「コンプライアンスで、なにをやるにもビクビクです。上司もやれと言っておきながら、問題が起きそうになると梯子を外すんですよ。そもそも、社内でこんな愚痴をこぼすことなんてできませんよ。ほんとうに窮屈です。」
ある若手営業がこんな愚痴をこぼしていました。「風通しの悪い組織」の典型的な姿です。これでは、組織の活力も削がれ、継続的な成長は望めません。一方で、とても活力にあふれた組織もあります。そういう組織についていろいろと調べてみると、「風通しの良い組織」である場合が多いようです。
両者には、どういう違いがあるのでしょうか。
行動原理や行動特性から考える
「風通しの悪い組織」は、「問題があってはならない」という意識に支配され、「問題が出ないように厳しく管理する」ことが組織の方針であり、行動原理となっています。そのため、不平を口にするのはルール違反であり、組織を混乱なく回すことが最優先と考えられるようになります。そして、あらゆる行動に牽制や抑制が働き、無難な対応しかできない組織となってしまいます。結局は、何をやっても成果はそこそこに、大きなビジネスを生みだすことは難しいでしょう。
また、問題があってはいけないから、問題が起きれば、なんとか表沙汰にならないようにと隠蔽化し、個人で解決しようという意識が働きます。しかし、解決できないままに深刻な事態へと向かってしまえば、ビジネスにも個人にも大きなダメージを与えることになるでしょう。
このような事態を避けようと、部下は自然と防御的行動をとるようにりまする。例えば、
- 上司の意見に合わせる
- 文句を言わず黙って従う
- 面倒な情報は上司に伝えない
当然、組織のパフォーマンスが上がることはありません。
これに対して「風通しの良い組織」とは「問題があるのは普通」という考えが行動を支配しています。そのため、問題を早く出させるように多くの機会を作ろうします。そのために、問題をどんどん提起することを評価し、困難があっても改善、改革することを奨励するような雰囲気作りを努力するようになります。その結果、新しい発想、新しいきっかけ作りが誘発され、潜在力が引き出されるようになるのです。また、問題が小さい内に顕在化されるので、深刻な事態を回避することにもなります。
このような組織は、常に積極的な行動を取るようになります。例えば、
- 積極的な「抵抗勢力」になる
- おかしいと感じたらすぐに伝える
- 問題を解決しようと支援を求める
組織は、個々人の持てる力以上のものを引き出す事ができるようになり、高いパフォーマンスを維持しづけることができるのです。
問題への対処のしかたから考える
問題への対処について、この2つの組織の行動の違いを整理してみましょう。
まず、「風通しの悪い組織」にいるメンバーは、問題を意識すると、それを相談できないので、自分で何とかしようとします。解決できればいいのですが、それができないと結局は、それを遠ざけ、放置しようという心理が働きます。その結果、時間と共にリスクは益々大きくなってゆき、不安が拡大し、さらに問題意識を深めることになります。「停滞・衰退を拡大するサイクル」が生みだされてしまうのです。
「不満」は人を殺すことはありませんが、「不安」は時に人を殺すこともあります。死に至らしめるほどではなくても、心に深いダメージを与える可能性はあるでしょう。
一方、「風通しの良い組織」のメンバーは、問題意識を持つとすぐにその問題を上司やまわりと共有し、一緒に解決しようと行動します。当然、解決する機会は増え、達成、成功の喜びを感じる機会も増えることになります。それは、同時に「成長を実感」できる機会でもあるのです。
人は、このような機会をもっと得たいと思うようになります。この意識が、チャレンジを促し、学習意欲を高めることになります。「潜在力を引き出すサイクル」が回り始めるのです。
部下を育成し、組織としてのパフォーマンスを高めるためには、ルールや手段を教えるだけでは不十分です。「潜在力を引き出すサイクル」を作り、その組織にいることが、自分の成長につながることを実感させることです。そのような組織にいれば、人は自発的にルールや手段を学ぼうとするでしょう。
マネージャーやリーダーの役割から考える
マネージャーやリーダーの役割という視点から考えてみましょう。
組織のミッションは、組織目標の達成です。そして、それが一時的なものではなく、どのような状況にあっても達成できることであり、常に高い目標を達成できるように、組織としての力を成長させ続ける基盤を築くことにあります。
しかし、「停滞・衰退を拡大するサイクル」を回している「風通しの悪い組織」にいるメンバーは、組織への信頼を失っているので、行動は常に消極的となり、成長の基盤が築かれることはありません。もし、次のような意識を感じるようであれば、注意しなくてはなりません。
- 言い出しっぺは損
- どうせ言っても無駄
- 余計なことは言わない方が無難
- 波風を立てない
- 上司に従っていればいい
深刻に受け止める必要があるでしょう。
一方、「潜在力を引き出すサイクル」が回っている「風通しの良い組織」は、組織への信頼を実感しています。彼らには次のような意識が働いています。
- 言えばチャンスが生まれる
- 言えば必ず聞いてもらえる
- 気がついたら、とにかく話してみる
- 波風を立ててもいわなくては
- 自分の判断を大切にしたい
貴方の組織は、どちらでしょうか。もし、「風通しが悪い組織」なら、それを素直に認め、受け入れることから始めてはどうでしょう。それさえもできないのならば・・・。
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