノロジーを正しく理解し、自分たちのビジネスに、あるいは、お客様への提案に、活かす方法を見つけなくてはなりません。
ITソリューション塾は、そんなITの最新トレンドを体系的に分かりやすくお伝えするとともに、ビジネスとの関係やこれからの戦略を解説し、どのように実践につなげればいいのかを考えます。
詳しくはこちらをご覧下さい。
※神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO(やまと)会員の皆さんは、参加費が無料となります。申し込みに際しましては、その旨、通信欄にご記入ください。
- 期間:2025年2月12日(水)〜最終回4月23日(水) 全10回+特別補講
- 時間:毎週(水曜日*原則*) 18:30〜20:30 の2時間
- 方法:オンライン(Zoom)
- 費用:90,000円(税込み 99,000円)
- 内容:
- デジタルがもたらす社会の変化とDXの本質
- IT利用のあり方を変えるクラウド・コンピューティング
- これからのビジネス基盤となるIoTと5G
- 人間との新たな役割分担を模索するAI
- おさえておきたい注目のテクノロジー
- 変化に俊敏に対処するための開発と運用
- アジャイルの実践とアジャイルワーク
- クラウド/DevOps戦略の実践
- 経営のためのセキュリティの基礎と本質
- 総括・これからのITビジネス戦略
- 特別補講 :選考中
6月22日・販売開始!【図解】これ1枚でわかる最新ITトレンド・改訂第5版
生成AIを使えば、業務の効率爆上がり?
このソフトウェアを導入すれば、DXができる?
・・・そんな都合のいい「魔法の杖」はありません。
神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO
8MATOのご紹介は、こちらをご覧下さい。
- もうすぐ消滅するという人間によるコード生成について
2024年のノーベル化学賞受賞者として、米Alphabet傘下の英Google DeepMindのDemis Hassabis氏とJohn Jumper氏、米ワ...
- DXの本質とITの「あるべき姿」
はじめに 「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉は、登場から20年が経過し、ビジネス界でもここ10年ほど広く使われるようになりました。しかし今な...
- 「2025年の崖」が迫る日本:抜本的変革なくして崖を登ることはできない
不確実性の時代へ/過去の「当たり前」を疑う必要性 かつて世界は予測可能な成長を前提として動き、日本は安定的な拡大を続けることで競争力を発揮してきました。ところが...
- ワーク・イン・ライフ:終身雇用の終焉に向きあうために
ある日、ピカソが歩いていると、1人の女性が彼を呼び止めた。彼女はピカソの大ファンだといい、用意した紙に「絵を書いてくれないか?」と尋ねる。 ピカソは小さくも美し...