「長年、契約書や図面などの文書管理システムに関わってきました。そんな現場の業務知識やノウハウがあるから、他社にはそう簡単にまねができません。それこそが、このサービスの強みなんです。」
新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)の文書管理クラウド・サービス「NSxpresⅡ」が、契約数を伸ばしています。そのビジネスの責任を負うITインフラソリューション事業本部・営業本部のグループリーダー・久松延吉氏は、力強くそう話してくれました。
ただ、何処にでもありそうな文書管理システムのようにも見えのですが、なぜこれほどまでにお客様を増やしているのだでしょうか?
「NSxpresⅡは、クラウド・サービスを提供しているわけではありません。文書管理サービスを提供しているんです。ご存知のように、捺印された公的な紙の契約書や建築図面は、法令によって長期保管が義務づけられています。これら文書を安全に保管し、必要な時にいつでも検索し、参照、印刷できるサービスを提供しているんですよ。」
お客様は、このような文書を大量に抱えています。そのために、大きな企業では、「文書管理室」のような専門の組織を持ち管理しているところもあるのだそうです。また、管理するためのシステムにも投資が必要です。そこで、NSSOLは、紙の原本を管理する倉庫業務、その文書のスキャンニング業務や必要な管理情報を文書管理システムに登録する業務をセットにしてサービスとして提供しています。これがNSxpresⅡなのです。
「全ての文書をスキャンしてシステムに登録すれば、手間もかかりストレージも必要になります。それは当然コストとしてお客様の負担となってしまいます。そこで、私たちは、頻繁に検索や参照が必要な文書だけをスキャンして保管しています。それ以外は、管理情報だけをシステムに登録し、原本を倉庫に保管しています。紙の原本は、保管だけならミカン箱1個、つまり1万数千枚の文書で月額百数十円程度ですみますからね。もし、お客様が検索して、スキャンされた文書がない場合は、スキャン依頼ボタンが表示されます。それを押してもらえれば、3時間以内にスキャンして登録するようにしているんです。」
「実際の人手が掛かる業務は、倉庫業者さんにお願いしています。彼らとしても業務の付加価値が高まり、収益拡大にもつながるので、お互いにメリットがあります。」
なるほど、「長年の現場の業務知識やノウハウ」が、強みだという意味がよく分かりました。業務の現場で何が行われているのか、何処に課題があるのかに熟知しているからこそ、どのようなビジネス・プロセスにすれば、お客様の課題を解決できるのかを、システムの目線ではなく業務の目線から考えた解決策、それが、NSxpresⅡなのです。
「文書管理の基本的な仕組みは、どのお客様でも変わりません。しかし、管理の仕方やルールは、まちまちです。だから、お客様毎に業務要件を定義し、個別に提供しています。特に法令に従わなくてはならない文書は、いずれのお客様も気を使います。だから、こういう対応が不可欠になるんですよ。」
SI事業者であるが故の強みを発揮しなければできないところです。しかし、法令に関わる文書に的を絞ることは、ビジネスのチャンスを狭めることになるのではないでしょうか。
「こういう差別化ができているからこそ、他社には簡単にまねができません。普通のビジネス文書の管理なら、もっと安いシステムやサービスがありますからね。そことの差別化を明確にしなければ、使ってはもらえません。」
お客様に文書管理に必要な機能を提供しそれを使わせる「システム・ソリューション」ではなく、自らがシステムを使って業務上の課題を解決する「ビジネス・ソリューション」を提供する。これが、NSxpresⅡと言う「サービス」の本質なのです。ただ、課題もあるというのですが、それは、現場の反発だそうです。
「業務効率も上がり、コストも下がります。しかし、それは同時に、文書管理業務に関わる人たちや組織を不要にするということです。また、子会社にこのような業務を委託しているところもあります。自分達の仕事を奪うのかと言うことになり、そういう現場からは反発されることも少なくはありません。」
「クラウド・サービス全般に言えることですが、このようなサービスを使えば、業務効率は上がります。しかし、社員がこのような業務に関わっている場合、人件費が減るわけではなく、直接的なコスト削減につながりません。表向きの費用対効果が上がらないので、経営者を説得しにくいんですよ。」
それでも、引き合いが増えているのはなぜなのでしょう。
「東日本大震災以降、DR(災害対応)への関心が高まっています。あの時、大切な文書が喪失したり、社内の文書管理システムが止まってしまって復旧修理のためにすぐに必要な建築図面が取り出せなかったりといった事態が起きました。自分達で保管、管理することが大きなリスクなることが認識されるようになったんですね。」
お客様の現場のニーズを的確に捉えてメッセージを発信してゆく。それが、お客様を増やす鍵となっているようです。
「私たちの事業本部は、インフラの構築や付帯するサービスの提供が、主なビジネスです。しかし、ハードウェア価格の低下やクラウドの普及により、従来のビジネスは伸び悩んでいます。また、オンプレミスのシステムは、5年でリース更改になり、そこでまた競合との価格競争を強いられます。だから、どんどん利益が取れなくなるし、ビジネスを失うこともあります。しかし、このような業務の現場まで入り込んだサービスを、お客様が一旦使うと、決して他に乗り換えようとはされません。だから長期安定的に収益を上げ続けることができます。しかも、文書は増えることはあっても減ることはありませんから、既存のお客様であっても継続的に売上の拡大につながるんですよ。確かに、オンプレミスの方がひとつひとつの案件の売上金額は大きいですが、粗利では負けません。」
オンプレミスのシステム構築やサポートのビジネスは、どんどんと厳しさを増しています。これを「サービス」で代替しようという考えは、何処にでもある話です。しかし、彼らは、それを本業のインフラの範疇にとどめず、より上位の業務にまで拡げサービスとして提供しています。しかも、お客様にシステムを使わせるのではなく、自らがシステムを使ってビジネス・ソリューションを提供するという視点です。
インフラに何の付加価値も与えず、ハードウェア提供からサービス提供に変えたところで、コモディティデあることに変わりはなく、はいずれ価格競争に陥ります。そしてまた、新たな競争を強いられることになるのは避けられません。NSxpresⅡの取り組みそんな競争の土俵を変えようという取り組みでもあるのです。
SI事業者であることの経験とノウハウを活かし、新たな収益の基盤を作ろうというNSxpresⅡは、ポストSIビジネスのひとつの選択肢として参考になるでしょう。
「最新のITトレンドとビジネス戦略(全326ページ)」を最新版に更新しました。新規追加のプレゼンテーションは6枚ですが、新しい解説文を24ページ追加し、全てロイヤリティ・フリーとさせて頂きました。ご活用下さい。
テクノロジー編【2015年5月版】(271ページ)
新規ページを6ページ、最新の解説文を24ページ追加しています。
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ビジネス戦略編【2015年5月版】(55ページ)
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目次
- 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
- 第1章 クラウドコンピューティング
- 第2章 モバイルとウェアラブル
- 第3章 ITインフラ
- 第4章 IoTとビッグデータ
- 第5章 スマートマシン