これまでのSIビジネスの延長線上に、ポストSIビジネスを描くことはできません。これについては、このブログでも度々お伝えしてきたところです。その理由のひとつとして、「競争」の相手や方法が変わりつつあることが挙げられます。
グローバル競争との対峙
2013年、OECDが発表した労働生産性調査によれば、我が国の労働生産性は、加盟34カ国中21位で、一位のルクセンブルクの約5割、3位の米国の約6割程度しかありません。つまり、投入した労働力に対して得られる価値が諸外国に比べて極めて少ないという現実です。
以前のブログでも示したように、我が国の生産年齢人口の減少は、「労働力の喪失」を招きつつあります。また、ビジネスのグローバル化は、必然的に海外との競合を招きます。
オフショア開発やクラウドは、まさにこの現実を突きつけています。グローバルとの競合は避けることはできません。そのためにも、これまでとは異なるビジネスのシナリオが必要となるのです。
競争原理の変化
1970年から1980年代の日本の労働生産性は世界一位でした。しかし、現在は先に示したとおりです。この現実は、日本企業のビジネス・モデルそのものが劣化傾向にあることを物語っています。つまり、高度成長期から行われているビジネス・モデルではどれだけ努力しても、負荷価値を生み出すことが困難になってきているという事実があるのです。
かつて我が国は、「いいものを、安く、大量に作ること」すなわち「費用対効果」を追求することで、高度経済成長を成し遂げてきました。しかし、モノは広く行き渡り、単純な費用対効果では、モノを買わなくなってしまったのです。また、経済成長と共に労働単価が上昇したことで「費用対効果」さえも出せなくなってしまい、モノ作りは労働単価の安い新興国へシフトしてしまいました。
情報システムもこのようなユーザー企業の状況と同期しています。つまり、コスト削減や期間短縮を目的としたシステム開発は、ほぼ一巡してしまい、需要は減少しています。ここでも、単純な費用対効果が、需要に結びつかない現実に直面しているのです。
一方で、ユーザー企業のビジネス・モデルの変革や競争力の強化にITをどのように活かすかが求められるようになってきたのです。
さらに、SNSやモバイル、インターネットの普及など、新たなテクノロジーの登場により、社会環境やビジネス環境が変化したことで、価値観やニーズも大きく変化しています。
この要請にSIビジネスも応えてゆかなければなりません。しかし、他社との差別化もままならず、工数を提供するだけのビジネスに依存していては、この要請に応えられないことは言うまでもありません。
異業種との競合
航空会社が、お客様に提供する価値を「空港から空港へヒトやモノを移送すること」だと考えれば、競合は他の航空会社です。しかし、「地理的に遠く離れた場所へヒトやモノを移送すること」だと定義すれば、高速鉄道や長距離高速バスも競合になります。さらに「地理的に遠く離れた場所とコミュニケーションすること」だとすれば、テレビ会議システムが競合になり、「地理的に離れた場所にあるものを手に入れること」とすれば、インターネット通販や3Dプリンターも競合となります。
また、人工知能やロボットの進化は、これまで人間にしかできないと思われていた仕事を代替してゆくでしょう。たとえば、無人で走る自動走行車は、タクシーやトラックの競合となるでしょう。また、プログラム開発やシステムの運用も人工知能やクラウドに置き換えられてゆきます。つまり、これまで競合を意識してこなかった相手が、テクノロジーの進化と共に新たな競合として市場を奪い合うことになるのです。もはや競合は同業だけではないのです。
「自分達のビジネス価値は何か」を改めて問い直す必要があります。その上で、新たな競合をも意識した競争のシナリオを描く必要があるのです。この現実は、もはや避けられるものではありません。これに、真摯に向き合い、具体的な施策をどんどんと繰り出していかなければ、手遅れになることはさけられないのです。
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【ビジネス編】(67ページ)
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