「お客様が、求めているのはデータやツールではありません。何をすれば良いかの答えを求めているんです。」
帳票の作成や運用を支援するSVFやビジネス・インテリジェンス(BI)アプリケーションであるDr.Sum EA、MotionBoardなどを提供するウイングアーク1st株式会社 営業本部 ソリューションビジネス推進部 部長の中土井利行氏は、自分達のこれからのビジネスについて、次のような話をしてくれました。
「私たちは、これまで帳票製品やBI製品の開発や販売、そのインテグレーション・ビジネスを手がけてきました。国内では、この分野での先駆けと言うこともあって、堅調にビジネスを伸ばしてきました。しかし、競合製品の台頭は、いずれ大きな脅威になると考えています。」
競合に対抗するためには、魅力的な製品を提供し続けなければなりません。しかし、IT製品である以上、いずれはコモディティ化し、製品の機能や性能だけの競争で成長を維持できる収益を確保し続けることは、難しくなるでしょう。
「私たちは、お客様に製品を使ってもらうことではなく、お客様の業務に活かして成果をあげて頂くことがゴールだと考えています。ですから、業務の現場で使える仕組みに仕立て上げるインテグレーション・サービスも手がけ、製品だけではない価値をお客様に提供しています。」
しかし、クラウドの普及で、お客様のコストへの要求は、ますます厳しくなるはずです。確かにインテグレーション・サービスは、ひとつの付加価値ではありますが、ソフトウェアを使いこなせるお客様にしてみれば、安価なクラウド・サービスへとシフトしてゆくことは、避けられません。
「クラウドの普及は当然のことで、自分達にコントロールできるものではありません。むしろ、クラウドへの対応を躊躇している方が、よほどリスクだと考えています。ですから、私たちは、パッケージ製品ベンダーとしては、かなり早い時期から、自分達の製品をクラウド・サービスとして提供をはじめています。」
主力製品である帳票製品・BIツールのクラウド・サービス上での動作保証、MotionBoardのAWSマーケットプレイスへの掲載、月額提供サービスの提供など、クラウドへの対応にも積極的に取り組んでいるのだそうです。
しかし、製品のプラットフォームが、オンプレミスからクラウドへ移っただけでは、競合他社が同じことをすれは、同様の競争が始まるだけではないのでしょうか。
「いま、私たちは、コンテンツに力を入れています。新しくはじめた、“3rd Party Data Gallery”は、そのための取り組みなんですよ。」
“3rd Party Data Gallery”とは、国や自治体により公開されたパブリックデータや民間企業、調査会社からの第三者データを取りそろえ、自分達が提供するBIクラウド・サービス“MotionBoard Cloud”で使ってもらおうというものです。
「自社で保有するデータだけでの分析ではなく、外部のデータと重ね合わせて比較できるようにすることで、自分達のビジネスを客観的、多角的に「見える化」しようというサービスです。」
確かに、欲しいデータが取りそろえられていて、そこに行けば手に入る便利さは、理解できます。しかし、それだけなら、インターネットでデータを探せば、無料で手に入れることもできるのではないでしょうか。また、必要なデータだけを調査会社から購入することだってできるはずです。
「最近、国や自治体は、行政活動で集めたデータをオープン・データとして公開する取り組みを進めています。しかし、データの形式や構造が、様々であったり、数値計算には使えないデータが混在していたりと、そのままでは使えません。私たちは、そういうデータを解析計算に使えるように作り直しています。」
しかし、そのような作業は、機械的な作業なので、ある程度自動化できるのではないでしょうか。それが、大きな付加価値とは、とても思えません。
「データを解析し、それを『見える化』して、ビジネス上の意志決定を確実に行えるようにするためには、どのような目的で、そのデータを扱うのか考慮した上で、データの品質を保証しなければなりません。例えば、ある自治体の人口分布を小さな正方形のメッシュに分割して、計算しやすいように加工する場合、ひとつの正方形が、自治体同士の境目に掛かってしまいます。そういうとき、どういう処理をすれば、実態を最も正しく反映しているかを考えてデータ化しなければなりません。そこには、ビジネス目的や解析ノウハウといった、専門的なスキルが必要なんです。」
経験や勘に頼っての意志決定ではなく、データに基づく意志決定を行えるようにすることが、BIの目的です。その元となるデータの品質を保証できなければ、BIの価値は、ありません。そこには、長年のBI製品の開発やお客様の業務に関わってきたことで培われたノウハウや知恵が不可欠だったのです。
「お客様からの引き合いのほとんどは、『何をすれば良いのか教えて下さい』というものです。『役に立ちそうなデータがほしい』、あるいは、『どのツールがいいのでしょうか』ではありません。私たちの役割は、この『何をすればいいか』にお応えすることです。だから、データだけを提供しているわけではないんですよ。そういうご要望にお応えできる『使えるデータ』を整備し、品質を保証し、『何をすればいいか』のノウハウをテンプレートにして提供し、お客様の期待に応えようと取り組んでいます。」
パッケージ製品ベンダーは、これまで、お客様にシステムを使ってもらうことを仕事としてきました。しかし、クラウドの普及やオープン化の流れの中で、競争は、益々厳しくなり、コモディティ化も加速しています。そういう中で、製品やサービスの機能と性能だけで、競争力を維持できる期間は、急速に短くなっています。パッケージ製品ベンダーは、いまそんな壁に直面していると言えるでしょう。
この壁を突破し、競争力を保ちづけるためには、経営や業務のノウハウをサービスとして提供し、『何をすればいいか』にお応えすることです。それができれば、容易なことでは、競合他社に真似はできません。ウイングアーク1stは、それをデータやテンプレートといったコンテンツで実現しようというのです。
「システム・ソリューション」から「ビジネス・ソリューション」へ。彼らは、お客様に提供する価値を定義しなおし、新たな競争を仕掛けようとしているようです。
「最新のITトレンドとビジネス戦略を最新版に更新しました。
テクノロジー編【2015年7月版】(292ページ)
*新規ページを18ページを追加し、全292ページとなりました。
*最新の解説文を25ページ追加した。
・新たにERPの章を設け、18ページのプレゼンテーションを追加
・IoTおよびITインフラ(仮想化とSDI)に関するプレゼンテーションを一部改訂し、解説文を追加
・アナリティクスに関するプレゼンテーションを改訂し、解説文を追加
新入社員研修でご活用下さい!
「情報と処理の基礎は教えているが、クラウドやIoT、
ビッグデータは教えていません。」
そんなことで新人達が現場で戸惑いませんか?
平易な解説文と講義に使えるパワーポイントをセットにしてご利用
「【図解】コレ1枚で分かる最新ITトレンド」に掲載されている100枚を越える図表は、ロイヤリティ・フリーのパワーポイントでダウンロードできます。自分の勉強のため、提案書や勉強会の素材として、ご使用下さい。
目次
- 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
- 第1章 クラウドコンピューティング
- 第2章 モバイルとウェアラブル
- 第3章 ITインフラ
- 第4章 IoTとビッグデータ
- 第5章 スマートマシン