「ソリューション営業にとって最も必要とされる能力は何でしょうか?」と聞かれたら、私は即座に次のように答えています。「想像力です」と。
午前6時14分発、中央線国立駅から快速東京行きに乗るのが、毎日の日課となっています。この時間帯は、比較的乗客も少なく、毎日決まった人が乗っています。声を掛け合うわけではないのですが、国立に引っ越してから2年、もう顔見知りで、ずっとおつきあいしています。
さて、この列車のいつも乗る車両にちょっと困った人が乗っています。かなり恰幅の良い方で、窮屈な座席をさらに狭くしています。それはまあいいとして、何が困るかというと、彼の「大鼾(いびき)」です。彼が車両の端に座っていても、その反対の端からもしっかりと聞き取れるくらいの大音響。しかも、時々息が止まっり、しばらくして爆発するように大鼾。電車の走行音にかき消されることなく、車両に響いています。
彼は、国立駅から荻窪駅までのおよそ25分間、ガォア~、ガォア~・・・ガガガガッ!を繰り返しています。
もうひとつ、彼の困ったところは、下車駅の荻窪駅の手前で、これまた大音響の目覚まし音が鳴り響くこと。小さな音から徐々に大きな音になるように携帯電話にセットしています。小さな音で止めてくれればいいのものを、最後の大音響までとめてくれません。しかも直ぐには気付かない(?)ようで、しばらく鳴り響いています。
鼾にしろ、目覚まし音にしろ、近くにいる人は、本当に迷惑な話です。
彼は、たぶんそのことを知っているのだと思います。しかし、まわりがどう感じているかなど考えていないのでしょう。想像力の欠如、いやそんなことは自分には関係ないと確信犯で無視しているのかもしれません。品格などみじんも感じられません。このような方は、絶対にソリューション営業はできませんね。
ここまで極端ではないにしても、私たちも教訓としなければなりません。会社の業績、抱えている課題、社内の軋轢や立場・・・お客様が今どのような状況にあり、どうしたいと思っているのか。あなたは、想像力を働かせているでしょうか?これは、お客様に対する最低限の礼儀だと思います。
お客様は、あなたに貴重な時間を割き、話しを聞いてくれようとしています。このようなお客様に対して、誠意を持って応えることは当然です。そんなとき、想像力はあなたに力を与えてくれます。
お客様から得られる情報は限られています。特に新しい訪問先についての情報は、僅かしかありません。しかし、インターネットでお客様の会社のホームページに目を通しておくなどは、最低限のこと。可能な限り、お客様の情報を手に入れることを心掛けておく必要があります。それでも十分ではありません。あとは、想像力を働かせ、お客様の必要とするモノを自分なりに決めてかかることです。
仮説を立ててそれを検証する。これは、ソリューション営業の基本です。
想像豊かにお客様の課題はこうに違いないと考え、それをお客様にぶつけてみる。一発必中などありません。当然お客様は、あなたの立てた仮説と現実の違いを指摘します。あなたは、謙虚な態度でその話を聞き、仮説を修正します。では、といいうことで、新たな仮説を示す。するとお客様は、「いやいやそうではありません。こうなんですよ・・・」。
このようなお客様との相互関係を作ることこそが、ソリューション営業の仕事のスタイルです。この繰り返しの中にお客様の真の課題、ニーズが見えてきます。
あなたが、どれだけ想像力を発揮し、お客様のニーズに肉薄できるか。それが勝負です。あの「大鼾野郎」のように想像力を働かせることを放棄し、自分の一方的な都合だけで行動してはいないでしょうか。「なにをとんちんかんなことをいっているんだ!」「こいつと話していても時間の無駄」。そうお客様に思われてしまっては、後が続きません。
情報をアップデートし、それを材料にさらに想像力を働かせ、お客様の課題に迫る。その繰り返しです。その態度は、お客様のあなたへの信頼を確かなモノにします。
それは、そうでしょう。お客様にしてみれば、必要なモノは何かと常に先回りして、如何でしょうと差し出してくれる。「そうではないですよ!こうなんです。」と一言語れば、さらにその先を考えて、また如何でしょうと差し出す。恋愛と一緒です。そんな人をなかなか無碍には追い返せないモノです。