「ワークスタイルを変えたいんです!」
AWSに特化したシステムインテグレーターとして業績を伸ばしている株式会社サーバーワークス 代表取締役 大石良氏は、目を輝かせながら、この会社の理想を語ってくれました。
「東日本大震災直後、システムの復旧や点検のためにデータセンターに行かなければならなかったエンジニアは多かったのではないでしょうか。自分や家族のことも心配しなきゃならない時に、わざわざ出かけていかなければならなかったんです。そうじゃなくても、インフラの構築や運用にエンジニアが張り付かなきゃいけない。それって、人間が、機械の奴隷になっているみたいなものじゃありませんか。クラウドを使えば、場所から解放され移動のための時間がいらなくなります。ルーチンワークだって少なくなります。つまり、移動やルーチンワークのための時間を、知恵を使う時間に変えることができるんですよ。」
エンジニアが生みだす価値は「知恵」、それを生みだすワークスタイルを支えるのがクラウド、その仕組み作りをお手伝いすることが、自分達の仕事だとの想いが伝わってきます。最近、AWSのWorkSpace(個々人が使用するPCをクラウド上で稼働させアプリケーションやデータをネットワーク越しに使用するサービス)をお客様に積極的に提案しているのも、セキュリティを心配せず、どこでも仕事ができるワークスタイルへの変革を促すためだそうです。
しかし、システムを所有し、それを運用、保守することが、自分達の存在意義だと考え、抵抗する情報システム部門もあるのではないでしょうか。
「私たちは、AWSを使っていますが、その機能や性能は、自社で構築した場合に比べると大リーグと草野球ほどの違いがあります。もはや太刀打ちできるものではありません。それをうまく使いこなす方が、よほど経営に貢献できると思うんです。時代と共に仕事の役割が変わってゆくのは、情報システム部門だけのことではありません。だからこそ、自らの役割を変えてゆくべきだと思いますし、私たちは、そのお手伝いをしたいんです。」
確かにその通りだが、そう簡単に現場が変われるとは思えません。
「あるCIOは、情報システム部門の仕事から、あえてインフラを外すためにクラウドを使おうとされています。そうすることで、強引に部員達の役割を戦略や業務、ITガバナンスなどの上流にシフトさせようとしているところもあります。情報システム部門に新たな役割を担ってもらい、彼らをエンパワーすることで、彼らの存在価値を高めることができます。」
シャドーITが広がり、ITガバナンスが効かなくなっている企業も増えてきています。そんな中で、情報システム部門の人たちが、クラウドを使うことで、知恵を働かせる時間を増やし、自らをエンパワーして、戦略やITガバナンスに貢献できるようにすることを訴えているそうです。
でもなぜ、AWSなのでしょうか。他の選択肢もあるはずです。
「Javaがそうであるように、AWSは、もはやビッグ・コミュニティになっています。ですから、仮に私たちがやらなくても、お客様はいくらでも他の会社に仕事を任せることができるようになってきました。そういう安心感が、AWSにはあるんですよ。」
しかし、2008年にAWSに特化すると宣言されたときには、まだそんな時代ではなかったのではないでしょうか。
「その通りです。最初の頃は、赤字続きでした。しかし、AWSを使ってみて、そのパワーに圧倒され、辞められなくなってしまったんです。だから諦めませんでした。最初は苦労もありましたが、お客様も同じことを感じられているようで、事実、280社の私たちのお客様で、AWSを辞められたところは一社もありません。そんな、不可逆性が、AWSにはあるんです。」
しかし、AWSは、どんどん運用の自動化や自律化の機能を増やしています。そうなれば、主な収益源である運用サービスもAWSに吸い上げられてしまうのではないでしょうか。また、ビッグ・コミュニティになれば、競争も激しくなります。
「もちろん、その心配はあります。しかし、AWSにはいろいろなサービスがあり、それをどう組み合わせて使えば良いかは、お客様毎に違います。また、AWS以外にも様々なクラウド・サービスが登場し、多様な組合せの選択肢の中から、最適な組合せを提供できなければなりません。そのための知識と目利き力への期待は、なくなることはありません。私たちは、そのためにクラウドについての幅広い知識を持たなくてはならないと考えています。しかも、需要は急速に拡大しています。その需要に自分達だけで応えられるわけではありません。同業が増えてきても、それ以上に需要は拡大しているので心配はしていません。ただ、同時に、他には絶対に負けないと言えるスキルも持っていなければならないと思っています。」
アルファベットの“T”の字のような力を持つことが、大切だとのことでした。クラウドについての幅広い知識と目利き力がTの横棒で、AWSの設計、構築、運用を垂直統合できるスキルがTの縦棒、このふたつのスキルを駆使してお客様毎の最適な組合せを提供できることを自分達の強みにしてゆこうと考えているとのことでした。まさに「システムインテグレーター」の本来の役割をクラウドで発揮しようというのです。
「工数商売のインテグレーターや自動化がすすむ運用の仕事は、いずれは、少なくなくなるでしょう。また、競合も増えてゆくと思います。そこで、私たちは、“Cloud Automator”という、運用自動化サービスの提供をはじめました。自分で自分の首を絞めるようなシステムですが、お客様のニーズは、間違えなくあります。」
お客様のニーズがあれば、それに応えてゆくことが、ビジネスの鉄則です。
「“Cloud Automator”は、サービスですから、世界にビジネス・チャンスを拡げることができます。例え国内での競争が厳しくなっても世界に市場を拡げることで、ビジネスを拡大できると考えています。私は、ここに自分達の未来があると思っています。」
クラウドでのビジネスを考える時、お客様は、日本だけではありません。しかし、そんなことは、分かっていても、具体的なカタチを作り行動している企業は、必ずしも多くはありません。
「クラウド利用の有無で企業の収益が2倍違うというレポートを見たことがありますが、全くその通りですね。私たちのお客様280社は、どこも大変業績が良いんです。おかけで、お客様からのお支払いが、滞ったこととは一度もありません。これは、クラウドのコストパフォーマンスの高さというよりも、新しいことに積極的に挑戦してゆこうというメンタリティが、その会社にあるからなんじゃないでしょうか。クラウドですから簡単にトライ・アンド・エラーできますから、それを繰り返して、どんどん良い仕組みが出来上がってゆきます。だから業績も伸びるんじゃないかと思っています。」
挑戦してゆく企業風土、そして、それを実践する行動力が、業績を伸ばす原動力になっているという話は、なにもユーザー企業にだけ当てはまることではありません。
決して、大きな会社ではないサーバーワークス、だからこそ、自分の得意をしっかりと見定めてそれを極めてゆこうとしています。それが、彼らの強さの源のようです。また、なによりも、「ワークスタイルを変えて、働く人たちの価値を高めてゆく」といった理念があるからこそ、そこで働く人たちも、そしてお客様も巻き込んでゆくことができるのではないでしょうか。
「将来は、シルバーワークスという会社を作ろうと思っています。そこでは、経験を積んだ50歳以上のベテランしか採用しません。彼らにしかできないコトを仕事にする、そんな場を作りたいんです。」
働く人を大切にしたい、そんな仕事への姿勢が、この会社の原動力であり、魅力でもあるようです。
「最新のITトレンドとビジネス戦略(全326ページ)」を最新版に更新しました。新規追加のプレゼンテーションは6枚ですが、新しい解説文を24ページ追加し、全てロイヤリティ・フリーとさせて頂きました。ご活用下さい。
テクノロジー編【2015年5月版】(271ページ)
新規ページを6ページ、最新の解説文を24ページ追加しています。
・これからのオフィスインフラを追加しました。
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・コレ一枚でわかるIoTとビッグデータを改訂しました。
・IoTとモノのサービス化を追加しました。
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・プレゼンテーション(24ページ)の「ノート」に最新の解説文を追加致しました。こちらも合わせてロイヤリティフリーでご活用下さい。
ビジネス戦略編【2015年5月版】(55ページ)
新規追加はありません。誤字脱字の修正、解説文の訂正を行いました。
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目次
- 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
- 第1章 クラウドコンピューティング
- 第2章 モバイルとウェアラブル
- 第3章 ITインフラ
- 第4章 IoTとビッグデータ
- 第5章 スマートマシン