「お客様に楽しんで頂けることが、なによりも嬉しいですね。」
サイボウズのkintoneを使った定額受託開発を仕掛ける株式会社ジョイゾー 代表取締役社長 四宮 靖隆 氏は、自分たちの看板サービス「システム39(サンキュウ)」について次のような話をしてくれました。
「お客様にオフィスに来て頂き、一緒に画面を見ながらシステムを作ってゆきます。初回は、お試しということで、2時間を無料でやらせて頂きます。それで、ご納得頂ければ、2時間×3回、最初の2時間を入れて合計8時間で39万円の定額です。この工数でできることをやります。」
なぜ、そんなことをやろうと思ったのでしょうか。
「お客様は、業務のプロとして、どうしてもしたいことがあります。しかし、それをシステムの専門家に伝えようとしても全部は伝えられません。従来型のシステムインテグレーションの限界は、ここにあると思っています。ならば、業務のプロの話を聞きながら、その場で画面イメージを見せ、作り込んで行けばいいんです。」
kintoneならできる。kintoneを見て、そう思ったそうです。このユーザーインターフェースなら、お客様にもご満足いただけるはずだと直感したのだそうです。それが、このサービスをはじめる切っ掛けとなりました。
「クラウドに賭ける!サイボウズの青野社長が、そんな話をされていました。私もそういう時代が来たのだと思ったんです。だから私も賭けてみようと思ったんです。小さな会社ですから、何でもできる訳じゃありません。だから、私もリスクをとって、これに賭けてみることにしました。おかげさまで、多くのお客様にご利用頂けるようになりました。」
しかし、kintoneでできないこともあるのではないでしょうか。それで、お客様は、満足されるのでしょうか。
「もちろん独自のプログラムを作って足りない機能を補ったり、JavaScriptを駆使して見栄えをもっと良くしたりといったことは、やろうと思えば、いくらでもできます。しかし、システム39では、Kintonの基本機能だけを使ってやってみます。その方が、限られた時間の中でより多くのことができますし、作った後の修正もお客様ご自身ができるようになります。また、システムのプロとして、作らない方が良いと言うこともはっきり申し上げます。なんでもつくればいいというものではありません。むしろ、そのほうが仕事の効率や効果が上がる場合もあります。そのために、お互いに知恵を絞ります。」
お客様は、それを楽しんでくれているそうです。成果が目に見えるから、お客様は、楽しめるのでしょう。だからエンジニアも楽しく仕事ができます。それが意欲につながり、成長につながる。そんな好循環が生まれているのだそうです。
「システム39は、70点を狙っています。お客様が、これは絶対に外せないと思っているものを確実に作ることです。しかし、実際に使ってもらわなければ、本当に使えるものにはなりません。だから、まずは、使えるものを作り、使ってもらって現場の声を聞きながら完成度を上げてゆけばいいんです。そのためにも、お客様自身が、使い始めた後、自分で手直しできるようにしておくことが大切です。」
しかし、それでは、仕事は増えないのではないですか。
「お仕着せがましいのは、嫌いなんです(笑)。でも、必要になったら頼ってもらえます。次はこんなことをやりたい、こんな機能を追加して欲しい、こんな画面にして欲しいといったご依頼も少なくありません。だから、そんなご要望にお応えしようと、20万円定額のサービスを作りました。」
しかし、このようなやり方では、できる人の頭数以上に仕事を増やすことはできません。ビジネスをスケールさせることが、できないのではないでしょうか。
「お客様にご満足頂けないのであれば、意味がありません。数をこなして品質が落ちてしまうようでは、本末転倒です。だから、会社を大きくすることを優先したくはないんです。ただ、いろいろと考えています。実は、kintoneであれば、必ずしもバリバリのエンジニアでなくても、人の話が聞けて、業務を整理できる能力があれば、開発できるので、そういう人を増やしてゆこうと思っています。例えば、子どもを抱える主婦で、フルタイムは無理だけど、お客様との作業時間だけ仕事をしてもらうことだってできます。また、地方のお客様とSkype越しに会話しながら作業をしたりしています。」
予定期間より早く終われば、費用を減額することもあるそうです。また、Skypeであれば、移動時間もなく効率も上がりますから、費用を安くすることも考えているそうです。
しかし、Kintonは誰でも使えるし、このやり方を真似る会社も現れるのではないでしょうか。差別ができなければ、価格競争になるだけです。
「システム39や自分をどれだけ露出せられるかがまずは勝負だと思っています。多くの人に、存在を知って頂ければ、ブランドを作ってゆくことができます。もうひとつは、数をこなすことです。数をこなし、ノウハウを蓄積し、様々なお客様のニーズを的確に理解でき、即座に応えられれば、それは強力な武器になります。また、そのノウハウを部品化して、きめ細かな需要にも対応できるようにしようと思っています。kintoneに熟知し、案件もこなしているからこその差別化です。」
いまは、システム39を成功モデルにしたいと考えているそうです。そのために、いろいろと新しいことを試してみようと考えているそうです。
「情報システム部門は、減点評価の組織なので、どうしても保守的にならざるを得ません。新しいことをしようということには、なかなかなりません。だから、クラウドのkintoneや定額制は、受け入れてはもらえません。結局は、業務部門が、お客様になります。差し迫った業務上のニーズが解決できるのなら、新しいことにも挑戦してくれます。」
しかし、これでは情報システム部門を敵に回すことになるし、シャドーITが増えて、ガバナンスの問題も出てくるのではないでしょうか。また、基幹業務との連携も求められるのではないのでしょうか。
「動かない情報システム部門にユーザー部門は期待しません。だから、私たちに相談が来るんです。ただ、ほんとうにこのままで良いいのかどうかは、私も分かりません。やりながら答えを出すしかないと思っています。また、基幹業務との連携は、開発するのではなく、DataSpiderなどのシステム連携ツールを使えばできるので、そうやって対応しています。」
SIerに煙たがられることはないのでしょうか。
「SIerには、むしろ自分たちにできないことを補完してほしいと依頼されることはあります。しかし、下請けに入れば、実際に使うユーザーとのコミュニケーションが難しくなり、その手間もコストも掛かります。だから、下請けならお断りするか、コミュニケーション・コストが掛かる分、通常よりも高い料金設定にしようと思っています。」
あくまでも、お客様の納得と満足を大切にする。そのためにユーザーと一緒になって開発を進めてゆこうという考え方は、ユーザー自身を育て、内製力を高めようという取り組みとも言えるでしょう。
業務のことは業務のプロが自らできるようになれば、それが一番です。そのためには、それを支えるツールが必要です。そして、いざとなったら助けてくれるシステムのプロがいて欲しいと考えるでしょう。そんな手立てをお客様に提供しようという取り組みなのかもしれません。
お客様は、確実に成果を実感できます。そして、傍らにいて一緒になって開発するエンジニアも、そんなお客様の実感を直接肌で感じることができるのです。そうやって、システム開発を一緒に楽しむことができる。そんな経験が、お客様もエンジニアも共に育ててくれるのかもしれません。
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目次
- 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
- 第1章 クラウドコンピューティング
- 第2章 モバイルとウェアラブル
- 第3章 ITインフラ
- 第4章 IoTとビッグデータ
- 第5章 スマートマシン