- 法人ビジネスの営業は、英語でSalesとは、言わない。ただの販売員ではない。Sales Representativeといって、「会社の代表として取引に責任を持つ人」という意味がある。
- 営業とはお客さまの「困った」の相談相手であり、それを解決するプロデューサーだ。
- 「伝えた」という自分の満足で終わらせるな。「伝わった」という相手の真実を確認してこそ、コミュニケーションは成立する。
新入社員達は、こんなオヤジの小言にも耳を傾けてくれる。自分たちが未熟者であるという自覚を持っている彼らにとっては、ひとつひとつの言葉は、新鮮な響きとなって吸い込まれてゆくのだろう。その素直さが彼らを成長させる。
「君たちは、タダメシを食らっている。いつまでもそれでいいのか。恥ずかしいとは思わないのか。はやく、この屈辱から脱したいなら、寸暇を惜しんで勉強しなさい!」
このような言葉さえも、彼らには励みになる。
翻って、私たち「大人」はどうなのだろう。いったい何を知っているのだろうか。何ができるのだろうか。
お客さまの経営や業務、社会やITのトレンドは、日々に移りゆく。今まで常識と思っていたことが、あっという間に非常識になっている。気がつけば知らないことだらけだ。かつての成功体験を後生大事に愛でている間に、新入社員と同じ「未熟者」になってはいないだろうか。ただ、新入社員のように「未熟者」であることに自覚がないとすれば、もはや成長はできない。
ある大手ITベンダーで、経営幹部の方から以前リストラをされた時の話を伺った。そのとき、だれを退職させるかを評価するに当たり、次のような3つのランクをもうけたそうだ。
(1)3年後にこの会社にいてもらわないと困る人。
(2)今いてもらわないと困る人。
(3)今も代替がきき、3年後に期待できない人。
(3)の方を退職勧告の対象としたそうだ。その数は、2割ほどになったという。結局、そのうちの1割ほどの方が退職されたそうだ。
IT業界は、常に新しい技術やビジネスが生まれている。その一方で、コモディティ化も早く、入れ替わりが激しい。このような変化のただ中にあって、過去の常識など、あっという間に通用しなくなる。
ITビジネスは、今大きな転換点にある。ITは、これまでの「効率や生産性」を高める改善の手段から、「スピード、変革、差別化」といったビジネス価値を生みだす手段へと、その役割の重心をシフトし始めている。
前者であれば、「現状」という基準が有り、これを改善するわけだから、計画も立てやすくKPIを定めることができる。だから、スケジュールを管理し、KPIを守るためのプロジェクト・マネージャーが必要になる。しかし、後者は、何が成功かを予め決めることができない。そのため計画は意味をなさず、KPIを定めることもできない。当然、従来型のプロジェクト・マネージヤーは機能せず、むしろ、アジャイル開発のような状況の変化に即応できるプロジェクトの進め方が必要となるだろう。
計画ができないわけだから、工数の積み上げなどという金額の算定はできない。スピードや変革、差別化となると、変更に即応することを前提にビジネスの仕組みを考えなくてはならない。仕事のやり方は変わり収益の構造が変わるのは、必然だ。
また、自動化や自律化の適用範囲は、インフラの運用からアプリケーションの運用へ、さらには開発やテスト工程にも広く適用されてゆく。これまで、「人間にしかできなかったこと」が、機械に置き換えられてゆく。当然、「工数」は縮小し、人の数を増やすことはますます難しくなるだろう。
一方で、受託開発の需要がおとろえることはない。むしろ、自社の独自性と競争力を追求する手段として、ITの存在価値が高まれば、需要はますます拡大する。しかし、加速するビジネス・スピードに同期化し、仕様の変更にも即応でき、ビジネスボリュームの変化にもダイナミックに追従できるシステムでなくてはならない。このようなシステムに従来型のビジネス・モデルでは対応できなくなる。
- PaaSやBRMSといった高速開発ツールの活用
- ウォーター・フォールからアジャイル開発へのシフト
- フロー収益重視からストック収益重視のビジネス構造への転換
- 工数提供に重心を置くビジネスから戦略・企画・設計などのコンサルティングや徹底した無人化を実現する自動化・自律化への上位下位への分散
- 製造業/建築業からサービス業の機能転換
- ・・・
このような変化を積極的に受け入れることだろう。
「(1)3年後にいてもらわなくては困る人」とは、このような変化への対応策を考え、実践に移せる人たちを言うのだろう。「(3)今も代替がきき、3年後に期待できないひと。」は、時にしてこのような変革を拒む。そうなれば、会社の3年後もないだろう。
新入社員は未熟であることを素直身受け入れている。そして、自らの未来を切り開こうと必死になっている。そんな彼らの態度に見習うこともあるのではないか。
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- IT企業に就職したが、現場の第一線でどんな言葉が使われているのか知っておきたい。
- 自分の担当する専門分野は分かっているが、世間の動向と自分の専門との関係が見えていない。
- 就職活動中だが、面接でも役立つITの常識を知識として身につけておきたい。
目次
- 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
- 第1章 クラウドコンピューティング
- 第2章 モバイルとウェアラブル
- 第3章 ITインフラ
- 第4章 IoTとビッグデータ
- 第5章 スマートマシン
【定員となり締め切らせて頂きます】ITソリューション塾【第18期】
2月4日より始まる「ITソリューション塾・第18期」に、多くのご応募をいだきありがとうございました。結果として、予定を上回る79名/26社のご参加となりました。「異なる会社の皆様が、志を同じくしながら時代の変化について考えてゆく。」そんな機会にしたいと思っています。次の第19期は、5月連休明けを予定しています。どうぞ、改めてご参加をご検討いだければと存じます。
最新ITトレンドとビジネス戦略【2015年1月版】を公開しました
ITのトレンドとビジネス戦略について、集大成したプレゼンテーションです。毎月1回、「テクノロジー編」と「戦略編」に分けて更新・掲載しています。
【2015年1月版】より「テクノロジー編」と「戦略編」の2つのプレゼンテーションに分けて掲載致します。
「テクノロジー編」(182ページ)
- ストーリー展開を一部変更しました。
- 「クラウド・コンピューティング」の追加修正
- Webスケールとクラウドコンピューティングについて追加しました。
- パブリック・クラウドとマルチクラウドの関係について追加しました。
- 「IoTとビッグデータ」の追加修正。
- M2MとIoTの歴史的発展系と両者の違いについて追加しました。
- ドイツのIndustry 4.0について追加しました。
「ビジネス戦略編」(49ページ)
- ストーリー展開を一部変更しました。
- 2015年問題の本質というテーマでプレゼンテーションを掲載致しました。
- 人材育成について
- 生き残れない営業を追加しました。
- エンジニアの人材育成について新たなプレゼンテーションを追加しました。
トップ10に選ばれした!
拙著「システムインテグレーション崩壊」が、「ITエンジニアに読んでほしい!技術書・ビジネス書大賞」のトップ10に選ばれました。多くの皆様にご投票頂き、ほんとうにありがとうございました。2月19日(木)のデベロッパーズサミットにて、話をさせて頂きます。よろしければお立ち寄りください。
「システムインテグレーション崩壊」
〜これからSIerはどう生き残ればいいか?
- 国内の需要は先行き不透明。
- 案件の規模は縮小の一途。
- 単価が下落するばかり。
- クラウドの登場で迫られるビジネスモデルの変革。