こんなことを書くと、「営業は人間関係を築くとが仕事の8割と研修では言っているのに、矛盾しませんか?」と突っ込みを頂きそうですが、まったく矛盾はありません。
考えてみてください。「8割」は「10割」ではなく、仕事の完了ではありません。大切な残り2割をこなさなければ、案件をクローズすることはできないということです。
営業活動にとって、お客様と良い人間関係を築くことは、ぜひとも必要なことです。それができなければ、ビジネスのスタート・ポイントに立つことさえできません。しかし、それはあくまでステージへ上がることであり、お客様を魅了する演技ができなければ、お客様には席を立たれてしまいます。
例えお客様のキーパーソンと親しくなっても、それはきっかけに過ぎません。そこからお客様にご納得頂ける提案ができなければ、「良い関係」以上には発展しません。つまりは、営業として仕事をしていることにはならないのです。
「昼間から、会社にいて何してるんだ!そんな暇があったら、お客様のところに行ってこい。」などと言う営業マネージャーは、少なくありません。でも行って何をすればいいのでしょうか?一緒にお茶でも飲んで、話しをすればいいのでしょうか?顔を覚えて頂ければ、それでいいのでしょうか?
確かにお客様と「良い関係」を築くためだけならば、これもひとつの手段かと思います。しかし、それだけのことです。それだけでは「モノを売る」ことはできないのです。さらに残りの2割をこなさなければ、モノは決して売れないのです。
次の2割をどうするか、そこまで含めて、シナリオを示し、だから「お客様に行ってこい」と言っているのなら、そのマネージメントは、たいしたものだと思います。しかし、「行けば何とかなる」としか考えていないのであれば、それはソリューション営業のマネージメントとしては失格です。
お客様との「良い関係」は、お客様の立場やその利害関係によっても変わってきます。経営者と担当者では、自ずともとめる価値が違うからです。例え売るモノが同じでも、経営者は、結果として経営指標の改善や社会的評価が高まることをもとめます。一方、担当者は、今の仕事がどのように変わるのか、どれだけ楽になるのかを知りたいと思うでしょう。
それぞれに異なる価値を理解し、それを共有できなければ「良い関係」を維持することはできません。
お客様の視点に立つことはソリューション営業活動のスタート・ポイントです。「良い関係」は、そのために必要なことです。ただ、「良い関係」だからということにあぐらをかいて、ただお願いを繰り返すだけでは、ソリューシンは売れないのです。
今どのような課題を抱えているのか、何を問題と考えているのか、それを知るためには、お客様との「良い関係」は、大いに助けになるでしょう。そして、その解決策を提案することができて、ソリューション営業活動の舞台はやっと幕を開けることができるのです。