「サービス化」、「オープン化」、「スマート化」
これからのビジネスを牽引する3つのドライビング・フォースです。
これまで、ITビジネスは、「システムを作り、それを使わせる」ことを目的としてきました。しかし、サービス化を牽引するクラウドの普及は、この常識を大きく変え始めています。ITインフラの構築や運用管理、システムの開発や保守といった「システムを作り、それを使わせる」ビジネスは、クラウドというサービスに置き換わってゆきます。
また、オープン化を牽引するOSSの普及は、構築に伴うライセンス・ビジネスを喪失させ、スマート化を牽引する人工知能の登場は、開発・テスト・運用など人間にしかできなかった業務を代替してゆくでしょう。
このようなテクノロジーのトレンドに抗ったところで、それがユーザーを利するものである以上、無駄な努力です。ならば、むしろ積極的に、「サービス化」、「オープン化」、「スマート化」をビジネスに取り入れてゆくことに舵を切るべきです。
「システムを使い、サービスを提供する」ことをこれからのビジネスの目的に据えてみてはどうでしょうか。「サービス化」、「オープン化」、「スマート化」への対応を考えてゆく上での戦略的柱になるのではないかと思っています。
例えば、自らがIaaSやPaaSを使い、お客様の業務に即応できる「高速開発サービス」を提供してはいかがでしょうか。あるいは、文書管理システムを使い、その入力代行、原本保管のための倉庫業務を一体としたサービスの提供も考えられます。また、SaaSの適用を前提として、業務プロセスの改革を支援するサービスの提供もできるかもしれません。
人工知能を駆使した業務アプリケーションを構築し、そのシステムの維持、運用を提供するサービスも考えられます。MicrosoftのWindows Azure Platform で提供されるMachine LearningシステムやIBMのBlue Mixで提供されるWatsonなど、自らがテクノロジーを開発しなくても、これらサービスを利用して、自らのサービスを仕立て提供することも可能です。
IoTもそれを利用するためのプラットフォーム・サービスが数多く提供されており、それらをうまく組み合わせ、お客様の業務ニーズに最適化された組合せを自らサービスとして構築して提供するビジネスもできる時代を迎えています。
CADの要員を抱えているのなら、3Dプリンターを組み合わせて、短期即納型試作ビジネスを展開できるかもしれません。
これらは、どれも事例のある取り組みです。
自ら人工知能やIoTのテクノロジーを開発する。OSSやフレームワークの開発に貢献する。膨大なシステム資産を保有して独自のサービスを提供する。このようなビジネスもまたひとつの選択肢です。しかし、そのようなことを誰もができるわけではありません。ならば、「システムを使い、サービスを提供する」ことにこれからの事業の力点を据えることは現実的な選択肢と言えるのではないでしょうか。
しかし、このようなビジネスの収益構造は、サービスの価値への対価であって、これまで頼ってきた人月積算に頼ることは難しくなります。
それでも人月積算をこれからも求めるのなら徹底した技術の差別化、つまりは、誰もが手をつけられないような高度でニッチな技術や高い専門性で高額な単金を請求するビジネスへとシフトしてゆく必要があります。ただ、規模を稼ぐことはできません。
いずれにしろ人月積算型の収益構造を脱却する方向にビジネスを転換していかなければならないことだけは確かなようです。
「システムを作り、それを使わせる」から、自らが「システムを使い、サービスを提供する」ことで、新しい顧客価値を生みだすことに、自らの役割を再定義することから始めてみてはいかがでしょう。
そのためには、今の自分達には「何ができるか」ではなく、そのために「何をすべきか」を考え、どのようにして自分達の不足を補うべきか、その具体的な施策として組み立ててゆくことが必要です。「システムを使う」はその手段の1つになります。
このような取り組みをしてゆく上で、テクノロジーやビジネスのトレンドを正しく理解しておくことは、何よりも大切なことです。限られた経験の範疇を越えられず、過去の成功体験に引きずられてしまうようであれば、「何をすべきか」に正しい答えを出すことはできません。
そんなことを考えるご参考になればと、こんな記事を書いてみましたので、よろしければ合わせてご覧下さい。
- 2015年・ビジネスの変革を牽引するテクノロジー・トレンド(1/3)
- 2015年・ビジネスの変革を牽引するテクノロジー・トレンド(2/3)
- 2015年・ビジネスの変革を牽引するテクノロジー・トレンド(3/3)
- 2015年・ビジネスの変革を牽引するテクノロジー・トレンド(メイキング編)
「2015年問題」の最も深刻な問題は、新しいテクノロジーのトレンドに関わるチャンスを失わせ、来る次のトレンドに関わる準備時間をなくしてしまうことです。その意味を受け止めで頂ければ、明日「何をすべきか」ではなく、今日「何をすべきか」が見えてくるのではないでしょうか。
2015年2月4日(水)より開講するITソリューション塾【第18期】の募集に参加しませんか?
このブログでも紹介させて頂いたテクノロジーやビジネスに関する最新のトレンドをビジネスにどう結びつけてゆけば良いのかを考えてゆきます。そのための提案やビジネス戦略・新規事業開発などについても解説します。また、アジャイル開発でSIビジネスをリメイクした実践事例、クラウド時代のセキュリティとガバナンスについては、それぞれの現場の第一線で活躍される講師をお招きし、生々しくそのノウハウをご紹介頂く予定です。
きっと貴重なきっかけを手に入れられると思います。どうぞご検討ください。
詳しくはこちらをご覧下さい。また、パンフレットもこちらからダウンロードできます。
最新ITトレンドとビジネス戦略【2014年12月版】を公開しました
今回は解説文を大量に追加しました。プレゼンテーションの参考にしてください。また、新しいトレンドを踏まえ、プレゼンテーションを13ページ追加しています。無料にてご覧いだけます。
【2014年12月版】(209ページ)の更新内容は次の通りです。
- 「クラウド・コンピューティング」に解説文を追加しました
- 「仮想化とSDI」を「ITインフラと仮想化」に変更し、プレゼンテーションを大幅に追加しましたました。
- 「ITインフラと仮想化」に解説文を追加しました。
- 「IoTとビッグデータ」に解説文を追加しました。
- 「IoTとビッグデータ」に3Dプリンターの解説を追加しました。
- 戦略について一部チャートを変更し、資料を追加しました。
よろしければ、ご投票頂ければ幸いです m(_ _)m
拙著「システムインテグレーション崩壊」が、「ITエンジニアに読んでほしい!技術書・ビジネス書大賞」にノミネーションされました。お読み頂きました皆さんに感謝致します。
「システムインテグレーション崩壊」
〜これからSIerはどう生き残ればいいか?
- 国内の需要は先行き不透明。
- 案件の規模は縮小の一途。
- 単価が下落するばかり。
- クラウドの登場で迫られるビジネスモデルの変革。